先行する米国FRB(連邦準備制度理事会)の後を追うように、ECB(欧州中央銀行)が出口政策を積極化する動きがある。逆風が強くなる気配の金市場では、9月の市場環境がカギを握りそうだ。

出口戦略を探る欧米中銀。今後の金市場の方向性が決まりそうな9月

「デフレの力はリフレ(インフレ)の力に置き換わった」

6月 27 日、ポルトガルの首都リスボン郊外の保養地シントラで開かれたECB主催の経済シンポジウムで、ドラギECB総裁はこのように語った。これまでマイナス金利導入に加えて大規模な資産買い取り(資金供給)に積極的に取り組み、ハト派姿勢で知られるドラギ総裁。それだけに先の発言は、ECBの政策転換を表すものと受け止められることになった。

国際金融市場では、中央銀行関係者により政策変更を示唆する発言の場として使われる国際会議がある。その代表例が、毎年8月下旬に米国ワイオミング州の避暑地ジャクソンホールで開かれるカンザスシティー地区連邦準備銀行主催の経済シンポジウムだ。議長の記者会見もある9月のFOMC(連邦公開市場委員会)の直前というタイミングもあり、過去何度かFRBの議長が、政策変更を示唆する発言をして注目されてきた。「市場とのコミュニケーション」と呼ばれるが、中銀の考える方向性を示唆することで市場に織り込ませ、政策変更を混乱なく行なおうという意図がある。今や8月末のジャクソンホールは金融関係者にとっての注目イベントだ。

話を戻すと、今回のECB主催のシンポジウムは、どうやらその機会として意図的に使われたようなのだ。会議には、中銀関係者以外にもエコノミストや金融政策担当のジャーナリストらも参加している。冒頭のドラギ発言は、市場関係者にECBが実施している毎月600億ユーロ(約7・8兆円)の資産買い入れの終了に向けた動きを近々とると思わせることになった。

同じ会議で英国中銀のイングランド銀行のカーニー総裁が、英国も利上げ準備段階に入っていることを示唆。カナダ中銀のカナダ銀行のボロズ総裁も同様の発言をして注目され、市場の反応は早かった。欧州各国の国債利回り(市場金利)が上昇し、為替市場はユーロ高となり、金利上昇は米国にも飛び火した。

市場金利の上昇は金利を生まない金にとっての売り材料となるもの。欧米の中銀がスクラムを組むように超金融緩和からの出口を探り始めると、金市場にとっては強烈な犖かい風〞の金融環境が押し寄せることを意味する。それを見越して7月以降、NY金先物市場ではファンドがショート(カラ売り)を大幅に増やし、金ETF(上場投信)の解約も目立っている。

金はこの逆風を超えられるのか。9月の環境が方向を決しそうだが、その前のジャクソンホール会議に要注目だ。

マーケット・ストラテジィ・ インスティチュート代表

亀井幸一郎 KOICHIRO KAMEI

中央大学法学部卒業。山一證券に勤務後、日本初のFP会社であるMMI、金の国際広報・調査機関であるWGCを経て独立し、2002年より現職。市場分析、執筆・講演など幅広く活躍中。