『僕たちがやりました』の“視聴熱”なぜ高い? ”視聴率”では語れないドラマの魅力

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 7.9%、6.5%、6.6%、5.8%、5.4%、5.2%、5.4%……これ、いったい何の数値かわかりますか。

参考:窪田正孝と新田真剣佑、永野芽郁を巡る三角関係に 『僕たちがやりました』新たな友情の芽生え

 正解は、初回から第7話までの『僕たちがやりました』(関西テレビ・フジテレビ系/以下、『僕やり』)の視聴率(関東地区/ビデオリサーチ調べ)。

 人気絶頂の窪田正孝を主役に起用し、初回2ケタを下回ったどころか、右肩下がりの苦戦ぶり。その一方で、物語は息つく暇なくスリリングな展開を見せ、“視聴熱”(SNSなどを集計し、今熱い番組・人物・コトバからテレビの流行に迫る新指標)においては今季ナンバー1を誇る。

 観ている人にとっては激アツなのに、観ている人は数字上少ない。その理由には、エログロがふんだんに盛り込まれた内容が、家族と一緒にリアルタイム視聴しにくいということは確実にある。

 事実、Twitterのトレンドには、リアルタイムから『僕やり』の登場人物や俳優などの名前がぽつぽつランクインしているものの、関連ワードが軒並み上位を占めるのは、深夜になってから。「風呂上がりに『僕やり』の録画見てる」「今帰ってきて『僕やり』の録画見てるところ」などの書き込みが目立つのは、一つの特徴だ。

 さらに、かつては夏の風物詩ともいわれた“学園モノ”ドラマが絶滅寸前になっている影響は大きい。なぜか。よく言われる「若者のテレビ離れ」以前に、そもそも若者人口が大きく減少しているわけだから、至極当然のことだろう。内閣府の「平成27年版 子ども・若者白書」では、18歳未満の未婚の子供がいる世帯の数が年々減少していること、平成25(2013)年は1,209万世帯で、世帯総数に占める子供がいる世帯の割合は24.1%。実に、30年前の約半分にまで低下しているということが指摘されている。

 そもそも学園モノにリアルタイムで共感できる年代の人口が少なく、おまけに録画機能やスマホの普及などによって「チャンネル争い」という言葉も死語になりつつある今、学園モノが数字をとれたら、むしろミラクルではないかとすら思う。学園モノで数字を稼ごうと思ったら、昔懐かしの学園モノの再放送をしたほうが良いくらいだろう。

 ちなみに、近年では、エログロサスペンスの意欲作『僕やり』とは真逆のテイストながら、やはり「低視聴率+高視聴熱」の学園モノがあった。『表参道高校合唱部!(通称オモコー)』(TBS系)だ。

 『オモコー』は『僕やり』に比べ、メインの生徒役としては当時、名前で数字を稼げるような有名俳優はほとんど出演していない(せいぜい森川葵くらい? 志尊淳や高杉真宙も、今ほど有名ではなかった)。主演は後に『べっぴんさん』でヒロインを務める芳根京子で、その妹役は『まれ』でヒロインの少女時代を演じた松本来夢、親友役には10月スタートの『わろてんか』ヒロインの葵わかな、『マッサン』出演の堀井新太や、『マッサン』のほか『ひよっこ』三男役の泉澤祐希も出演しているなど、“朝ドラ俳優の宝庫”で、実は粒ぞろい。

 また、手練れの役者たちと作りこまれた脚本・演出の『僕やり』に比べ、脚本などに粗っぽさは目立つものの、瑞々しさと清涼感は抜群で、根強いファンを獲得。後に高い評価を受けている。

 思えば、学園モノの『ごめんね青春!』(TBS系/2014年)が大爆死と言われた宮藤官九郎脚本作品も、振り返ってみると、高視聴率だったドラマは朝ドラ『あまちゃん』(NHK)と東野圭吾原作の『流星の絆』(TBS系)くらい。そのほかは軒並み視聴率で苦戦しつつも、DVDが売れるというのがお約束のパターンだ。

 ドラマを作るとき、視聴率ばかり考えて、年代別人口のボリュームゾーンを狙うのは、常套手段だ。でも、テレビドラマがみんな中高年向けの医療モノ、刑事モノや一家揃って楽しめるものばかりになってしまったら? ドラマに未来はない気がする。

 地上波の、それもゴールデンタイムのドラマとは思えないエロも暴力も逃げずに描き、しかも、それが単なる話題狙いでなく、物語の重要な要素として機能している『僕たちがやりました』。これを2017年の今やってのける意欲だけでも、視聴熱の高さは十分納得できる。

 テレビを“視聴率”で語るのはナンセンスではないかと考えられつつある時代。そろそろマスコミも“視聴率”ばかりを取り上げるのは、やめませんか。

■田幸和歌子出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。