『新幹線検定 電車で行こう!スペシャル版!!』(豊田巧:作、裕龍ながれ:絵/集英社)

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 「東海道新幹線の踏切で脱線!」2017年8月8日にこんなニュースが流れた。秋田・山形新幹線の在来線併用区間を除き、新幹線には踏切がないと思われているが、実は一か所だけ、静岡県浜松市のJR東海浜松工場の入出庫線にあるのだ。このように開業から50年を超える歴史を誇り、誰もが知っているはずの新幹線だが、意外なトリビアがたくさん眠っている。もし、先のニュースで興味を持ったなら是非、お薦めしたい1冊がある。それが『新幹線検定 電車で行こう!スペシャル版!!』(豊田巧:作、裕龍ながれ:絵/集英社)だ。

 本書は、電車大好き小学生である主人公たちが、全国の鉄道を舞台に活躍する人気小説シリーズ「電車で行こう!」の特別編。今回は主人公たちが新幹線にまつわる50のクイズを読者とともに解いていく筋立てとなっている。しかし、子供向けだと侮るなかれ。初級から特級まで、大人が挑んでも実に歯ごたえのある難問揃いなのだ。

 まず初級問題に挑んでみたが19問中、正解は18問だった。内容的に、鉄道ファンには常識といえそうな設問が並ぶが、一般人には難しいと思われる問題がこれ。

【東海道新幹線は静岡県島田市〜牧之原市間で、ある施設の地下を通ります。それはなに?】
1・空港
2・火力発電所
3・アメリカ軍基地
4・ロケット発射場

 答えは1の「空港」。2009年に開港した「静岡空港」であるが、新幹線はトンネルを通るだけなので乗車中には気づかないだろう。そこに直結の駅があれば便利だろうし、静岡県も要望しているのだが、JR東海は「高速で主要都市間を結ぶ新幹線の性能を発揮できなくなる」として、現在は否定的だ。

 中級問題は16問中13問が正解だったが、当然ながら難度はハネ上がっている。車両関連の問題も多く、知らなければ分からない難問もあった。その見本のような問題がこれ。

【JR東日本内の新幹線の線路や架線のチェックを行っている総合検測車の愛称はなんでしょう?】
1・テスト100
2・E0系
3・イーストアイ
4・イーストドクター

 答えは3の「イーストアイ」。東海道・山陽新幹線を走るJR東海の黄色い検測用新幹線、「ドクターイエロー」を知っている人は多いと思うが、この「イーストアイ」はJR東日本専用で、白いボディに赤いラインが入っているのが特徴。秋田・山形新幹線として走る、E3系を改造して使用している。

 そして上級ともなれば、さらに難度が上昇。10問中8問正解できたものの、知識に左右される部分は大きい。特に下記の問題は、本当にサッパリ分からなかった。

【次の新幹線駅のうち、1日の乗車数がもっとも少ないのはどの駅でしょう?】
1・ガーラ湯沢駅
2・いわて沼宮内駅
3・三河安城駅
4・出水駅

 答えは2の「いわて沼宮内駅」。岩手県内にある東北新幹線の駅で、1日の平均乗降者数は2015年度調査で85人だという。しかし、ローカル線「IGRいわて銀河鉄道」との乗換駅なので、それを利用するには便利だろう。新幹線駅もただ存在するだけではダメで、そこへのアクセスが大切なのである。

 最後の特級は全5問ながらも実に高難度で、たった2問の正解に終わる。すべてが難問だが、その内の1問は幻の路線に関するものだ。

【次の新幹線のうち、工事まで始まっていたのに中止となってしまった路線はどれでしょう?】
1・名古屋空港新幹線
2・羽田空港新幹線
3・成田空港新幹線
4・関西国際空港新幹線

 答えは3の「成田空港新幹線」。空港建設反対運動のあおりから中止されたが、実現していれば東京〜成田空港を約30分で結ぶ予定だった。だが、ただ終わったわけではない。実は都内の京成上野駅〜成田空港駅を結ぶ京成電鉄「スカイライナー」が、この工事区間を再利用しているのだ。所要時間も約40分と新幹線に迫っている。

 日本の鉄道技術を結集した新幹線は、秘密が盛りだくさんである。本書で見られるのは、その一部に過ぎないが、今まで気づかなかった一面を存分に楽しめた。そして今後も新幹線トリビアは増え続ける。2020年に投入が予定されているN700S系には、どんな秘密があるのか? 期待が膨らむばかりだ。

文=犬山しんのすけ