居酒屋佐助と、メニュー考案や調理を担当する河上海氏

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 タイの首都バンコクにある日本料理店で、ヤキトリというジャンルにおいては断トツで在住日本人から支持される「鳥波多゛(とりはだ)」。タイの畜産と養鶏を中心にしたアグリビジネス大手のベタグロ・グループに粘り強く交渉し、専用レーンを作らせ、職人が鶏をさばいたその場で真空パックするという独自の手法を確立し、鮮度において他店を大きく凌駕するが、この鳥波多゛・タイの運営会社が2017年6月、日本のグループ店とは関係なくネクストブランド「居酒屋 佐助」を立ち上げた。

 このネクストブランド「居酒屋 佐助」、鳥波多゛にはない魚介料理も用意するなど、焼き鳥も扱うが各種メニューを取り揃えた居酒屋形態の店となる。そしてさらに言えば、バンコクに2店舗ある鳥波多゛とは異なり、中心顧客層をタイ人と想定しているのが特長だ。

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 タイで商売をする中で日本人だけをターゲットにすることも今は不可能ではない中、すでに多くの日本人の支持を得ている鳥波多゛・タイだが、敢えてタイ人向けに絞った店として出店した「佐助」。そして、同店は開店からおよそ3か月が経過した今、主に30代を中心にしたタイ人中流層が顧客として定着しつつあるという。なぜ見事にタイ人の顧客層を捉えたのか?

◆現地ビルオーナーの誘いで開店

 佐助があるウドムスックという通りはバンコク中心地から南東の方向に向かったエリアで、場所柄、観光の日本人が訪れることはまずない。また、バンコク在住者でさえ、かつてはウドムスックという通りがあることを知らない人もいたほどの場所だ。しかし、数年前に高架電車スカイトレインの延伸部分が開通し、ウドムスックにも駅ができたことでその状況も変わりつつある。そうなると、駅前にある佐助へのアクセスは決して悪くはないということになった。

 元々ここに店を構えることに決めたのは、鳥波多゛バンコクの2店舗目のビルオーナーが佐助が入居する商業施設も保有していたからだった。このオーナーもまた鳥波多゛の味に惚れ込み、直々にウドムスックへの誘いがあったのだ。ただ、ここはバンコクの下町で、必然的にタイ人を対象とすることになる。そのため、これまでと同じ形態ではなく、ネクストブランドという形になったのだ。

「客単価でいえば、例えば鳥波多゛が1000バーツ(約3000円)くらいとすれば、佐助はその半分です。鳥波多゛と同じメニューもありますが、タイ人向けにやや値段を下げています。だから客単価が安くなるというのもありますが、タイのお客様はシビアに料金を見ていますね。日本酒だと小瓶のものが人気ですが、量と価格をよく見て判断されているようです」(タイ鳥波多゛グループ全体のメニュー考案と調理も担当する川上海氏)

 河上氏は、佐助の厨房から見たタイ人客は意外と冷静な目で価格を見ていると分析する。

 これはそこそこに給料はもらっているが、だからといってタイの平均的物価感覚もしっかりあるという、中流階層にいるヤングエグゼクティブっぽい若手たちの特徴でもある。

◆しっかりした内装の割に低価格で心を掴む

 タイの所得格差は著しく、富裕層は屋台には来ないし、低所得者層も高級店には来ない。しかし、中流層の20代30代は好奇心旺盛で、そこそこの料金設定であれば支払い能力もある。また、SNSの発展などで、この層は行動範囲も広くなっているので、流行に敏感なのも特長だ。そのため、和食ブームの中、和風の内装を施した同店は関心をもたれやすい。しかも、佐助のように和風な内装にした中流層向け飲食店であれば和食ブームのタイでは富裕層も入りやすい。現にタイの芸能人などもときどき訪れているという。

「今後はタイ人に突き刺さるメニューを考案していきたいですね」

 河上氏としてはこれまで日本人向けのメニュー考案が主な仕事だったが、これからはタイ人にも喜ばれるネタを考えなければならない。河上氏曰く「鳥波多゛グループをタイに浸透させていきたい」という目標を掲げる場合、佐助のようにタイ人をターゲットにして展開していくのは至極当然の流れなのかもしれない。

<取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:@NatureNENEAM)取材協力/居酒屋 佐助>