さいたま市消防局は全国の消防本部に先駆け、災害時に小型無人機「ドローン」の運用を始めている。

 今年2月に三芳町のアスクルの大規模倉庫火災で、3月には栃木県那須町の雪崩事故で出動した。火災・救急・救助活動がメイン業務の消防にとって、ドローンを投入するまでにはさまざまな苦労があったという。

 ◆基礎段階で四苦八苦

 「体を動かすのは得意だが、最初は操縦の基本操作を覚えるのに時間がかかった」と話すのは、同市消防局でドローンのメイン操縦員を務める尾●(おさこ)直弥消防士長(35)だ。

 同市消防局は昨年3月、南海トラフ地震や首都直下地震などの広域応援を想定し、上空から被害状況を早期に把握するため、千葉市とともに消防庁からドローンの無償提供を受けた。

 尾●さんが所属する警防課で運用することになったが、マニュアルや活用事例がなく、手探り状態でスタートした。警防課員から10人を選出し、半年間にわたって操縦訓練を行った。ただ、10人は消火や救助についてはプロだが、ドローンの操縦は初めてだった。

 まずは改正航空法や基本操縦方法、事前に飛行ルートを設定して自動で航行させるプログラムなどの講習を受講。その後は週3回のペースで荒川の河川敷などで操縦訓練を行った。「飛行高度や距離の奥行きの感覚を体得するのが難しかった」という。

 半年間にわたり、操縦訓練を重ね、昨年10月にドローンの本格運用までこぎ着けた。既に同市内で発生した2件の水難事故のほか、県内応援で2月のアスクル火災にも出動した。

 ◆失敗は許されない

 3月には消防庁から県に緊急消防援助隊の出動要請があり、県外応援として、那須町の雪崩事故に出動した。飛行管理者の警防課長は、操縦技術に定評がある尾●さんらの広域派遣を指示。尾●さんは現場へ向かう車内で、すぐにドローンを飛行させるため、プログラム作業に入った。だが、事故が発生した3月26日は風速25メートルを超える吹雪だったため、飛行を断念せざるを得なかった。

 翌27日は天候が回復し、不明者の捜索活動を実施した。報道陣100人以上が集まる中での捜索活動は大きなプレッシャーだったが、「人の命を預かるわれわれ消防は絶対に失敗が許されない」と話すとおり、無事に任務を果たした。

 実はこの日は尾●さんの35歳の誕生日。家族と過ごせなかったが、妻と2人の子供はテレビで捜索活動をする姿を見ていた。「子供がテレビで『パパのこと見てたよ!』と言ってくれた」と照れくさそうに話す。

 その後も経験を重ね、同市消防局には、ドローン導入を検討している全国の消防本部から教育訓練や運用マニュアルなどの問い合わせが相次いでいる。

 尾●さんは「日々の訓練を怠らず、市民の安心安全を確保するため実績を重ねていきたい」と力を込めた。(黄金崎元)

●=土へんに谷