柴崎の持ち味はインサイドハーフで生きるはずだ。(C)SOCCER DIGEST

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 ロシア・ワールドカップ最終予選でラストゲームとなるサウジアラビア戦は、日本にとって非常に「おいしい試合」になった。
 
 サウジアラビアは、ロシアに行くためには勝たなければならない。皇太子からも勝利を義務付けた檄が飛んでいるという。そのため死に物狂いで日本に向かってくるだろう。自国あるいは相手国の出場権獲得が掛かった試合は、98年フランス・ワールドカップ第3代表決定戦のイラン戦以来になる。今回は日本がすでに出場権を獲得しているが、試合はあの時同様、非常に厳しいものになるだろうし、こういう試合はなかなか味わえない。
 
 日本は、この1戦をどう戦い、今後のためにどう活かすのか――。
 
 日本はすでにロシア行きを決めているが、キッチリ勝利することが求められる。大事な試合で本気で向かってくる相手にどう対処し、どのような試合運びをして、勝利に結び付けるのか。猛烈な攻撃に押し込まれたなかで、どうやって反撃に転じ、ゴールを奪うのか。それはワールドカップ本番にも通じることになり、親善試合とは比較にならないほど大きな経験値になる。
 
 もうひとつ重要になってくるのが、選手の起用だ。
 
 今回は、これからワールドカップ本番を見据えての戦いになる。つまり現行メンバープラスアルファを獲得するためのスタートになるのだ。ザッケローニ時代で言えば、2013年8月に韓国で開催された東アジア選手権といえば理解しやすいだろうか。この大会で優勝し、結果を出した山口蛍、柿谷曜一朗、森重真人らはブラジル・ワールドカップのメンバーに選出されていった。
 
 オーストラリア戦や過去の試合で出場した選手の力は、ハリルホジッチ監督は十分理解しているはずだ。そこで今回3名、起用してほしい選手がいる。
 
 今、一番ニューカマーが必要なポジションがセンターバックだ。吉田麻也がこれまで全9試合スタメン出場し、パートナーは森重真人、その後は昌子源が務めてきた。センターバックは攻撃陣ほど激しい競争がなく、これまで人材不足が否めなかった。
 今回、植田直道、三浦弦太という若いセンターバックが選出されており、吉田の代わりに起用するチャンスである。
 
 植田は鹿島で昌子とプレーしているのでお互いにやり方を熟知しているし、コンビのプレーはなんとなく想像できる。日本代表という場は違うが、あえてユニットを組んで確認する必要はない。
 
 であれば、今回は三浦を起用すべきだ。三浦は、リオ五輪世代で本大会前にトゥーロン国際大会に招集された。そこでロングフィードなど優れたビルドアップを見せ、守備では高さで負けず、1対1も強かった。G大阪でも今年移籍してすぐにレギュラーになり、長谷川健太監督の信頼も厚い。いずれ日本代表の主力センターバックになれる逸材なだけに、激しい攻撃にさらされるであろうサウジアラビア戦を経験させる価値はある。
 
 ふたり目は、杉本健勇である。
 
 杉本は今シーズン、最も成長している選手のひとりだ。自分が試合を決めるという意志を強く持ち、シュートパターンが増え、ゴール数は14点と好調を維持している。代表のFWは似たタイプの選手が揃っているだけに杉本の存在は異彩を放つ。日本のターゲットマンになり得る杉本が国際舞台で戦えるだけのメンタルとプレーを見せることができれば、それだけで日本にとって大きなオプションになり、収穫になる。ぜひ試して、結果を出してほしい選手だ。
 
 最後のひとりは、柴崎岳である。
 
 2年ぶりの代表復帰だが、当時とはメンタルや考えも進化し、大人になった。井手口陽介や山口のような寄せのスピードやボール奪取の力は欠けるが、山口をアンカーに置いてのインサイドハーフでは十分プレーできる。

 サイドで起用すれば中央に流れてタメを作るなど、攻撃面での貢献度が大きいだろう。ボールを持てる選手でリズムも変えられる。オーストラリア戦で長谷部誠がボールを奪った後、どこにボールをつけるべきか迷っているシーンが度々見られたが、そうしたことも柴崎がいれば解消できるはずだ。
 チームが停滞した時、上手くいかない時、変化をつけるためには柴崎のような選手が必要。そのためにどのポジションが、彼が一番輝くのか、チームの中でどう機能するのか。サウジアラビア戦で見極めるべきだろう。
 
 日本はサウジアラビアに負けてもワールドカップ出場に影響がないし、傷もつかない。一方、サウジアラビアはワールドカップ出場を目指して本気で来る。だからこそ、この試合には大きな価値があり、ワールドカップ本番を想定したテストができる。捨てゲームにするのは許されない。今後につなげ、意味のある試合にするために、スタメンにはこれからチームに多くの可能性をもたらす選手の起用が求められる。
 
取材・文:佐藤俊(スポーツライター)