オーストラリア戦で見事なアシストを決めた長友。写真:徳原隆元

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 オーストラリア戦を制した後のミックスゾーンで、長友佑都が少し落ち着いた表情で話している。

「今回のワールドカップ出場は一番嬉しい。3回目ですけど、今回は格別ですね。なんなんだろう、この気持ちは。なんかこうホッとした気持ちもあるし、ベテランとしてチームを引っ張らないきゃいけないという気持ちもある」

 饒舌な長友を見て、ふと思う。”あの時”とはだいぶ表情が違うな、と。あの時とは、今から2年7か月前のアジアカップ。当時の長友は「自分たちのサッカー」にこだわりながらも歯が立たなかったブラジル・ワールドカップでの惨敗で心が傷ついたせいか、アジアカップの期間中はミックスゾーンでも滅多に口を開かなかった。

 沈黙の長友──。まさに、そんな感じだった。印象的だったのは、UAEとの準々決勝の前日会見。当時の日本代表監督ハビエル・アギーレとともにその会見に出席した長友に、こんな質問が投げられた時だ。

「ブラジル・ワールドカップでなにが足りなかったか。ここからの4年間、どうやらなければ世界基準になれないのか。それを踏まえ、アジアカップでどういうステップを踏みたいのか。明日のUAE戦も含めてどう考えているのか?」

 少し間を置いた長友は「僕個人のことですか?」と尋ね、質問者に「長友選手のこと、チームのこと」と言われると、またしばらく沈黙した。長友の印象について訊かれたアギーレ監督が「じゃあ、先に僕が話しましょう」と場を持たせると、その後、ようやく長友が沈黙を破る。

「すみません。さっきの時間でいろいろ考えていましたけど、なかなかワールドカップの時の心境と、次のワールドカップへの心境を語るのは本当に難しい。今、そのことについて考えていて、言葉に発するためにはエネルギーが必要で、ここではちょっと勘弁してもらいたい」

 次のワールドカップを戦う準備はまだできていない。そう捉えられてもおかしくないコメントだった。
 結局、アジアカップはそのUAE戦でPK負けを喫し、ベスト8に終わった。それからアギーレの退任を経て、15年3月からヴァイッド・ハリルホジッチ監督が日本代表を率いると、長友は変わらずメンバーに名を連ねた。しかし、長友のスタンスには変化が見て取れた。アジアカップの時のような沈黙はない。

 アウェーのアフガニスタン戦で、記者が「左サイドでだいぶバランスを取っていましたよね」と質問した際は「(原口)元気に気持ちよくプレーしてもらいたかった。もう僕もガンガン行くような歳じゃないし、意図的にバランスを取らないと(笑)」と笑顔を見せてくれた。

 ホームのオーストラリア戦後に時を戻せば、長友はこんなことも言っていた。

「結局、理想論だけ語っていても世界で勝てない。(ブラジル・ワールドカップで勝てず、アジアカップでも敗れた)あの経験が大きかったですよね。あそこで上手くいっていれば考え方も変わらなかっただろうし、自分たちのサッカー、サッカーと言って、やっていたんだろうけど、やっぱり甘かったですよね。やっぱり、今日の試合(オーストラリア戦)みたいに魂を込めて戦った部分ですよね。そこが基本的な部分だと思いました」

 あくまで推測だが、今、アジアカップでのあの質問──「ブラジル・ワールドカップでなにが足りなかったか。ここからの4年間、どうやらなければ世界基準になれないのか」をぶつけたら、きっと長友はこう答えてくれるに違いない。「理想論だけ語っていても世界で勝てない。魂を込めて戦う。そこがまず基本になる」と。

 理想論を捨て、魂の込もった戦いにこだわる長友が来年のワールドカップでどんなプレーを見せてくれるのか。期待は膨らむばかりだ。

取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)

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