高級日刊紙、i(アイ)に使用された2人が見つめ合う写真(筆者撮影)

秋篠宮家の長女眞子さまと大学時代の同級生である小室圭さんの婚約内定会見が9月3日、東京で開かれた。エリザベス女王を君主とする王室の伝統が長い英国では日本の皇室への関心が高く、英国に留学経験のある眞子さまのファンも少なくない。公共放送最大手BBC(英国放送協会)や大手新聞各紙の電子版は会見の様子を複数の画像、動画を使って報じた。

見つめ合う2人の写真

眞子さまと小室さんが婚約に向けて準備を進めていることが判明したのは5月中旬だったが、この時から一貫して、英メディアは眞子さまが一般人の男性と結婚した場合、皇室典範に沿って皇籍を離れざるをえないことを問題視してきた。

今回婚約が内定したことで2人を祝福する論調はあるものの、女性の皇族であることの負の部分や皇室のメンバーが減少しつつあることを指摘する姿勢を崩していない。

どの媒体も掲載したのが、記者会見場で並んで座る眞子さまと小室さんが互いを見つめ合ったり、眞子さまが小室さんに、あるいは小室さんが眞子さまに甘い視線を送る画像の数々。特に、2人の視線が交差する1枚は互いに目で何かを確認し合っているようにも見え、何年も苦楽を共にした夫婦のような雰囲気が出ていた。

高級日刊紙、i(アイ)はまさにこの1枚を使い、「プリンセス、笑顔がいかに心を射止めたかを吐露(Princess revealed how a smile captured her heart)」(4日付)と題する記事を掲載した。

朝刊無料紙のメトロは同じ写真を使っているが、すべてが問題なしと言うわけではないことを示す記事を出した(Princess will give up royal title to marry a commoner after announcing engagement)。




テレグラフの見出しは「皇籍離脱」を前面に出している

記事の前半部分は、眞子さまが「明るい笑顔と誠実さ」を持つ大学の同級生と結婚しようと決めるまでの経緯を紹介しているが、後半で「この幸せなニュースも、皇室の将来にとっては必ずしもよいニュースではない」と指摘する。「女性は日本で元首の座を継承することはできない」、また「眞子さまは一般人である小室さんと結婚することで、皇籍を離れる」。これは皇族の減少を意味するので、「よいニュース」ではない。

保守系高級紙テレグラフは、ずばり、「悪いニュース」を見出しにした。「日本の眞子さまが大学時代のボーイフレンドと結婚するために皇籍を離脱する(Princess Mako of Japan will leave royal family to marry university boyfriend)」(電子版、3日付)。

左派系高級紙で電子版のみで発行されるインディぺンデントも「日本のプリンセス、眞子さまが一般人と結婚するために皇籍放棄へ(Japanese Princess Mako of Akishino to renounce her royal status to marry commoner)」(4日付)という見出しを付けた。

いずれの場合も、最大の注目点は「結婚後に皇籍離脱」の部分である。

英国民の感覚からすると驚きでしかない

眞子さまの婚約のお相手が日本でスクープ報道された後、すぐに英国でも後追い報道が始まった。

英メディアはこの時から「眞子さま、一般人との結婚後に皇籍離脱」を報道の焦点としてきた。ほぼ同タイトルの記事を掲載した左派系高級紙のガーディアンやBBCニュース(ともに5月18日付)がその典型だ。

英国民の感覚からすると、皇室規範第12条「皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる」という規定は驚きでしかない。「男女平等が当たり前になったこの時代に、なぜこのような(不等な)ことが起きるのか?」と受け止める。皇位を継承するのは男性のみという伝統も、時代に似つかわしくないものに見えてしまうのである。

英国は、過去数世紀にわたりエリザベス女王1世(在位1558-1603年)、ビクトリア女王(同1837〜1901年)、現在の女王エリザベス2世(同1952年〜)を含め女性の元首を何度も迎えた歴史がある。女性宰相もマーガレット・サッチャー氏(在任1979〜1990年)、そしてテリーザ・メイ現首相(同2016年〜)と2人も輩出している。

そんな英国ゆえに、女性だから元首になれず、それどころか一般人と結婚すれば皇室のメンバーですらなくなるという決まりが理解しがたいものに思えてしまうのだ。

英国では男女平等にするために法改正をしてきた

しかし、英国は王位継承においてつねに男女平等だったわけではない。

女性も国家元首にはなれるが、長い間、直系男子の王位継承が優先されてきた。1952年、エリザベス女王が父親の跡を継いだのは、男の兄弟がいなかったためだ。

男性優位に変化が起きるきっかけは、2011年のウィリアム王子(エリザベス女王の孫)とキャサリン・ミドルトンさんの結婚だった。

この頃までに男性優先は時代遅れという声が強くなっていた。時のデービッド・キャメロン首相が男性優先の王位継承は「異常であり、男女平等に反する」と主張し、2011年4月、議会で王位継承法の改正を通過させた。

眞子さまの皇籍離脱に格別の注目が集まるもう一つの理由は、英社会の中の性差別に対する意識の高まりだ。

英国では改正雇用法(2010年)で年齢、障害の有無、結婚、妊娠、人種、宗教、性、および性的志向による差別を禁じており、性差別的な広告も許されていない。

さらに、最近では、男性は家事がうまくできない、女児はピンクを好むなど性別のステレオタイプを表す広告が「炎上」するようになった。そこで、「性のステレオタイプ化」による広告が2018年から禁止される見込みとなっている。

また、ブランド側は男性か女性かのどちらかに特定した商品が「男女差別」と呼ばれることを避けようと、神経を使うようになった。たとえば、百貨店「ジョン・ルイス」は子ども向けの衣料の一部を「男児用」と「女児用」に分けずに「男児・女児用」としてどちらの性の子どもでも選択できるように販売した。消費者の中には「行きすぎだ」との声も出たが。

眞子さまの将来の皇籍離脱が大きなニュース的価値を持つ背景には、「これって、性差別じゃないの?」という声が頻繁に聞かれる英社会の状況があったわけである。

王室ファンが追う眞子さま

眞子さまと小室さんの婚約内定を多くの英メディアが報じたのは、やはり、王室の長い伝統があるために日本の皇室への関心が高いことがいちばんの理由だ。

どの世論調査を見ても、80%の近くの支持率を取る英王室。全国民が王室ファンと言ってもよいだろう。4日にはキャサリン妃に第3子が生まれることがわかり、これからもしばらく王室ブームが続きそうだ。

英国の王室ファンにとって、特に親しみがわく皇族の1人が眞子さまだ。エディンバラ大学やレスター大学大学院への留学経験があるからだ。

今回、眞子さまの婚約内定を最も詳細にかつ愛情を込めて報じたのは、保守系大衆紙デイリーメールだ。

同紙はその電子版「メールオンライン」上で、凝った作りの特集記事を組んだ。メールオンラインは世界中で最も人気があるニュースサイトのひとつだ。

記事の見出しは少々長いが、「日本のプリンセスがピアノを愛する一般人と結婚するために、皇族をあきらめる、恋に落ちたのは彼の『太陽のような明るい笑顔』があったから(Japanese princess gives up her royal status to marry a piano-loving commoner she fell for because of his 'bright smiles like the sun')」というものだ。

ほかの新聞記事は皇室典範のいわば「犠牲」になって皇籍を離れるという文脈だったが、ここでは皇籍を放棄するのは愛のためであり、一大恋愛ドラマとして報じられている。1936年、エドワード8世は離婚経験があるウォリス・シンプソン夫人と結婚するため、王位を放棄した。デイリーメールの記事は「王冠をかけた恋」を想起させる見出しである。読者もこれを意識の中に置いて眞子さまのストーリーを読んだに違いない。

画面を開けると、幼少から現在までの眞子さまのこれまでをまとめた2分弱の動画が始まる。

記事の中には婚約内定の会見に臨む眞子さまと小室さん、幼少の眞子さまとご両親の秋篠宮夫妻、天皇陛下と皇后の姿など複数の写真画像が入るとともに、会見時の動画、それに昨年のレスター大学大学院での卒業式の動画も入っている。

本文ではこれまでのなれそめや今後について一通り説明し、これに日本の皇室制度についてコラムを2つ付けた。一つは「男性中心の世界」というコラムで、皇室の仕組みを説明。女性の皇族は天皇にはなれないこと、眞子さまは女性のために一般人と結婚した場合に皇籍を離れる必要があるなどを詳細に記す。

もう一つのコラムでは「歴史」を記す。皇室には2600年以上の歴史があること、憲法上の存在、国民にはどれほどの人気があるのか、将来はどうなっていくのか、など。

「美男美女のカップルだね」

王室ファン、皇室ファン、眞子さまファン、そして婚約内定のニュースを読みにやってきたそのほかの読者を十分に満足させる作りになっている。美しい画像だけではファンは心から感動してくれない。王室についての情報に触れることに長けているファンを満足させるには、読み応えのある上記のコラムのような情報を入れることが必須なのである。


「メールオンライン」の記事には多くのコメントが付いた

3日に公開された記事は、4日夜時点までに1万回シェアされ、1200のコメントがついている。評価数が多いコメントのくつかを拾ってみると、「よかったね!」「誰と一緒になりたいかを決める権利をすべての人が持つべきだ」「美男美女のカップルだね。グッドラック」「女性が天皇になるくらいなら、天皇制がなくなったほうがいいと日本人は考えるのかな? それって、馬鹿げているよ」「チャールズ皇太子も好きな人のために継承権を棄(す)てればよかったのに」――。

日本で将来、女性皇族が結婚後も皇族の身分を保つ女性宮家が創設されるのかどうか、眞子さまが幸せな家庭を築くのかどうか。また、来年内と言われている天皇陛下の退位はどう進むのか。英国民の多くがこれからも皇室に注目し続けるのは確実のようだ。