五反田スタートアップ第13回「freee」

 

事業規模の大小を問わず、必ず存在するのがバックオフィスでの業務。企業の営業やマーケティング部隊を裏で支える重要な仕事だが、そのぶん手間もかかるし人手も必要だ。もしこれを効率よく行えたら……。

 

五反田スタートアップ第13回は、中小企業の会計業務をはじめとしたバックオフィス業務をサポートするクラウド型サービスを展開しているfreeeの代表取締役、佐々木 大輔氏に話をうかがった。

 

インターネットへの苦手意識をなくし、開かれたチャンスをつかんでもらいたい

――:まず最初に、事業概要について教えていただけますか?

佐々木 大輔氏(以下 佐々木):中小企業や個人事業などスモールビジネスに携わる人たちが、創造的な活動に時間を割けるよう、ビジネスにおいて避けては通れないバックオフィスでの仕事を自動化するソリューションを提供しています。

 

具体的には経理業務を自動化できる「クラウド会計ソフト freee」、人事労務の情報をクラウドで管理、入社手続きから日々の勤怠・給与計算まで一気通貫で対応できる「人事労務 freee」などです。

 

――:バックオフィス業務はなんでも自動化しよう、ということを目指しているということでしょうか?

佐々木:それはちょっと違います。ゴールは、経営者が創造的な作業にフォーカスできること。つまり経営において重要な判断を下すような、そんな仕事に時間をかけられるように、というものなんです。なので、その判断材料に関連した情報処理や業務を自動化していくというイメージですね。

↑freee創業者で代表取締役の佐々木 大輔氏。「自動化したいのは、経営判断の材料になる部分」と語ります

 

――:ところで、この事業をはじめたきっかけはどのようなことだったのでしょうか?

佐々木:freeeを立ち上げる前、5年ほどGoogleの中小企業向けマーケティングを担当していました。はじめは国内のみだったんですが、やがてアジアパシフィック地域全体を担当することになりました。すると、日本はほかの先進国、いや、アジアの新興国と比べてもこれといった伸びがないことに気づいたんです。それはなぜなんだろう? と考えました。

 

よくよく調べてみると、中小企業におけるテクノロジーの活用、要はWebサイトを持っているか、とかコミュニケーションとしてのインターネット活用だとかが弱いんですよ。インターネットや当時一般化してきたスマートフォンなどへの苦手意識があるから、ビジネスにも活用しない。そのため、Googleのマーケティングツールを使うというところまでいかないというのがわかってきたんです。

 

では、そういう状況下で自分に何ができるか。この状況を転換させることはできないだろうか。

 

そう考えていたときに、ふとGoogleに入る前、あるベンチャー企業でCFOとして働いていたときのことを思い出したんです。「経理チームメンバーは、1日中入力をしていたな」と。

 

当時の会計ソフトは会計帳簿をつけるだけのもので、経理業務を支援しているとはお世辞にも言い難いものでした。だから1日中入力したり、あちこちのデータを参照したり、何度も同じ項目を入力する必要がある。それらを一貫して自動化できたら面白いのではないか? ――そう考えたんです。

 

どんな規模の企業でも、経理業務は必要です。そしてそれがインターネットで簡単にできるようになる。すると、それまでインターネットやスマートフォンに対して苦手意識を持っていた中小企業の経営者でも「経理業務がインターネットで簡単にできるんだから、これこれのこともインターネットで簡単にできるんじゃないか」と考えてもらえるんじゃなかろうか、と。もっと身近なところでインターネットを活用できることがわかれば、苦手意識がなくなるという転換点になるんじゃないかな、と考えたんです。

↑「経理業務をきっかけにインターネットの可能性に目を向けてもらえれば」と語る佐々木氏

 

――:これまでのバックボーンから生み出されたサービス、というわけですね。特に中小企業のインターネット活用に力を入れる理由はなんでしょうか?

佐々木:いままでだと、万人の目に触れるテレビ広告というのは大手の会社しか出せませんでした。ぼくの実家の美容室でも、当然テレビ広告を出すことなどはあきらめるどころか考えも及ばないことだったんです。でも、テレビよりもっと広い範囲への広告が打てる。それがインターネット広告なわけです。

 

このように、インターネットは世界を大きく変えてきた、またこれからももっと変えていける存在なわけです。大企業だけじゃなく、中小企業でも平等に開かれたチャンスなんですよ。それを知らなければ活用できない。だからこそ、さまざまな方法でインターネット活用できるということを広めていきたい、と感じているんです。

 

できるところは機械任せで省力化――目指すはビジネスのインフラ

――:現在の事業領域とそれぞれの市場規模はどのようなものでしょうか? また、そのなかでのシェアはどのくらいでしょうか?

佐々木:2220億円といわれていますが、それは既存の会計ソフトウェア市場。freeeは“会計帳簿”だけでなく企業間の取引や経理業務全体の自動化を目指しています。だから、その枠には収まらず、もっと大きな市場が存在していると考えています。

 

たとえば、この自動化という仕組みを広めることで、B to Bでの取引において、見積もり出して、契約書出して、購入して、請求書出して決済して……といった工数を経ないで資材を調達できるようにする。ネットワークでつながっていれば、freeeを介してワンクリックショッピングのような取引ができるようになる。freeeをプラットフォームとして、B to B取引のコストを圧倒的に下げられる仕組みができれば、その市場規模は計り知れないのではないでしょうか。

 

また、蓄積された膨大な経営データを人工知能が分析、それを活用した経営アドバイスも提供できるようになれば、さらに市場が広がります。われわれにとって会計ソフトというのは、このような展開のためのひとつの取っ掛かりと考えています。

 

――:中小企業にとってはインフラのような存在になりそうですね。ところで、マネタイズの部分はどうなっているのでしょうか?

佐々木:月額利用料をいただいています。おかげさまで、経理業務支援サービスとして当たり前の選択肢とみなしていただけるようになったこともあり、現在では80万以上の事業者さまに登録していただいています。

 

――:80万!? すごいですね! では、今後のビジョンについて教えてください。

佐々木:取引の工数を下げること、日々のデータを活用して経営に役立てられるようにすることをこれからも目指していきます。そしてその先には人工知能のCFOを提供するという未来も見えています。

 

ただこれは、人がいらなくなるということではありません。データ入力や分析など機械が強い部分は機械に任せ、出てきたデータをどのように経営判断に使うか、というところは人間がやる。むしろ、人が必要な部分がより深く広くなっていくべきだ、と考えています。

 

【五反田編】「住んでよし、食べてよし」と仲間を思う気持ちから決まった五反田移転

――:ここからは五反田に関係したことをうかがっていきます。オフィスの場所を五反田に決めた理由はなんでしょうか?

↑五反田にオフィスを構えるメリットについて語る佐々木氏。現在では従業員数が300人を超える大所帯となったが、メンバーを思う気持ちは変わらない

 

佐々木:最初、麻布十番のぼくのマンションの居間がオフィスだったんです。人数が増えて手狭になって移転する、というのを麻布十番の近くで2度ほど繰り返しました。

 

でも、メンバーが30人以上になったときに「これ以上広い事務所を麻布十番エリアで見つけるのは難しいぞ」ということで、別のエリアを視野に入れて移転先を検討したんです。移転先として必要な要素は、職場の近くでもファミリーで住める現実的な場所があること、手ごろな飲食店が多いこと、という2点でした。

 

実は、麻布十番にオフィスがあったころ、近くに引っ越してくるメンバーも多かった。でも、家族であのエリアに住むのは家賃の面からして現実的ではないですよね。そして、ぼくらは仕事が終わった後にみんなでわいわいと食べたり飲んだりするのが好きだったんですが、麻布十番ではコストがかかりすぎて。ひたすら格安の居酒屋チェーンに行くとかお酒の飲めるラーメン店に行くとかしていました(笑)。

 

五反田は、住むにも食べるのにもリーズナブルな場所。そういうわけで、ここに決めたんです。

 

――:お会計を気にせず食べに行けるのはいいですよね。ところで、よく行かれるお店があれば教えていただけますか?

佐々木:ランチには沖縄料理を出してくれる「島たいむ がんじゅう」によく行きますね。あとは「アイアンホース」。居酒屋なら、オフィスの目の前にある「かね将」が安くていいですね。でも、夕方5時過ぎには店内が満席になってしまって、外に置かれたテーブル席で食べることが多いんですけど(笑)。

 

仕事関係では「吾作」という目黒川沿いのお店をよく使います。秋田料理を出してくれて、きりたんぽが美味い。全席個室なので、静かに話ができるのもポイントですね。

 

――:五反田にはスタートアップ企業がたくさんありますが、コラボしたいところはありますか?

佐々木:先ほどの回答には挙げなかったんですが、よく行く店に串カツ田中もあって、実はそこ、本社が五反田にあるんですよね。何かでご一緒できないかなぁ。ほんと、みんなでよく行くので(笑)。

 

――:では、最後になりましたがこの記事の読者に向けてメッセージをお願いします。

佐々木:GetNavi webを読んでいる方であれば、きっと新しいものに興味を持っていると思います。みなさんにとって当たり前のことのなかに、中小企業の経営者には当たり前ではない、むしろアレルギー反応を示してしまうものもある。そのひとつがテクノロジーの活用だと思うんです。

 

でも、それを使えば圧倒的に省力化が進み、仕事は楽になるんです。世間話的でかまいません。行きつけのお店などで「簡単にこなす方法あるんですよ」「こういうのありますよ」とスタッフに教えてあげることで、そのお店が楽に経営をしていけるようお手伝いをしてもらえればな、と思います。

 

――:本日はありがとうございました。