人工知能を用いた画像診断システムの開発は新たなフェーズに突入しつつある(写真はイメージ)


 7月10日 国立がん研究センターは人工知能(AI)を用いて大腸がんおよび大腸ポリープを内視鏡検査時にリアルタイムに発見するシステムの開発に成功したと発表しました。

 こちらのプレスリリースに動画がありますが、内視鏡検査時にリアルタイムで大腸ポリープを人工知能が検出していく様子は圧巻です。

 AIが内視鏡検査医師の視覚をアシストすることで、人間の視野の限界を補って、より広い画像空間を瞬時に解析できるようになり、ポリープの見逃し率が減少することは間違いないでしょう。

 プレスリリースには「ポリープと早期がんの発見率98%」とあります。実際の臨床試験のデータはまだ出ていませんが、平均医師の能力を超えていると思われます。

 これまでの医療用画像の人工知能診断は、撮影された静止画像のダブルチェックに使う用途が想定されていました。しかし、開発はさらに進み、検査時にその場で様々な疾患の診断を行うステージに突入したのです。

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現場の雰囲気はまだ「様子見」

 とはいえ現場では、AIが病変の検出診断サポートを行うことに抵抗感を抱く人が多いのは事実です。

 私たちのグループは、7月12日から14日かけて東京ビッグサイトで行われた「国際モダンホスピタルショー2017」の会場で、来場した医療関係者に「人工知能診断支援システムを現場で活用したいですか」というアンケート調査を行いました。その結果は以下のようになります。

 さすがに「不要なので検討対象外」という人はいないものの、「すぐに活用したい」という意見は3分の1弱にとどまっています。画期的な技術であることは理解しているのでしょうが、大半の人は「もう少し様子を見てから」「なんとも言えない」という捉え方なのです。

AI診断支援技術は絶対に現場で使うべき

 しかし、AI画像診断支援技術は、間違いなく全ての現場で使用するべき技術であると私は考えています。なぜならばAI診断支援技術は、患者、医師、医療機関のプレイヤー、その全てにとって“Win - Win - Win”のシステムだからです。

 まず、患者にとっては、より精度の高い検査を直接体に受けるリスクなく享受することができます。

 内視鏡医師にとっては、内視鏡検査の負荷を軽減し、経験の浅い医師でもAIが指し示す部位をよく観察することによって熟練医師並みの検査が可能になります。

 そして医療機関にとっても、利用者の満足度向上と医療機関の競争力向上につながります。

 このように、AI画像診断支援技術は、関係する三者全てにとって欠点のないシステムなのです。それでも、使わない理由があるとすれば、利用する側の「変化への抵抗感」だけではないでしょうか?

日本発のAI診断が全世界に貢献できる理由

 そもそも胃内視鏡などの消化管内視鏡医療機器は日本で開発され世界に広まりました。そして、オリンパス、フジフイルム、HOYA(RICHO)の3社が世界シェアの7割を占める、日本企業が世界を席巻している数少ない分野です。

 そのため、日本の内視鏡医師の技量も全世界でトップクラスです。前回コラム「人工知能が検診の見落としを防ぐことは可能か?」で、「胃の早期がん発見」には高度な職人技が必要とされることを紹介しましたが、当院の内視鏡医師であれば10年、1万件の経験を積んでいる者が多いので診断が可能です。日本の内視鏡医師の診断技術は、中国やヨーロッパはもとより、アメリカにおいても "crazy!" (=amazing)と言われるほど高いレベルなのです。

 AI開発には正確な診断技量に基づいた教育用画像が必要ですが、それができるのは全世界で日本の内視鏡医師だけです。世界に通用するAIを日本が開発できる数少ない分野でもあるのです。

 さて、これまで本コラムでご紹介してきましたように、私たちのグループも内視鏡画像人工知能診断支援システムを開発している最中です。

 国立がんセンターのシステムは、内視鏡検査時に大腸がん、大腸ポリープを発見するというものですが、私たちのシステムは胃がんの原因であるピロリ菌胃炎、そして胃がんの発見を主目的としています。

 こちらも、良好な精度と動画によるリアルタイム診断が可能な段階に入ったため、9月1日付で株式会社AIメディカルサービスを設立して開発を進めることになりました(詳細はこちら)。

 国立がんセンター、私たちのAIメディカルサービス、そして他の企業など、消化器内視鏡画像AI診断システムの開発で全世界の医療に貢献する日本発のプロジェクトが着々と進んでいます。今後の展開がとても期待される分野です。私たちもぜひがんばっていきたいと思います。

筆者:多田 智裕