スタミナの消耗が激しいサウジの地で日本代表はどんな戦いを見せるのか。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

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 ワールドカップ出場を決めたオーストラリア戦。あの日を思い出す。8月31日は、驚くほど涼しい1日だった。午前中に降っていた雨があがり、埼玉スタジアムの気温は20度ほど。夏場のサッカーとしては、これ以上を望めない、ベストな環境だった。
 
 日本とオーストラリアの両チームが受けた恩恵。とはいえ、体力を消耗しやすいハイプレス戦術を採った日本にとっては、まさに天の恵みだった。味方の猛烈なプレッシングを、最終ラインから見守ったDF昌子源は次のように語っている。
 
「僕らの運動量を考えれば、後半に少し落ちるのではないかと不安はありました。でも、その不安を一蹴してくれる前の選手の働きに感謝するしかないです。(運動量が上がったのは天気もあった?)まあ、それも。すごく涼しくて、多少の蒸し暑さはありましたけど、汗の量的にも普段のJリーグよりは少なかったです。両チームにとって良いことではあるけど、天気も味方してくれたと思います」
 
 ハリルホジッチ監督は、コンディション重視の選考で知られる。特にオーストラリア戦で起用された乾貴士、浅野拓磨、井手口陽介、山口蛍は、すばらしいハードワークを見せた。最後まで体力が持つのか心配したが、涼しい気候の恩恵もあり、ダイナミックに走り切った。82分に井手口が2点目を奪うまで、前後半にわたってオーストラリアにハイプレスを浴びせたことは大きい。
 
 ここが肝だ。オーストラリア戦に限らず、昨年11月のサウジアラビア戦、3月アウェーのUAE戦も同様だが、ハリルジャパンは走り切れる環境で戦えば強い。その一方、フィジカルのパフォーマンスが望めない環境では、相対的に弱くなる。
 
 たとえば今年6月のアウェー、イラク戦(1-1)は37度の猛暑だった。後半になると、選手が次々と動けなくなり、見るのも辛いほどの散々な試合になった。ボールを持つこと=ポゼッションが安定せず、守備もマンツーマンで振り回されるため、“ゲームコントロール”が弱い。コンディション重視だけに、それを望めない環境では、後半に運動量が落ちて尻つぼみになる。そんな試合を何度も見てきた。
 理想的なコンディションだけでなく、酷暑や高温多湿の環境下であっても、ハリルホジッチは勝つためのソリューションを見出すことができるのか。この課題は解決されないまま、予選を終えた。
 
 過去にハリルホジッチが実績を残したアルジェリア代表も、ブラジルワールドカップでプレーした都市は、ベロオリゾンテ、ポルト・アレグレ、クリチバの3つ。涼しく走りやすい気候が多かった。ハリルホジッチの実績はこの環境がベースにあることを忘れてはいけない。
 
 ジッダでのサウジアラビア戦は、30度を越える猛暑が予想される。もし、この試合が“決戦”になっていたら……。ハリルジャパンの苦手な環境。どうなっていたかは、見通せない。オーストラリア戦で突破を決めたのは、本当にすばらしい結果だった。
 
 本大会はロシアなので、夏でも涼しい。ハリルホジッチ向きの大会には違いない。11都市のうち南部のソチ、ロストフ・ナ・ドヌ、ヴォルゴグラードの3都市は、やや高温多湿になりそうだが、それでも前回のブラジル北部に比べればマシだろう。
 
 ただし、このような環境面を除いても、“ゲームコントロール”はもっと向上させる必要がある。
 
 最終予選が始まってから、ハリルジャパンはリスクを避けるためか、マンツーマンで守備をかみ合わせ、解決する傾向が強くなった。それは正しい決断だ。しかし、ワールドカップで戦うチームには、1対1で簡単に剥がしてくるアタッカーがごろごろいる。ビルドアップのボールの動かし方も、オーストラリアより巧みだ。今の守備戦術では、相手に振り回され、消耗が激しすぎる。
 
 今のままでは、たとえ気候に恵まれたとしても、最後まで走り切るのは難しいだろう。ポゼッション率40パーセントなら体力はもつが、30パーセントまで下がれば、どこかでガス欠になる。それでも、ペナルティエリアで全部撥ね返すほどの高さとパワーがあるチームなら良いが、日本代表にそれは無理だ。
 
 解決するべき課題がある。日本にとっては消化試合となるサウジアラビア戦だが、“ゲームコントロール”に注目したい。
 
 猛暑で走り切れない試合を、ポゼッションでいなしたり、逆に消耗を抑えて相手にボールを持たせるゾーンディフェンスを実践したりと、攻守両面で“ゲームコントロール”を高めることができれば、価値ある一戦になる。
 
 本大会への道は、すでにつながった。ハリルジャパンは、消化試合を消化試合として戦うようなチームではないはずだ。
 
取材・文:清水英斗(サッカーライター)