前半45分のみの限定起用となった本田だが、まだまだ本来のフォームを取り戻せていないようだ。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

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 ワールドカップ・アジア最終予選のサウジアラビア戦は、両者のモチベーションの違いが結果にも表われる形になったと思う。
 
 サウジアラビアは、オーストラリアの結果を受けて自分たちは1点を取って逃げ切れば、ワールドカップ出場が決まると分かっている。だから、攻撃にしろ、守備にしろ、局面での球際の争いではサウジアラビアの選手が一歩、二歩勝っていたように感じるよ。そうした小さな積み重ねが明暗を分けたように感じた。
 
 それでも前半は、高温多湿の環境や凄まじいアウェーの雰囲気のなかで、しっかり能力の高さを見せてくれた選手もいたし、まったく収穫がなかったわけではなかった。
 
 とくに、原口は豊富な運動量をベースに攻守両面で効果的な働きを見せていた。自分が担当するエリアではきっちり相手を抑え込んでいたし、チャンスと見るやどんどんスペースへ出て行った。欲を言えば、もう少しフィニッシュに絡んでいってほしかったけど、本大会でも期待が持てそうなパフォーマンスを見せてくれたよ。
 
 中盤でも山口が惜しいミドルを放つなど、積極性があった。あるいはスペインで好調を維持する柴崎やオーストラリア戦で豪快なミドルを放った井手口も、決定的な仕事は少なかったけど、中盤で相手の攻撃の起点を潰したり、スルーパスでチャンスメイクをする場面も見られた。
 
 ただ、後半に入ると、日本の良さは徐々になくなっていった。勝利が必要なサウジアラビアがどんどん圧力をかけてきて、その勢いをさばけなくなったからだ。現地の暑さも尋常じゃなかったようだから、選手たちは相当厳しかっただろう。
 
 そういうなかで、60分過ぎに岡崎に代えて杉本を1トップに投入したわけだけど、彼が最前線で効果的に機能したとは言い難かった。日本の選手には、かなり疲れが見えて、サポートも遅く、ミスも多くて、杉本にはちょっと酷な状況だったと思う。もちろんチーム内の序列というものがあるのだろうが、できればロシアへの布石として、こういう切羽詰まった“本気の”相手に対して新戦力がどれだけやれるのか、スタートから見てみたかった気がするよ。
 
 それにしても、この2戦を通して感じたのは、やはりサッカーはメンタルのスポーツだということ。日本はオーストラリア戦では、球際で付け入る隙を与えない守備を見せて勝利への執念を感じさせたけど、サウジアラビア戦では逆にそういう部分で相手が上回った。
 
 長谷部や香川など、何人かの選手は怪我を抱えていたわけだから、もちろん無理をする必要はなかったのだけど、出場が決まった以上、怪我が怖いのはやはり出ている選手も同じだろう。「消化試合」という雰囲気は多少なりとも生まれてくる。
 
 日本はオーストラリア戦でワールドカップ出場という大命題にしっかりと答えを出していたわけだから、サウジアラビア戦はモチベーションという面では、やはり難しい状況だったと言わざるを得ない。
 
 ともかく本大会の出場が決まったわけだが、一方で今後は登録メンバー入りを懸けた競争が熾烈になってくる。各ポジションの争いが見どころになってくるが、気になるのはサウジ戦でまったく良いところのなかった本田だ。
 
 従来の右ウイングで先発したものの、縦に速い攻撃を機能させたわけでもなく、周囲と連動して相手の守備を崩したわけでもなかった。このポジションには、浅野がオーストラリア戦で抜群の働きを見せているし、今は少し調子を落としているが久保や、今回は出場できなかったがドイツで好調の武藤もいる。
 
 以前務めていた1トップにも大迫という確固たる軸ができたし、杉本という新戦力も出てきた。とくに、サウジ戦では前線でなかなかボールが収まらない場面が目についただけに、大迫の存在はなおさら大きくなったようにも見えるよ。