32歳にして一度も海外旅行の経験がないウートピ編集部Y子。海外旅行バージンを卒業するのにふさわしい旅先を探そうと、ウートピ編集部は、旅歴25年間に80カ国以上を旅し、酸いも甘いも知り尽くしたトラベルジャーナリスト・寺田直子(てらだ・なおこ)さんに相談。

「SNSで自慢できるようなところがいい!」というY子のリクエストに、前回、寺田さんが紹介してくれたのは、ラトビアのピンクのスープでした。しかしなんだか物足りなさげなY子は、「もっと規模の大きい感動を!」とリクエスト……。

オーロラバージンならアイスランドへ

Y子は本当にしょうがないですね。インスタ映えするコンテンツで、一生に一度は見たいといえば。ここはオーロラでしょうか。これから秋〜冬にかけてオーロラベルトと呼ばれる北極圏ではオーロラが観察でき、世界中のツーリストが一目見ようと極寒の地を訪れています。

オーロラ観察として有名なのはアラスカ、カナダのイエローナイフ、フィンランドのロバニエミなどいくつかありますが、私のイチオシはアイスランド!

写真提供:アイスランド大使館

アイスなんてとんでもなく寒そうな国名ではありますが実はアイスランドは上記の観察スポットと比較して寒さがゆるい国なのです。

オーロラシーズンの真冬となる11〜2月前後。アラスカやイエローナイフならマイナス30℃あたりまで下がることもありますが、アイスランドの首都レイキャビクは平均的にマイナス5℃ほどと日本の北海道よりも寒くありません(寒波が来ることもあるのでそれより寒くなることはあります)。

理由は周囲を暖流のメキシコ湾流に囲まれているから。この恩恵で国名とはまったく正反対。温暖な冬を迎えるわけです。

オンナを酔わせるオーロラ

前回紹介したラトビア同様、アイスランドも日本からの直行便はありません。なのでここでもスカイスキャナーのお世話になってみましょう。ロンドン、パリ、ヘルシンキ、コペンハーゲンなどヨーロッパの主要都市経由で行けることがわかります。

ちなみに私はロンドン経由で行ったことがあり、帰りはストップオーバー(途中降機)してロンドン滞在も楽しんじゃいました。航空券のタイプにもよりますが経由便の場合、一度の旅行で2ヶ国滞在ができるメリットがあることもおぼえておいてください。

滞在拠点となる首都レイキャビクは小さな街です。プチホテルや民泊など宿泊施設は充実。私は市内中心部にあるキッチン付きの部屋を借りて過ごしました。アイスランドは物価が高めなのでスーパーで食材を買ってきて自分で料理するのもいい体験。夜、レストランで食事をするのはハードルが高い、という海外旅行バージンさんにもおすすめです。

冬の時期、レイキャビク発着のオーロラツアーが数多く開催されます。運がよければ市内にいても見られるほど。オーロラ発生のお知らせアプリやニュース番組などもあるのでこれはもう運次第。

真冬の天空を爆発的にゆるがせる神秘のかがやき。あまりにもすごすぎると「オーロラ酔い」にもなるほど。浮遊感漂うゆらめく地球のドラマはまさに一生に一度の体験です。

写真提供:アイスランド大使館

音楽、温泉、オーロラ以外の楽しみも充実

オーロラツアーは真夜中に催行されるのでそれ以外の時間はレイキャビクならではのお楽しみタイム。意外に思うかもしれませんがレイキャビクは音楽の聖地。

最も有名なアイスランド生まれのアーティストといえば個性的な存在で知られる歌姫ビョーク。さらにシガーロス、ザ・シュガーキューブスなど日本でもファンの多いグループも。

そんな彼らを育ててきた伝説のライブハウスやジャズバーも多く、熱くディープなナイトライフを楽しめます。

さらに毎年初冬に行われる音楽の祭典「エアーウェイヴス」はレイキャビク全体が最先端な音楽シーンに彩られる大人気フェス。今年は11月1〜5日。オーロラ観察とあわせて満喫するのもいいでしょう。

もうひとつ、郊外にある世界最大級の屋外温泉がブルーラグーン。雪景色と凍てつく空気の中で湯気をあげるブルーの乳白色の温泉はまさしくインスタ映えする場所のひとつ。

地熱大国であるアイスランドは地球の恵みをいたるところで実感する国でもあり、温泉好きな日本人なら訪れておきたいスポットです。

例えるなら…バンドマン!

天空のオーロラから大地のエネルギーを実感する温泉まで。初対面は冷たい印象だったけれど、実はほとばしるエネルギッシュさを秘めているアイスランドはクールでロックなバンドマンのような存在でしょうか。今まで経験したことのないスケール感ある世界をライブに体感。クラウドサーフィンをするように身も心もゆだねてしまいたくなる恍惚感が待っています。

Y子、地球に抱かれたくなる

「そうそう! これくらいスペクタクルじゃなくっちゃ!」

オーロラの写真を見てはしゃぐY子はすっかり旅慣れたかのように次のわがままを繰り出します。

「寺田さん、海外バージンだからといって私のことお子さま扱いしてません? もっとこう地球を感じられる場所とかありますよね。そう。褐色の大地、アフリカとか! 年上男性のワイルドな魅力に包まれたい気持ち、わかってくれますよね!?」

すみません、寺田さん次の……って、あら。なにやら寺田さんの雰囲気がいつもと違います。なにやら怒っているような。はたして次の国を無事紹介してもらえるのでしょうか。