本田圭佑は日本代表でレギュラーの座を奪い返すため燃えている【写真:Getty Images】

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「危機感を与えてくれることに感謝」

日本代表は5日、ロシアW杯アジア最終予選でサウジアラビア代表と対戦する。過酷な予選もこのアウェイゲームで最後を迎える。そんな中、これまで長くサムライブルーを引っ張ってきた本田圭佑の立ち位置が危うくなっている。絶対的なレギュラーでなくなった今、金髪の背番号4はいかにして存在価値を示していくべきなのだろうか。(取材・文:河治良幸)

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 W杯アジア地区最終予選もいよいよラストマッチを迎える。すでに予選突破を決めた日本代表はオーストラリア戦からメンバーを入れ替えて臨むと予想されるが、パフォーマンスによって今後の起用法や選考が大きく変わりうる選手もいる。その1人が本田圭佑だ。サウジアラビア戦では右サイドでのスタメン出場が予想されるが、本大会に向けた彼なりのソリューションを示すことができるだろうか。

「僕らは必要なくなるということも当然言われる。でも、本田、香川が必要ないと思われることは、逆に良いこと。これでポジションを取りにいける」

 オーストラリア戦は[4-3-3]の右ウィングで浅野拓磨が先発し、武器であるスピードと積極的な仕掛けで縦の飛び出しを狙い、先制ゴールという結果を出した。最終的に選手交代は全て前線の選手だったが、右サイドは浅野に代わり久保裕也が投入され、本田圭佑の出番はなかった。

「これがもしW杯本戦ならもしかしたらサッカーを辞めようというのも考えるかもしれないけど、目標は本戦なので。本戦のピッチに立つこと。そういう意味では、今ベンチに座っていることはプロセス。危機感を与えてくれることに感謝している。今の状況を楽しんでいるし、刺激を受けていきたい」

 新天地のパチューカではデビュー戦でゴールを決めたものの、2試合の出場時間は90分にも満たない。オーストラリア戦で出番がなかったのは必ずしも戦術面だけが理由ではないかもしれない。ただ、この日のチームのパフォーマンスを考えれば、本田がもし右サイドに入った場合に同じソリューションは起こらなかったはずだ。

「たぶんこっちで出る場合は右で出ると思うし。周りは違和感ないと思うんですよね。いつも僕とやる時は右の本田圭佑というのをある程度分かっている選手がいるわけで」

 オーストラリア戦の前にはそう語っていた本田だが、パチューカで[4-3-3]のインサイドハーフをメインに起用されることが見込まれ、後半から出場したティファナ戦は[4-4-2]の前線でセカンドトップ的な役割を担った。ただ、形こそパチューカに似ているがサッカーの内容は異なるものであり、そのまま当てはめられるわけではない。

攻撃の選択肢を増やす本田の特性

 親善試合のシリア戦では途中から[4-3-3]の右インサイドハーフにポジションを移し、左サイドの乾貴士を生かすサイドチェンジなどで存在感を示した。しかし、オーストラリア戦で山口蛍と井手口陽介が見せたプレーを世界に向けたスタンダードと考えるならば、本田のインサイドハーフはオプション以上のものにはなりにくいだろう。

 右サイドでも浅野が見せたプレーを本田がそのままできるわけではない。しかし、本田には豊富な経験と安定してボールをつなげる強みがある。オーストラリア戦後に右サイドバックの酒井宏樹は「(いつもは)僕の前には(本田)圭佑くんがいるので、うまくコンビネーションを取ってくれる」と語っていたのが印象的だ。

「でも今日は(浅野)拓磨だったので、僕もコミュニケーションを取りながらやっていかないといけなかった」

 それでも[3-4-3]のオーストラリアは「やりやすかったですし、やり方的には(浅野)拓磨を使わせてくれた。前半1、2本かなりいい形で入れたので2人とも落ちついて入れたし、(試合の)最初から組んだのが初めてだった割には良かった」と酒井宏樹は振り返るが、相手にうまくはまらないとそのまま特徴が出しにくい縦のコンビにも思える。

 その点において本田は右サイドバックの選手を高い位置まで引き出すプレーを得意とし、酒井宏樹とのコンビネーションにしても、最近は外を上がらせるだけになく、インサイドから直接ゴールに向かわせるプレーも促しており、攻撃のバリエーションは多彩になっている。

浅野とも久保とも違う“背番号4”の価値。競争の中で生き残る道を見つけられるか

 また浅野のようなスピードや徹底した縦への意識はないが、ボールをつなぎながらタイミング良くゴール前に飛び出す術は心得ている。左足のパスはもちろん、右足のクロスによるアシストも期待できる。サウジアラビアの両センターバックは長身で体が強いものの、揺さぶりを入れた後のクロスに対して目の前のマークを見失う傾向があり、UAE戦もそこから相手FWをフリーにしたことが失点に繋がった。ここは本田の特徴を生かしやすいポイントだ。
 
 そうした特性を、相手もそうだが、周りとの組み合わせにより活かしていければ、右サイドでも価値をアピールすることはできるだろう。

 ただ、より強い相手を考えるとインサイドで本田なりの特性を生かせる戦い方を確立していかなければ、結局は全てのポジションがオプションになる。そして、それぞれのポジションにより良い選手が出てくれば、W杯本大会での経験値を除き、メンバーに残る理由もなくなってしまう。

 本田の場合は監督とコミュニケーションを取りながら自分の生かし方を見出していけるタイプの選手だが、そもそも代表メンバーに入っていかなければ、その余地もなくなってしまう。

 現在のチームにおいて戦術的な中心ではなくなったところから、どう存在価値を示し、本大会への競争に挑んでいくのか。本田なりの特徴をもって世界との戦い方のヒントを見出すことができれば、彼にとってもチームにとっても幸せなことだろう。

(取材・文:河治良幸)

text by 河治良幸