トランプ米政権、若い移民救済制度を撤廃へ オバマ氏が批判

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子供の時に親に連れられて米国で不法移民となり、そのまま米国で暮らす若者をただちに強制退去させないオバマ前米政権による救済制度について、ジェフ・セッションズ米司法長官は5日、撤廃する方針を発表した。米国で生活する約80万人が影響を受ける恐れがあり、バラク・オバマ前大統領はこの決定を「残酷」で「間違っている」と批判した。

子供時代に米国に到着した不法移民の強制退去を遅らせ救済する制度(DACA)にすでに登録している人たちは、少なくとも6カ月は直接影響を受けないが、新たな申請はできなくなる。DACA制度に登録した若者は「ドリーマー」と呼ばれ、就労や通学が認められた。その大多数が、ラティーノ(中南米系)とされる。

これについてトランプ政権は、議会承認を得ない大統領令による制度なので、違憲だと主張していた。ドナルド・トランプ大統領は選挙中から移民対策に強硬路線をとり、当選すればDACAを撤廃すると公約していた。

DACA撤廃を発表したセッションズ司法長官は、オバマ政権が大統領令で2012年6月に導入したDACA制度は「移民法を無期限に回避する施策」だと批判した。

トランプ氏は声明で、「親の行動の責任を取らせて子供に罰を与えるのは好ましくない。子供たちのほとんどは、今や大人だ」と前置きしながら、「しかしこの国は法治国家だからこそ、チャンスを与える国だと認識しなくてはならない」と主張。「もし行政府が連邦法を好き勝手に書き換えたり、無効にできるなら、原理原則にもとづいた移民制度改革への道はあり得ない」と述べた。

さらに大統領はツイッターで、「この国の勤勉な市民を最優先する移民制度改革」を議会が実現するため、民主・共和両党と協力していきたいと書いた。さらに、「議会はこれから6カ月かけて、DACAの法制化に取り組む(オバマ政権はこれができなかった)。できなければ、自分がまたこの問題を見直す!」とツイートした。

「ドリーマー」とは

DACAは、2012年6月の制度導入時に31歳未満で、16歳になる前に米国に入国したものの、正規の在留資格を得ていなかった若者が対象だった。国土安全保障省に登録申請後、連邦捜査局(FBI)の身元調査を受けた。犯罪歴がなく、通学中か卒業して間もない、あるいは軍から正規に退役した若者について、2年間は強制送還手続きをとらないという制度だった。

司法長官の発表後、国土安全保障省のイレイン・デューク長官代行は、DACA制度による新規の在留資格申請は5日以降は受け付けないと発表した。しかしすでに登録している人は、6カ月の間は影響を受けない。政府はこの6カ月の間に「適切な法制上の解決策」を提示するよう、連邦議会に求めている。

トランプ政権は、すでにDACAにもとづく就労資格のある人はそれが失効するまで、在留を認める方針。就労資格が6カ月以内に失効する人は、10月1日より前に、2年延長を申請することができるという。

オバマ氏「これは道徳の問題」

これに対してオバマ前大統領はフェイスブックで、親に連れられて米国で育ち、米国で勉強し、働き、「米国以外の国を知らないかもしれない、英語しかできないことだってあり得る、仕事や大学や運転免許に申請するまで自分が市民として未登録だと知らなかったかもしれない」若者を、「狙い撃ちするのは間違っている。何も悪いことをしていないからだ」と批判。「はっきりさせておこう。(トランプ政権による)今日の行動は、法律の上で必要なものではない。これは政治的判断で、道徳の問題だ」と書いた。

「究極的に、これは根本的に真っ当かどうかの問題だ」とオバマ氏はさらに書いた。「我々は、期待に溢れて努力する若者をアメリカから追い出すような国民なのか、それとも自分の子供はこう扱ってもらいたいと願うのと同じように他の若者も扱う国民なのか」。

不法移民の子供たちの滞在資格について、議会に法制化を求め続けたものの実現しなかったため、自分は大統領令で導入したのだと説明した上でオバマ氏はさらに、「若者たちの処遇に対する責任を、ホワイトハウスが連邦議会に預けた今、この若者と我々の未来を守るかどうかは、議会次第だ」とくぎを刺した。

民主党のナンシー・ペロシ下院院内総務も、「DACAを終わらせるというトランプ大統領の決定は、実に恥ずべき政治的に臆病な行為で、全米各地の罪のない若者に対するおぞましい攻撃だ」とDACA撤廃を強く非難する声明を発表。

「『ドリーマー』を強制送還すれば、何十万人もの愛国的な若者の生活を破壊し、経済に何十億ドルの損失を与え、アメリカン・ドリームの根本的な価値観を裏切ることになる」とペロシ氏は述べ、政府が「残酷かつ無情」に「ドリーマー」を強制送還し始める前に議会共和党は、「ドリーマー」に滞在資格を与える法案を提出しなくてはならないと訴えた。

民主党のリチャード・ダービン上院議員とリンジー・グレアム上院議員(共和党)は同日、連邦議会で共に記者会見し、超党派の「ドリーマー」保護法案の早期提出を呼びかけた。

「時間は限られている」とダービン議員は強調し、グレアム議員は「きちんと正しくやるのが大事だが、『正しく』とは、この子供たちの面倒をみることだ」と訴えた。

メキシコ政府は声明で、DACA撤廃を非常に憂慮すると表明。影響を受ける市民支援のため外交領事部の対応を強めると述べた。

ニューヨークのトランプ・タワー周辺など、米国各地でDACA撤廃に抗議する集会が開かれた。米メディアによると、ニューヨークのトランプ・タワー前では少なくとも10数人が逮捕されたが、衝突はなかったという。

<解説> 圧力を議会に転化――アンソニー・ザーチャー、BBCニュース(ワシントン)

トランプ大統領候補は選挙中、超党派の政治家の警告をよそに、DACA撤廃を公約した。むしろ「政界主流派」から反対されればされるほど、この大統領はやる気を固めたのかもしれない。

トランプ氏にとって幸いなことに、医療保険改革(オバマケア)撤廃やメキシコ国境の壁建設と異なり、DACA撤廃には議会の協力は不要だ。

むしろ、DACA廃止まで6カ月の期限を区切り、就労資格の失効まで今後2年と、制度撤廃の具体的な影響が出るまでに猶予期間を置いたことで、トランプ氏はすべてのプレッシャーを連邦議員たちに転化したのだ。

DACA支持派の議員にとっては、なかなか大変だ。下院の移民反対派を乗り越えて法案を可決させなくてはならないし、移民取り締まりについて強硬措置がふんだんに盛り込まれた法案になれば、上院では議事妨害を打破するために60票が必要になるかもしれない。

それに加えて議会はただでさえ、ハリケーン被災支援、予算、国債、そしていずれは税制改革など、喫緊の問題を大量に抱えている。

もし連邦議会がDACAについて具体的な対応ができなければ、来年秋の中間選挙で厳しい選挙を控えた共和党議員たちは、地元有権者の強い反発に直面することになる。

その一方で、大統領は今回の動きで、移民受け入れに否定的な自分の支持基盤を満足させ、そして自分はやるだけのことはやったと手を洗える。自分に忠実な支持者には報いるが、党内のほかの連中はどうでもいいというわけだ。

(英語記事 Daca Dreamers: Obama says axing young migrant scheme is wrong)