北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(写真:KCNA/新華社/アフロ)

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 北朝鮮が6回目の核実験を強行した。9月3日、北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)用の水素爆弾の実験に「完全に成功した」と発表、昨年9月以来となる約1年ぶりの核実験を実施した。

 爆発の規模は過去最大とみられており、7月の二度のICBM発射に続く暴挙に出たかたちだ。懸念されるのは、核弾頭を搭載したICBMの配備が完了することだ。北朝鮮はミサイルおよび核の開発技術が格段に進歩しており、アメリカは来年にも「その可能性がある」と分析している。北朝鮮の動きについて、経済評論家の渡邉哲也氏は以下のように語る。

「このままのペースで開発が進めば、核弾頭を積んだICBMの配備は年内あるいは来年にも完了する可能性が高い。アメリカはそれを望んでおらず、アメリカ本土に危険が及ぶ前に軍事オプションを行使する恐れもある。

 そもそも、アメリカは『アメリカ本土に届くICBMの開発および発射』『核実験の強行』をレッドライン(越えてはならない一線)に設定していたと思われる。今夏にこの2つが突破されてしまったことで、アメリカとすれば譲歩や話し合いの余地はないだろう。北朝鮮としても、核を手放せばアメリカとの交渉の材料を失うわけで、それは悪夢でしかない。

 また、相次ぐ弾道ミサイル発射および核実験について、北朝鮮に融和的な態度を取ってきた中国とロシアも非難する姿勢を示しており、今後は北朝鮮に対する制裁がより強化されることは確実だ。

 北朝鮮がアメリカを直接攻撃する能力、つまりICBMを保有しており、さらに金正恩という独裁者が核のボタンを握っているという現状は非常に危険な状況だ。アメリカはかねて北朝鮮にミサイルおよび核兵器の開発の完全放棄を求めているが、今後はそのペースを早める必要があると判断するだろう。それは、軍事オプションの行使に向けて一歩進むということと同義である」(渡邉氏)

 北朝鮮の核実験を受けて、国際連合の安全保障理事会は4日に緊急会合を開催する。また、アメリカのドナルド・トランプ大統領はツイッターで「北朝鮮とビジネスをするすべての国との貿易停止を検討している」「北朝鮮はならず者国家で、中国にとって大きな脅威でやっかいな存在になった」などと発言している。

●米軍、新月の日に北朝鮮を一斉攻撃の可能性も

 3日に行われた安倍晋三首相との電話協議で、トランプ大統領は「アメリカは外交、通常・核戦力などすべての能力を活用して、米本土、海外領土、同盟国を防衛する責務を果たす」と語ったとされる。4月には、米軍による金正恩朝鮮労働党委員長の「斬首作戦」が取り沙汰されたが、アメリカは軍事行動に出るのだろうか。

「米軍は、新月の夜に開戦時期を合わせる傾向がある。月明かりがないため新興国の兵器では迎撃が難しく、ステルス攻撃を仕掛けやすいからだ。特に今回の場合は、第一波で北朝鮮の攻撃拠点を完全破壊する必要があるため、初動時に多極的な一斉攻撃を行う可能性が高い。それによって、北朝鮮の全戦力を一気に無力化させたいという狙いだ。そのため、新月開戦の可能性がより高いとされている。ちなみに、次の新月は9月20日だ。

 中東や南シナ海の問題も同様だが、これはバラク・オバマ政権が『平和的外交』の名の下に放置してきたことで危機を招いたという側面が強い。そのため、トランプ政権としては前政権との違いを見せつける必要もあるだろう」(同)

●中国・習近平、北朝鮮の核実験でメンツ丸潰れ

 北朝鮮の核実験と前後して、8月30日にはイギリスのテリーザ・メイ首相が来日し、31日には安倍首相との日英首脳会談が行われた。

「ほとんど報じられていないが、非常に成果の大きい会談であった。特に安全保障については、いわゆる安保条約に近い内容であり、北朝鮮や南シナ海の問題に対して共同で対処するとされている。これは、日英米の『3国同盟』の始まりを宣言するものであるといえる。

 イギリスはEU(ヨーロッパ連合)離脱で大陸と距離を置き始めており、国力を維持するためには日米との関係強化が必要と判断したのだろう。デーヴィッド・キャメロン政権では親中の姿勢を見せていたが、一気に路線転換を図ったといえる」(同)

 その中国は、3日に福建省でロシア、インド、ブラジル、南アフリカの新興5カ国首脳によるBRICS会議を開催したが、その直前に北朝鮮による核実験が強行された。

「10月の中国共産党全国代表大会を前に求心力を高めたい習近平国家主席にとっては、メンツを潰されたといっていい。中国は5月に北京で一帯一路の国際会議を開いた際にも北朝鮮に弾道ミサイルを発射されており、4月の米中首脳会談では習主席の目の前でトランプ大統領がシリア空爆を決行している。北朝鮮の一連の問題をめぐって、中国は顔に泥を塗られ続けているといえる」(同)

 北朝鮮は9月9日に建国記念日を迎えるため、さらなる動きも予想されている。米朝関係は予断を許さない状況が続きそうだ。
(文=編集部)