昭和32年、オオムラサキが「国蝶」に指定されてから、今年で60年の節目を迎えた。

 全国的に個体数が減少し、環境省が「準絶滅危惧種」とする貴重な存在だが、本県では北杜市長坂町を中心に増加している。NPO法人「自然とオオムラサキに親しむ会」が地元企業の協力を得て行う植林活動で生育環境が整備されているほか、中学校も参加して個体数調査が続けられるなど、地域一丸の努力が成果をあげている。

 環境省の希少種保全推進室はオオムラサキについて「全国的に生息域も個体数も減少している」と話す。国内の生息数は公表していない。また、本県でも北杜市でも調査はされていないという。

 「日野春(長坂町富岡)が全国で最も個体数が多い」−。

 昭和55年、当時の環境庁の調査報告で、国蝶保護の機運が一気に高まった。長坂では前年発足した任意団体「山梨国蝶オオムラサキを守る会」が、生息状況の調査をスタートさせた。

 平成7年、旧長坂町(現北杜市)が「北杜市オオムラサキセンター」(長坂町富岡)をオープン。同会も名称を「自然とオオムラサキに親しむ会」と変更。町の委託を受け、今日までセンターを運営している。

 センターの小(お)粥(がい)隆弘研究員(29)によると、長坂町内のハイキングコースを42区間に分け、200メートルおきにポールを設置。毎年7月下旬、区間ごとに個体数調査を続けている。

 「55年に地域住民による調査が始まり、翌年からは長坂中学校の単独調査へ。平成16年には甲陵中が加わり、現在は計約100人の生徒が授業の一環として参加し、オオムラサキの保全を図っている」

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 平成10年調査で、オオムラサキが渓流沿いや広葉樹林に多いことが明確になった。小粥研究員は「オオムラサキの幼虫が食べるエノキが渓流沿いに多く、成虫が好む樹液が広葉樹のクヌギとコナラから出ることも分かった」と説明する。

 そこで、県が個体数を増やそうと、県有林がある区間でアカマツをエノキや広葉樹に植え替えた。その結果、この区間で昭和55年に2・4匹(推計)だった個体数は、平成28年に14・4匹へ増加した。全区間平均でも55年の8・4匹から9・3匹に増えた。

 「親しむ会」も20年、3樹種の植林を開始した。現在、地域内で民間から管理を託された里山の面積は30ヘクタールに及ぶ。市の援助などを受け、年間約1万本の苗木を植林している。

 センター館長でもある同会の跡部治賢会長(69)は、「植林には地元の企業4社から100人のボランティアを出していただいている。希少なオオムラサキを地域一丸となって次世代へ引き継ぐと同時に、地域活性化に役立てていきたい」と力を込めた。