画像提供:マイナビニュース

写真拡大

薬剤師として30年以上のキャリアを誇るフリードリヒ2世さんが、日常のさまざまなシーンでお世話になっている薬に関する正しい知識を伝える連載「薬を飲む知恵・飲まぬ知恵」。今回は服薬する際の飲み物に関するお話です。

○薄めのコーヒーでなら薬を飲んでもOK

薬を飲む際、多くの人は水と一緒に薬を飲むことでしょう。ただ、すぐ手元にお茶のペットボトルがあったり、冷蔵庫に残りわずかな牛乳などがあったりした状況下で、それらの飲料物と一緒に薬を服用してしまった経験がある人もいるのではないでしょうか。果たして、水以外の飲み物で薬を飲んでも大丈夫なのでしょうか。飲料別に解説していきましょう。

お茶・コーヒー

体の中の鉄分が不足すると貧血になります。赤い血(赤血球)の重要な部品・ヘモグロビンが減ってしまうからです。ヘモグロビンは肺で酸素を集めて全身の組織に届ける働きをします。この働きが低下すると貧血になります。「貧血は酸(素)欠」なのです。鉄不足だけが貧血の原因ではありませんが、鉄不足が原因で貧血になっている場合は鉄の錠剤を飲みます。

以前、「鉄剤と一緒にお茶やコーヒーを飲むと鉄剤の効果が弱くなる」と言われていたことがありました。お茶やコーヒーにはタンニンという「渋み」の成分が含まれており、これが鉄と結合して「タンニン鉄」になり、鉄分の吸収が妨げられると考えられていたからです。ところがその後、鉄剤を水で飲んだ場合とお茶で飲んだ場合の貧血改善効果を比較したところ、ほとんど差がなかったという研究報告が出てきました。結局、鉄剤はお茶やコーヒーと一緒に飲んでもあまり問題はないということになります。

ただし、鉄とは無関係ですが、濃いコーヒーには中枢興奮作用のあるカフェインが多めに含まれているため、催眠導入剤や鎮静剤とは相性がよくないかも。また、一部の薬には無水カフェインが配合されていることもあるので、これも濃いコーヒーと飲むとカフェインが重複します。ともあれ鉄剤であれ何であれ、薄めのコーヒーなら気にしなくてもよいでしょう。

フルーツジュース

たいていの果物のジュースは気にせずに飲んでもよいのですが、グレープフルーツジュースだけは要注意です。難しい話になりますが、グレープフルーツがヒトの細胞の中にある「シトクロムP450」という酵素の働きを邪魔することが知られています。この酵素の働きが弱くなると一般に薬の代謝(分解)に時間がかかってしまい、薬の効き目を必要以上に強くさせてしまう可能性があるのです。

例えば、カルシウム拮抗薬という血圧を下げる薬や、抗血小板薬(血液をサラサラにする薬)などでは注意が必要です。その他の薬でも、大量のグレープフルーツジュースを薬と一緒に飲むのはやめておいたほうが無難です。少量(グラス1杯程度)ならかまいません。同じ柑橘類でもレモンやオレンジ(みかん)は気にしなくてよいのです。変ですね。他の果物も今のところ特に「危ない」情報はありません。

○やはりアルコールとの服用は避けるべき?

牛乳

次に牛乳を考えてみましょう。一部薬剤の成分が牛乳のカルシウム分と結合してしまい、薬の吸収や作用を低下させることがあると言われています。ニューキノロン系抗菌薬やテトラサイクリン系抗生物質、セフェム系抗生物質などの薬を飲んだ後は、少しの間(2時間ぐらい)牛乳を飲むのを避けるのがよいという人もいます。

また通常、私たちの胃は酸性で腸はアルカリ性です。薬の中には、胃をそのまま通過して腸で溶けて効き目を出すため、胃酸から薬を守るコーティング(覆い)が施されている薬があります。ところが、牛乳を飲むと胃がアルカリ性側に近づくことがあるのです。そうなると薬のコーティングが胃で壊れてしまい、適切な場所で効き目が現れません。

ただ、薄めの牛乳も市販されておりますし、特別にカルシウムを多く配合している製品でない限り、牛乳についてはそれほど神経質に考えることはないという人もいます。

お酒

お酒はどうでしょう。肝臓で薬が代謝(分解)される際、同時にアルコールを摂取していると肝臓にいろいろな影響を与えます。普段から大量にアルコールを飲んでいると、薬の作用が正しく現れなかったり副作用が強まったりすることがあります。アルコール自体に中枢神経抑制作用もあるので睡眠導入剤や鎮静剤との併用は危険です。

結論として、アルコールと薬を一緒に飲むのは避けたほうがよいでしょう。ノンアルコール飲料に関しては証拠(根拠文献)不足で何とも言えませんが、少なくともアルコール分が原因の不都合はなさそうです。

○水かぬるま湯という選択肢が無難

まとめると、薬は水かぬるま湯で飲むのが無難です。有効成分が溶け出しやすく薬の働きにも影響を与えないからです。麦茶やウーロン茶、薄めの緑茶で飲むのも問題ありません。

最近では水なしで服用できる「OD」タイプの錠剤も徐々に増えてきました。OD(Orally Disintegration)錠とは、「口腔内崩壊錠」の略語です。唾液で溶けるため、水のない環境で薬を飲まなくてはならないときは便利です。覚えておくとよいでしょう。

※写真と本文は関係ありません

○筆者プロフィール: フリードリヒ2世

薬剤師。徳島大学大学院薬学研究科博士後期課程単位取得退学。映画とミステリーを愛す。Facebookアカウントは「Genshint」。主な著書・訳書に『共著 実務文書で学ぶ薬学英語 (医学英語シリーズ)』(アルク)、『監訳 21世紀の薬剤師―エビデンスに基づく薬学(EBP)入門 Phil Wiffen著』(じほう)がある。