災害時の「栄養」について考えてみませんか?

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日本はその地理的な条件から、台風、地震、津波、火山噴火等による自然災害が発生しやすい国土です。そこで、8月30日から9月5日は防災週間と定められており、実際、私たちの身の回りでも避難訓練が催されるなど、防災の意識が高まる時期です。

クックパッドニュース編集部ではこのたび、災害支援ナースとして各地で陣頭指揮も経験されている看護師の石井美恵子さんに、災害時の食生活の実態について、お話を伺いました。

災害後の避難生活で太ってしまう人が多い?


石井さんは2011年の東日本大震災をはじめとする日本の災害はもちろん、2004年のスマトラ沖地震や2008年の中国・四川大地震など、海外での災害医療支援活動の経験も豊富。そんな、石井さんが現在気になっているのが、日本の被災地での健康問題です。

「被災後の避難生活の中で多い健康トラブルは、エコノミークラス症候群や慢性疾患の悪化、そして便秘です。避難生活によるストレスで血圧が上がり、交感神経が優位になることが要因に一つだと言われています。それと併せて私が気になったのは、肥満です。」

石井さんは、避難所での生活で体重が増えている看護師や被災者が多いことに気づいたそうです。

支援物資は、栄養よりもカロリー重視になりがち


もともと支給される食事は、おにぎりや菓子パンなど炭水化物が中心で、野菜が不足しがち。カロリー重視の食事が続いたことによる、体重の増加が考えられます。しかし、石井さんは支援物資の内容だけが理由ではないと言います。

「被災直後こそ、まずは水や最低限の食事で命をつなぐことになりますが、避難生活が長くなると、物流も復旧し、ちょっと歩いて買いに行けば食材が手に入るようになることも。しかし、そうなった場合でも、栄養を考えて自分で料理を作ろうする人がとても少ないと感じます。そんな生活が続けば体重ばかりが増え、体調も崩しがちになってしまいます。」




石井さんが支援活動を行った避難所の様子

一般の避難所ではなかなか難しいものの、一部施設では、栄養士会の方が食材を調達し、調理室で調理した食事が提供されるケースも。

このように、自ら何を作るか考え、現地で食材を調達して調理することで、避難所でもバランスのよい食生活が送れるのではないかと、石井さんは考えているそうです。




調理室に用意された食材

アンケート結果にみる、被災時の食事の理想と現実


クックパッドが実施した、災害時の食に関するアンケートでも、栄養バランスを考えた非常食を用意している人は、わずか16%という結果に。


また、実際に被災を経験された方では「食に関して避難所生活の間に意識していたもの」を問う設問に対して「栄養バランス」と回答した人が単一回答で36%、複数回答で45%いるのに対し、実際に実現できたかを問われると、「栄養バランス」と回答した人は15%にダウン。現実的には、避難生活中に栄養バランスのとれた食事を摂るのは難しかったと考えられます。




※アンケートに回答したクックパッドユーザー3950名のうち、被災経験のある方を対象とした設問への回答結果

今年の防災週間は「栄養」について考えてみませんか?


国内外を問わず、さまざまな被災地に赴いた経験のある石井さん。中でも日本と海外での避難所での行動の違いが、特に気になっているそうです。

「スリランカやネパールなど海外の被災地では、みなが食材を自ら確保し、自ら調理して食事をしようとしていました。その行動力たるや、食材を巡って暴動が起きるほど。

日本では暴動こそありませんが、料理を作れる状況になったときでも、支給される食事だけをいただくだけで、ずっと座っていてどこにもいかない方を多く見かけました。

ただ、そんな中でも、小さいお子さんがいるお母さんは、子供に栄養バランスのとれた食事を食べさせたいという意識が高かったです。」

石井さんはこのことから、いざという時ほど普段の行動が影響するのではないかと感じたそうです。

「普段から気にしていることやできることは、どんなときにもできますし、逆にしないと気になって仕方がありません。

日常、私達はどれほど栄養を気にした食生活を送っているでしょうか?栄養がバランスよく取れるレシピをどれほど知っているでしょうか?

そうした日々の習慣や知識の蓄積が、被災時の食生活においても重要だと思います。」

最後に、被災地で作るとしたら、どんな料理が適しているかを、石井さんにお伺いしました。

「野菜のスープのレパートリーを増やしておくのはどうですか?日本の被災地だと豚汁が定番ですが、本来は味噌味にかぎらず、さまざまな味つけの工夫ができるはず。スープならしっかり加熱することができ、衛生面でも安心度が高いので、海外の避難所では、多くのレパートリーを見かけましたよ。」

自然災害の多い日本。災害に見舞われる可能性は、私たち誰にでもあります。普段から栄養バランスのとれた食事を作る経験や食材の備えをしていれば、たとえ非常時でも健康的な食生活を送る準備ができるのではないでしょうか?

取材協力


石井 美恵子さん
東京医療保健大学 東が丘・立川看護学部災害看護コース 准教授。看護師。

2011年の東日本大震災時、日本看護協会のコーディネーターとして、延べ3770人の災害支援ナース派遣をとりまとめた。
2012年日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤ」リーダー部門受賞および大賞受賞。