ポッキーやパピコでおなじみの江崎グリコ。最近では健康ブームに乗って、機能性表示食品のチョコレート「リベラ」や「ギャバ」といった新たなヒット商品も世に送り出しています。しかしここに来て、創業者の出身地である佐賀市と、広島市の2工場閉鎖を発表。一体同社に何が起きているのでしょうか。今回の無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』では著者の佐藤昌司さんが、店舗経営コンサルタントの視点で詳細に分析しています。

ポッキーの江崎グリコが佐賀・広島の工場を閉鎖した理由

「ポッキー」でおなじみの江崎グリコは8月21日、生産子会社である九州グリコ(佐賀市)と広島グリコ乳業(広島市)を解散し、それぞれが保有する工場の生産を終了すると発表しました。解散に伴い、18年3月期に5億3,500万円の特別損失を計上するとしています。

江崎グリコは閉鎖理由として、国内生産拠点の整理・再配置を行なって経営の効率化を図ることを挙げています。

九州グリコの工場は1953年に新設されました。それから60年以上が経過し、建物や設備などの老朽化が進んでいたとみられます。また、生産していたチーズスナック「チーザ」やガム製品の販売が不振だったことも工場閉鎖につながったとみられます。

江崎グリコの「ガム・キャラメル・キャンディー」カテゴリーの売上高は規模が小さく、年々縮小していました。16年3月期の売上高構成比は1%台とわずかです。同期の売上高は12年3月期と比べて3割以上も減少しています。17年3月期はカテゴリー自体を廃止しています。

こうしたことから、売れないガム製品を主に生産していた九州工場の操業度は相当程度下がっていたとみられます。工場閉鎖に向けて段階的に操業度を下げていたことも考えられます。

創業者の江崎利一氏(1882〜1980年)は佐賀市出身で、同県の有明海で採れるカキに含まれるグリコーゲンに目をつけて同社を創業しました。つまり、グリコにとって思い入れのある佐賀の地で拠点の一つが無くなることになります。なお、別の生産子会社の佐賀グリコ乳業の工場は佐賀市に残るということです。

広島グリコ乳業の工場はカップ入り飲料「ドロリッチ」やコーヒー乳飲料「マイルドカフェオーレ」などを主に製造していました。これらは江崎グリコにおいて主力製品ではありません。乳製品を製造する国内工場は他に複数あることもあり、広島工場を閉鎖しても大きな影響はないと考えられます。

江崎グリコの工場の経営効率は決して良いとは言えない状況だと考えられます。工場などの経営効率を示す「有形固定資産回転率」が近年不安定で伸び悩みを見せているからです。

有形固定資産回転率とは、工場の機械や建物、機械装置といった有形固定資産がどれだけ売上高に結びついているかを表す経営指標のことです。数値(売上高を、建設仮勘定を除いた期首期末平均の有形固定資産で割って算出)が高ければ高いほど経営効率が良いと判断できるのですが、それが江崎グリコでは近年不安定で伸び悩んでいるのです。

00年3月期から17年3月期までの18期の江崎グリコの有形固定資産回転率の推移を見てみます。

00年3月期は3.52回でしたが、11年3月期には4.79回にまで上昇しています。これは、工場の経営効率が高まっていったことを意味します。

しかし、その後は下がったり上がったりして安定しません。また、伸び悩みを見せています。13年3月期は4.35回、16年3月期は4.85回、17年3月期は4.54回となっています。

こうしたことから、何か大きな問題があるとまでは一概には言えませんが、工場のどこかに改善の余地がある可能性があることが否定できません。生産に無駄や非効率があるなどの理由で、工場の資産が売上高に十分に結びついていないかもしれないからです。有形固定資産回転率はそのことを示しています。

ここで、江崎グリコの業績を確認します。消費者の健康志向が高まるなか、チョコレート「リベラ」や同「ギャバ」、ヨーグルト「BifiX」といった機能性表示食品が好調なこともあり、順調に収益を伸ばしている状況です。

江崎グリコの直近10期の業績を見てみます。17年3月期連結決算の売上高は前年比4.4%増の3,532億円、純利益は同30.5%増の181億円です。08年3月期の売上高は2,786億円、純利益は14億円です。この10期では、売上高と純利益は上昇傾向を示しています。業績は好調と言っていいでしょう。

江崎グリコは、創業者の江崎利一氏がグリコーゲンを主成分とする栄養菓子グリコの製造販売を目的として江崎商店を1921(大正10)年に創業したのが始まりです。こうした経緯もあり、菓子事業が同社の主力事業で、近年の菓子事業の売上高は全体の3分の1以上を占めています。

17年3月期の事業別の売上高構成比は、ポッキーなどの「菓子」が34.3%、パピコなどの「冷菓」が26.2%、「食品」が5.7%、BifiXなどの「牛乳・乳製品」が26.9%、「食品原料」が3.0%となっています。

消費者ニーズは多様化していると言われています。それは菓子業界も例外ではありません。多様化するニーズに対応するために、江崎グリコは商品ラインナップを拡大・強化していきました。そのため、売上高は拡大していきましたが、一方で生産工場における無駄も発生していったと考えられます。

多品種少量生産(1品種あたりの生産数は少ないが、多くの品種を生産する生産方式)が進むと、売れない製品を生産する工場の生産効率が悪化すると考えられます。段取り替え(品種や工程内容が変わる際に生じる段取り作業)などの手間がかかるからです。

江崎グリコはポッキーやプリッツ、BifiX、健康分野商品など主力商品に注力する戦略を打ち出しています。そのため、売り上げ下位商品は縮小していく必要があります。商品数を減らし、それに合わせて生産拠点の整理・再配置を進めていくことが求められています。先ほど、江崎グリコの有形固定資産回転率が不安定で伸び悩みを見せていることを示しましたが、多品種少量生産が進んだことで、工場の生産効率が悪化したことが理由である可能性があるためです。

江崎グリコは経営効率を高めるために、九州と広島の工場の閉鎖以外にも様々な施策を講じています。15年に完全子会社のグリコ乳業を吸収合併しました。合理化と効率化を図り、収益性と競争力を高めるためです。

また、強化対象カテゴリーであるアイスクリームの生産体制を強化するため、グリコ千葉アイスクリーム(野田市)の工場を拡張し、生産能力を2倍に引き上げる考えを示しています。

17年3月期の有形固定資産回転率が前期と比べて大きく下がったのは、工場への投資でグリコ千葉アイスクリームの有形固定資産が約150億円増加したためです。同工場の生産開始による売上高への貢献は今期以降になるため、結果として有形固定資産回転率が下がった形になりました。

江崎グリコは、九州と広島の工場の閉鎖とグリコ千葉アイスクリームの工場の拡張などで経営効率を高めたいところです。

image by: J. Henning Buchholz / Shutterstock.com

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出典元:まぐまぐニュース!