カーリング女子の平昌五輪代表決定戦が、9月8日からアドヴィックス常呂カーリングホール(北海道北見市)で行なわれる。

 参戦するのは、2016年の日本選手権を制して同年の世界選手権で準優勝に輝いたロコ・ソラーレ北見(以下、LS北見)と、今年の日本選手権の覇者である中部電力の2チーム。「ベスト・オブ・ファイブ」の競技形式で5試合のうち先に3勝したチームが、日本代表として平昌五輪の出場権を獲得する。

 直近5試合の両チームの対戦成績を見てみると、LS北見が4勝1敗と勝ち越している。昨年12月の軽井沢国際の予選(6-3)、今年2月の日本選手権の予選(5-3)、プレーオフ(9-8)、そして先月行なわれたどうぎんクラシック(8月3日〜6日/北海道札幌市)の予選(11-3)でも勝利。唯一の敗戦が、日本選手権の決勝(7-5)だった。

 その戦績が示すとおり、選手や関係者の間でも「LS北見有利」という見方が強い。決戦の舞台が、LS北見のホームリンクという点もアドバンテージとなる。ある関係者が言う。

「単純に技術で言えば、LS北見のほうが上。しかも、ホームの利がある」


8月のどうぎんクラシックで優勝したロコ・ソラーレ北見

 ここに来て、LS北見はチームの仕上がりもいい。どうぎんクラシックの初日、サードの吉田知那美が「負けにくいカーリングが完成に近づいている」と発言したが、その言葉どおり、同大会の全5試合で有利な後攻でゲームを始め、先制点を獲得。相手に一度もリードを許すことなく、全勝優勝を遂げている。

 豊富な経験があるのも、LS北見の強みだ。とりわけ4年前のソチ五輪代表決定戦(※)については、サードの吉田知とスキップの藤澤五月はそれぞれ別のチームに在籍していたが、チーム全員がその舞台を経験しているのは大きい。
※2013年9月、中部電力、北海道銀行、LS北見、札幌国際大の4チームで争われた。2回戦総当たりの予選リーグ後、1位の北海道銀行と2位の中部電力が最終決定戦で激突。予選リーグを含めた4勝先取の決定戦方式で北海道銀行が勝利した。

 当時、代表切符を手にした北海道銀行のスキップ・小笠原歩は、このトライアルについてこう語っている。

「この選考(五輪代表決定戦)は、独特の雰囲気と緊張感がある。もしかしたら、五輪以上に緊張するかもしれない」

 このとき藤澤は、日本選手権3連覇中の中部電力のスキップを務めていた。女王の座にありながら、最大の目標である五輪切符は目前で逃してしまった。その際、彼女はこう反省の弁を述べている。

「勝利のことを考えすぎて、目の前の一投に集中できない部分があった」

 代表決定戦というのは、他とは異質のプレッシャーが存在する。LS北見は、その”独特の雰囲気”や”緊張感”を誰もが知っている。その優位性も含めて、悲願の五輪出場へ王手をかけている状態と言っていいだろう。



中部電力が下馬評をくつがえして五輪切符を手にするか

 対する中部電力は、ここに来ていい意味で開き直れた。それが大一番で功を奏すか。

 日本王者として迎えた今季は、LS北見のホームアドバンテージを埋めるべく、決定戦の舞台となる常呂のリンクで累計2カ月近くに及ぶ合宿を複数回組んだ。そして、国内最高レベルの”滑るアイス”の感覚を身体に染み込ませてきた。

 しかし、アドヴィクス杯(7月14日〜17日/北海道北見市)、どうぎんクラシックと2大会続けて入賞を逃した。そのとき、選手たちはそれぞれ反省の弁を繰り返すばかりだった。

 リードの石郷岡葉純(いしごうおか・はすみ)が「(いろいろと)迷った部分があった」と言えば、サードの清水絵美は「ショットに安定感がほしかった」とこぼす。スキップの松村千秋も「正直、みんな(の気持ちが)沈んでいたときもあった」と、結果の出なかった2大会を振り返る。

 大事な戦いを前にして、チーム内には閉塞感が漂い始めていた。だが、日本カーリング協会専任コーチのリンド・ジェームス氏がその雰囲気を打ち破ってくれた。彼は、中部電力の選手たちにこう言った。

「日本選手権のときのほうが、カーリングが楽しそうだったよ」

 そのアドバイスに選手たちは救われた。松村が言う。

「(ジェームス氏の言葉を受けて)チーム内で、『もっとポジティブに、プラスに考えてやったほうがいいよね』というふうになった。それで、あと1カ月しかないけれど、こっち(軽井沢)に帰ってきてから”何をやらなければいけないのか”という話を(みんなで)することができた」

「ポジティブに」「プラスに」という姿勢は、松村がかねてから口癖のように言っていた「カーリングは楽しんだ者勝ち」という言葉にリンクする。

 そうして原点に戻ったチームは、短い夏休みを挟んでお盆明けから軽井沢で練習を再開。メンバーの表情は明るく、集中したトレーニングの合間には、楽しそうに笑う選手たちの声も響いた。

 8月下旬には、昨年から中部電力を指導しているスイス人のジャネット・ヒューリマンコーチも来日し、チームに合流。代表決定戦にも帯同する。カナダの技術、戦術をベースとするカーリングを展開することが多いLS北見に対して、どんな戦術で向っていくのか、興味深い。先手を取ってプレッシャーをかけることができれば、勝機が見えてくるだろう。

 どうぎんクラシックの直接対決でも、3-11で敗れはしたが、先攻の1エンドからスチールを狙える形を作り、4エンドでは複数得点を、5エンドではスチールを記録した。エンドごとに切り取れば、十分に戦える力がある。カギを握るのは、パフォーマンスを発揮するメンタル的な持久力、といったところか。

 何はともあれ、LS北見、中部電力、両チームの集大成となる大一番がまもなく始まる。「カー娘」「カーママ」に続く新たなヒロインの誕生となるのか、必見だ。

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