コスタリカの選挙運動での一コマ(2014年)。文字通りの「お祭り」にしてしまうのが、真の「コスタリカ方式」である

写真拡大

 総選挙の「足音」とまではいかなくとも、「におい」くらいは近づいてきた昨今、またもや「コスタリカ方式」という言葉がメディアで流れてきている。

『毎日新聞』青森地方版は8月27日付で衆院選挙区の区割り改定を受け、「自民・津島氏、「コスタリカ」否定的 衆院新1区民進・升田氏を警戒」と題した記事を掲載。『産経新聞』でもウェブ版で8月21日、【衆院選 予想の顔触れと情勢】という特集を配信、複数の選挙区で自民党が「コスタリカ方式の導入」を検討していることを伝えた。

 だが、そもそもコスタリカにはそんな「方式」は存在しない。

◆日本の「コスタリカ方式」は、地盤のかぶる現職議員のやりくりのためだった

「コスタリカ方式」と言われるものの内容はこうだ。

 同じ小選挙区に地盤を持つ2人の同じ政党の議員もしくは候補者がいた場合、その政党は両方に公認を出すことはできない。公認候補は、ただ1人しか当選できないその選挙区における、その政党の代表者という意味合いがあるからだ。

 そこで両者の調整として、片方は選挙区で、もう片方は比例区から出てもらう。ただし両者とも地盤を保つため、次の選挙では選挙区と比例区を入れ替わって立候補してもらう。これで、両方とも現職議員を続けつつ、地盤を放棄しなくてもよくなるというわけだ。

 1994年の小選挙区比例代表並立制の導入までは、こういった問題は起こらなかった。というのは、それまでは「中選挙区制」という仕組みを採っていたからだ。1選挙区の定数は主に3〜5人で、同一選挙区から同じ政党の候補が複数当選していた。

 その中選挙区を分解して小選挙区に細切れにした際、1人しか選ばれない選挙区に複数の現職議員もしくは候補予定者が重なってしまって困ったのが、最大政党である自民党だった。そこで一計を案じ、上記のような「同じ地盤を持つ現職議員のやりくり」を思いついたというわけだ。

 ところが、その「方式」はコスタリカには存在しない。というよりも、そうすること自体が不可能なのだ。

◆真の「コスタリカ方式」はこうだ!

⇒【写真】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=150195

 コスタリカの国会は一院制、日本は二院制。選挙制度を比較しても、コスタリカはブロック比例代表制、日本の衆議院は非自民系の細川政権時に導入された小選挙区比例代表並立制で、それ以前は1つの選挙区から主に3〜5人が選ばれる中選挙区制だった。コスタリカは一院制でブロック比例代表制しかないのだから、選挙区と交代で立候補するような「方式」が不可能なのは誰でもわかる話だ。

 選挙期間も、コスタリカは4か月間なのに対し、日本は17日間(法的にはそれ「以上」だが、ほとんどが17日間で終わる)。選挙運動の方法もまったく違う。日本では選挙カーで候補者の名前を連呼したり、駅前で街頭演説をしたりという「絶叫系」の傾向が強い。

 それに対して、コスタリカでは子供まで巻き込んだ、文字通りの“お祭り”的イベントとなっている。選挙運動を見てみると、サンバ・カーニバル、青空プロレス、野外フェスなどが次々に繰り広げられ、“お祭り”以外の表現を思いつかない。

 実際、候補者や政治家たちも、選挙を司る行政の人たちも有権者たちもみな、選挙を「フィエスタ(お祭り)」と表現する。国政選挙は近代民主主義社会の土台であり、あらゆる基本的人権と自由を行使する基本的な場だからこそ、それを「享受」(楽しく経験)する。これこそ、真の「コスタリカ方式」なのである。

 このように、コスタリカと日本の選挙では、制度論的にも実態としても、むしろ類似点を見出すことの方が難しい。では、なぜ総選挙のたびに「コスタリカ方式」なる言葉がメディアに踊るようになったのだろうか。