ジム通いは健康的かと思いきや…

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 刻一刻と迫る「年金75歳支給時代」が到来すれば、老後の人生設計はすべて白紙に戻ってしまう。では、どうするべきか。現実的な対策としてはやはり「できるだけ長く働き続けて収入を確保すること」を考えるしかない。

 その時代を反映してか、発売即重版のベストセラーとなっている書籍がある。元ソニー常務取締役で、82歳の今も現役ビジネスマンとして働く郡山史郎氏が著わした『九十歳まで働く!』だ。郡山氏は子会社のソニーPCLの会長、ソニー顧問などを歴任した後、多くの高齢者の再就職に関わってきた。

 同書内では、高齢者が厳しい現実に立ち向かう上で必要な心構えを「定年後にやってはいけない十戒」としてまとめている。そのなかに「語学の勉強をしてはいけない」「ジムへ行ってはいけない」がある。

 英語をはじめ他国語の習得は、自分の世界を広げ、海外旅行でも役に立つことから人気の生涯学習だ。しかし、郡山氏は「ことビジネス英会話習得は無駄に終わる可能性が高い」と一刀両断する。

「定年後は人生の9回裏、もしくは延長戦だと考えるべきです。これまでに挫折したり、習得できなかった能力をビジネスで力にできるところまで高められるかといえば、その可能性は非常に少ない。よく言われることですが、人間の脳は高齢になると新しい情報を吸収しにくくなる」(郡山氏)

 健康維持に適度な運動は必要だ。だが、郡山氏は「ジムに行けばいい」という考え方に問題があると説く。

「運動は大切ですが、『ジムに通わなければ運動ができない』という価値観では長続きしない。組織に守られない高齢者は“強制力”ではなく自主性が大切です。資格取得や語学の勉強でも同様ですが“自分ひとりでは続かないから”と月謝を払っても、結局通わなくなって無駄にしてしまう」

 経済ジャーナリストの荻原博子氏は、家計の面からも同意する。

「語学学校やスポーツジムに通うには月額1〜2万円かかる。老後資金によほど余裕がない限り、その支出を貯蓄に回したほうがいい。年間24万円貯金していれば、いざというときに当座の入院・通院費に充てられる。そちらのほうがよほど現実的に老後の役に立つ」

 総務省「家計調査」(2016年)によれば65〜69歳の1世帯あたりの保険医療費は月1万6291円。ほぼ同等の額をジムに支払う意味はあるか、吟味したほうがいいだろう。

※週刊ポスト2017年9月15日号