RHYMESTER、AKLO×JAY’ED、LUCKY TAPES……快楽的な“ダンス感覚”持ち合わせた新作

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 ネオ・ソウル、ジャズ、ヒップホップ、エレクトロなどが有機的な融合を繰り返し、ジャンルの壁を超えた新しい音楽が生まれ続けている世界の音楽シーンとリアルタイムで同期しながら、ここ日本でも“踊れる”ポップミュージックが次々とリリースされている。今回は音楽的な質の高さと快楽的なダンス感覚を持ち合わせた新作を紹介したい。気持ち良く踊れるかどうかは、いまやポップスの大前提だと思う。

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■RHYMESTER『ダンサブル』  RHYMESTERの新アルバムのタイトルはずばり『ダンサブル』。70年代後半のディスコサウンドをアップデートさせたリードトラック「Future Is Born feat.mabanua」(ヒップホップの誕生と未来をテーマにしたリリックも最高)で示されていた通り、前作『Bitter, Sweet&Beautiful』以来約2年ぶりとなる新作は、RHYMESTERのキャリア史上、もっとも“踊れる”アルバムに仕上がった。KIRINJIとのコラボレーションによる未来的ファンクチューン「Diamonds feat. KIRINJI 」、サイプレス上野、HUNGER(GAGLE)とともに高度なラップスキルの応酬が楽しめる「爆発的 feat. サイプレス上野 & HUNGER (GAGLE)」など楽曲のバラエティはとても豊かだが、“ダンサブル”というテーマを貫くことで、現代的なダンスミュージック・アルバムとして成立しているのだ。トレンドの芯を捉え、自らの表現をアップデートさせた大充実作だと思う。

■AKLO×JAY’ED『Sorry…come back later』

 JAY’EDのアルバム『Here I Stand』に収録されていた「All I Did Is Grind feat.AKLO」も素晴らしかったが、まさかここまで本格的なAKLO×JAY’EDのコラボ作品が聴けるとは! レコーディング・スタジオでたまたま顔を合わせたAKLO、JAY’ED、プロデューサーのBACHLOGICがゼロの状態からセッションをスタート。そこで手応えを得た3人はさらにソングライティング・セッションを重ね、1st EP『Sorry…come back later』のリリースへ辿り着いた。制作ではBACHLOGICがトラック、JAY’EDがメロディ、AKLOがリリックを担当していたそうだが、海外のトレンドと強く重なったビート、ソウルネスを色濃く反映させたメロディとラップの融合は本当に刺激的。たとえばカルヴィン・ハリスの『Funk Wav Bounces Vol.1』と続けて聴いても何の違和感もないほどの快楽がここにある。

■WONK『Castor』

 ロバート・グラスパー以降、カマシ・ワシントン、サンダーキャットといった現行のジャズ・アーティストとの親和性を感じさせてくれるサウンドによって、日本の音楽シーンの新たな潮流を生み出しつつあるWONKの新作は、ブラックミュージックの世界的な流れと共鳴するスムース&ダンサブルな『Castor』、エクスペリメントな側面を前面に押し出した『Pollux』の2枚同時リリース。AOR、シティポップのユーザーはもちろん、一般的なJ-POPファンにも十分に楽しめるポップアルバムと先鋭的なヒップホップを軸に実験的なサウンドを志向する作品を同時に体現できること自体がWONKの魅力であり、アイデンティティであると言ってもいいだろう。

■LUCKY TAPES『VIRTUAL GRAVITY』

 1stアルバム『The SHOW』、2ndアルバム『Cigarette & Alcohol』によって日本のインディーポップシーンの中心的な存在となったLUCKY TAPESの約1年ぶりの新作『Virtual Gravity』は“全曲アンセムです!”と断言したくなる4曲入りEP。THE JACKSONSの「今夜はブギー・ナイト」へのオマージュを感じさせるファンキー&ディスコティックな「Boogie Nights」、音数を抑えることで有機的なグルーヴを放出するソウルフルな歌モノ「Gravity」、そして、以前からライブのハイライト楽曲として支持を得ているドラマティックなミディアムチューン「シェリー」(ゴージャズなブラスを取り入れたアレンジがカッコいい!)。日本語の歌詞とブラックネスを自然に混ぜ合わせた歌、随所で見せるロック的なアプローチを含め、このバンドの本質を端的に示した作品である。

■PAELLAS『D.R.E.A.M.』

 2016年にEP『Remember』、アルバム『Pressure』をリリースし、早耳の音楽ファンから注目を集めた東京発の5人組バンド・PAELLASによるミニアルバム『D.R.E.A.M.』。“現行のR&Bを基調にした洋楽ライクなサウンド”“シンセポップ、チルウェイブ、ニューウェイブなどの要素もあり”といった特徴はさほど新しくもないが、このバンドの強味はむしろ楽曲自体の良さ。感情の繊細な起伏と重なる旋律とともに<言葉を/濁しても/最後はひとつだけ>というフレーズがスムーズに入ってくる「Shooting Star」、ボーカリストの中性的な声質の魅力を際立たせた「Fade」など“歌”を中心とした楽曲こそが、彼らの武器なのだと思う。(森朋之)