都内でデモ飛行する世界最大のドローンメーカー・DJIのドローン。典型的なマルチコプターだ

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世界中で小型無人機「ドローン」の利用が増えている。その流れを受けて、今年、日本にも「ドローン元年」がやってきそうだ。国は今年度から物流を念頭に「無人運転」の政策検討を始める。「ドローン宅配便」が可能になるためのシステムの要件が示されれば、事業化のめども立つ。国はドローンを日本発の成長産業に育てられるだろうか――。

■政策的もホットなプロジェクトが始動

今年はドローンの事業化にとって、元年と言える年になるかもしれない。政策的にホットなプロジェクトが次々に始動するからだ。

経済産業省とNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、ドローン省エネ実証事業を2017年〜2019年度で実施する。同事業では、目視外飛行に必要なドローンの性能評価基準、UTM(運行管理システム)、衝突回避技術を、わが国の技術として開発することを目指している。また、小型無人機の官民協議会が、今年5月にこれからの目標を示したロードマップ公表したが、この方針に従って、特に物流を念頭に置いた目視外飛行のための各種の政策検討・環境整備が今年度より開始される見込みだ。

■実は3種類あるドローン

まずはおさらいから。ドローンとは一体どういうものか。ドローンというと複数の回転翼を持ったマルチコプターを思い浮かべるが、実はこれだけがドローンではない。航空法上の無人航空機がドローンに当たるが、同法では次のように定義している。「人が乗ることができない飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船であって、遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるもの」と、かなり広い定義となっている。最大の特徴は「人が乗ることができない」という点にある。

ここでは無人航空機のことをドローンと呼ぶことにするが、ドローンは大きく3つに分類される。第一が前述の回転翼機(マルチコプター)。小型で安定性が高く、主な用途は画像撮影。これまで人間がいけなかった場所や高度から撮影するという新しい用途を切り開いた。航続時間は15分〜45分程度で、巡航速度は30〜60km程度である。 

第2が回転翼機だが、回転翼が一つのシングルロータ。見た目はヘリコプターのミニチュア版で、モーターではなくエンジンで動く。航続時間は60〜90分とマルチコプターより長く、機体も大きいため、積載重量もマルチコプターが10kgくらいまでなのに対して、100kgくらいまで運べる。日本では以前から農薬散布などに使われていた、その運搬能力の高さから、運送事業に使えるのではないかと見直されている。

第3が固定翼機。こちらはいわゆる飛行機だ。偵察など軍事用に開発されたものが民間に転用された。巡航速度は30〜150kmで、最大の特徴は航続時間が3〜6時間と長いことにある。主な用途は、こちらも画像撮影。ただし、積載重量は5kgくらいまでで、あまり重いものは運べない。

では、ドローンに対する規制はどうなっているのだろうか。2015年12月に施行された改正航空法では、ドローンは飛行できる空域が定められた。ドローンが飛べない地域は、「空港等の周辺の上空の空域」「人口集中地区の上空」「150m以上の高さの空域」の3つで、それ以外の空域は飛行可能だ。ただ、国土交通大臣の許可を受ければ、禁止空域でも飛ぶことができる。

さらに飛行の方法についても制限がある。国交大臣の承認が必要な飛行方法は、夜間飛行、目視外飛行、対象に30mよりも近づく、イベント上空の飛行、危険物の輸送、物件投下などである。

■警備分野ではすでに目視外飛行を活用

では今後のドローンの事業化は、どのように進むのか。内閣府に設置された「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議(小型無人機の官民協議会)」では、ドローンの発展段階を4レベルに分け、課題を設定している。レベル1が目視内操縦、レベル2が目視内飛行(自律飛行)で、ここまではすでに実現している。次いでレベル3として18年ごろをめどに無人地帯での目視外飛行、レベル4として20年ごろに有人地帯での目視外飛行が目標として掲げられている。具体的なイメージとしては、レベル3が離島や山間部への荷物配送や被災地の状況調査や捜索など、レベル4が都市の物流、警備あるいは発災直後の避難誘導などだ。

ドローンの事業化に詳しい三菱総合研究所科学・安全事業本部の大木孝主任研究員によればドローンのさらならなる活用に当たっては「目視外飛行の実現が重要なポイントとなる」と、指摘する。

ドローンの利用分野としては、現在、物流、インフラ維持管理(橋や鉄塔などの巡視・点検など)、建設(ドローンによる写真測量など)、農業、警備など5つの分野が想定されている。すでに建設や警備はビジネス化を実現。中でも興味深いのが、警備大手のセコムがドローンを使ってサービスしている施設内巡回や異常発生時の緊急対応である。操縦者はコントロールセンターにいるため、肉眼でドローンを目視しているわけではない。目視外飛行を活用したサービスの先駆的事例と言える。

■目視外飛行実現のための2つのハードル

5つの分野の中で、話題の華々しさと異なり、実現までの道のりが一番遠いのが、物流だ。当然ながら、荷物をより遠くまで運ぼうとすれば、目視外飛行の技術と飛行ルールなど環境整備が必要になるからだ。

目視外飛行実現に当たっては、技術面と環境整備の2つのハードルを越える必要がある。技術開発面では第1に目視を代替する機能の実現。要は操縦者が目で見るのと同じ機能を持つこと。第2に運行管理や衝突回避の技術をより進化させること。さらに、第3者に対する安全性を確保する技術の確立も求められる。平たく言えば、故障しにくい機体を作り上げることと、もし故障して墜落しても、被害が抑制できる技術の開発だ。ドローンすべてに共通して必要な技術は、バッテリーの長時間・短充電化の技術である。

環境整備の面では、目視外飛行・第三者上空飛行の要件を定めること(国土交通省・経産省の合同部会が検討)、機体の性能評価基準の策定(経産省・NEDO)。操縦・運行管理にかかわる人材の育成(国交省と民間の講習プログラム)などが挙げられる。例えば、物流であれば、「目視外飛行になるため、物流用の空域を設定する方が合理的」(大木氏)だ。

総じてみれば、ドローン事業化のためのシステム体系をどう構築するかと言えるだろう。

「運行管理については、システム全体のアーキテクチャ(設計思想)の検討が大きな課題。もう一つは、管理のロジック(処理の内容・手順)をどうするか。アーキテクチャとロジックは、世界的にも議論されており、統一的な見解はまだない」(大木主任研究員)

いち早くシステムの要件を確立・明示すれば、技術開発も進むだろうし、新しい活用法も生まれてくるだろう。運航管理システムを確立できれば、システム全体として、国際競争力を持てるかもしれない。行政の「縄張り意識」を超えたスピード感が求められている。

(プレジデントオンライン編集部 原 英次郎 撮影=Eijiro Hara)