井手口陽介と山口蛍のボランチコンビがサウジアラビア戦の鍵になるかもしれない【写真:Getty Images】

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現地2日目は臨戦態勢。フレッシュな陣容でサウジ戦へ

 日本代表は5日、アウェイでサウジアラビア代表と対戦する。すでにロシアW杯の出場権は獲得しているが、アジア最終予選を気持ち良く終わるためにも重要な一戦だ。そしてもう一つ、これまで主軸を担ってきたベテランたちに代わる選手として誰を起用するかも注目される。サウジアラビア戦はただの消化試合ではなく、“ロシア後”を見据えた未来への一歩になるかもしれない。(取材・文:元川悦子)

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 5日の2018年ロシアW杯アジア最終予選ラストマッチ・サウジアラビア戦(ジェッダ)を控え、2日から現地で調整している日本代表。8月31日のオーストラリア戦(埼玉)の後、離脱した長谷部誠(フランクフルト)と香川真司(ドルトムント)を除く25人で臨戦態勢に入った。

 現地2日目となる3日夕方はアル・アハリ・スタジアムでトレーニングを実施。冒頭15分間を除いて非公開となった。武藤嘉紀(マインツ)が「今日は細かいところまでやった」とコメントした通り、サウジアラビアを想定した緻密な戦術確認が行われた模様だ。

 トレーニング冒頭にヴァイッド・ハリルホジッチ監督と大迫勇也(ケルン)が個別に話をしていたことから、ケガ明けの彼がスタメンから外れると見られ、予選全試合出場の吉田麻也(サウサンプトン)、ベテランGK川島永嗣(メス)ら温存される可能性が高まった。今回はフレッシュな陣容での戦いが期待される。

 長谷部が不在ということで、中盤の構成も変わるのは確か。山口蛍(C大阪)、井手口陽介(G大阪)、高萩洋次郎(FC東京)のボランチ候補3枚の顔ぶれ、そして敵地でのゲームという点を勘案すると、アンカーを置いた逆三角形のシステムは採らないはず。ダブルボランチで守りを安定化させるのが賢明な策と言える。

 そんな今、ぜひとも見てみたいのが山口と井手口のコンビ。「インサイドハーフの時は考えながらプレーしてしまっているけど、ダブルボランチの方が無意識に守備も攻撃もいけている。(パートナーは)蛍君に限らないけど、誰と組んでもしっかりコミュニケーションを取りながらやっていけたらいいですね」とオーストラリア戦でMVP級の働きを見せた21歳のダイナモは、6月のイラク戦(テヘラン)以来のボランチ出場を熱望していた。

ハリル体制、道に迷ったボランチの起用法

 山口が「(陽介を見て)若い頃の自分もあんな感じやったんかな」と少し前に吐露したように、2人は豊富な運動量、ボール奪取力、危機察知力、スペースを埋める力など共通するストロングポイントを複数持っている。

 オーストラリア戦の豪快な2点目を見る限りだと、井手口の方がよりタテへの推進力やシュート範囲の広さ、高い決定力を備えているように映るが、山口にも昨年10月のイラク戦(埼玉)で終了間際に奪った決勝弾に象徴される肝心な状況での勝負強さがある。その彼らがお互いに前へ出たり引いたりしながら攻守両面に絡んでいけば、日本の中盤はより機動力とアグレッシブさを増すに違いない。

 日本代表のボランチは、岡田武史監督(FC今治代表)時代の2008年から遠藤保仁(G大阪)と長谷部のコンビが足掛け9年間も担い続けてきた。2014年ブラジルW杯後に就任したハビエル・アギーレ監督は遠藤を外して若い柴崎岳(ヘタフェ)、田口泰士(名古屋)らを抜てき。新たな可能性を模索したが、結局のところ、2015年アジアカップ(オーストラリア)で遠藤を呼び戻す決断を下さざるを得なかった。

 この大会で8強に沈んだ直後に就任したハリルホジッチ監督は、前任者と同じ轍を踏むことなく、まずは柴崎や原口元気(ヘルタ)をトライ。ロシアW杯アジア2次予選の初戦・シンガポール戦(埼玉)で引き分けた後の2015年9月以降は長谷部と山口のコンビを軸に据えた。

 予選の間には柏木陽介(浦和)や遠藤航(浦和)、大島僚太(川崎F)らも試したが、今年に入ってから井手口への信頼が急上昇。6月のイラク戦(テヘラン)でスタメンに指名する。当時20歳の若武者がその試合で堂々としたパフォーマンスを披露すると、今回のオーストラリアとの大一番でインサイドハーフに指名。山口とのコンビ結成に踏み切ったのだ。

山口・井手口コンビの可能性。サウジ戦の最重要ポイントに

 とはいえ、本人も言うようにあくまで本職はボランチ。「あそこのポジション(インサイドハーフ)はあんまり得意じゃない。この前はたまたまです」と井手口は前回のブレイクを真の力だとは考えていない様子だ。自分自身が今の日本代表でどこまでやれるかは、ボランチでプレーしてみなければわからない…。それが彼の本音かもしれない。

 所属のガンバ大阪で運動量豊富な今野泰幸、倉田秋らと組んで自らのアグレッシブさをより強く押し出しているように、代表でも山口とコンビを組めば、より大胆に前後左右に絡んで輝きを放つことができるはず。2人が強固な関係を構築してくれれば、かつての遠藤・長谷部に匹敵する日本の大黒柱になる日も近そうだ。それだけのインパクトをサウジアラビア戦で見せてくれれば、ロシアでのW杯本大会に向かうチーム全体に大きな勢いが出てくる。ハリルホジッチ監督の求めるハイインテンシティーのサッカーを完成形に近づけていくためにも、新たなボランチコンビの機動力は必要不可欠だ。

「さらに上を目指すために? 守から攻への切り替えだったり、攻撃から守備への切り替えだったりをもっと向上させないと。この前はイージーなパスミスも多かったので、ボランチはそういうミスをほぼゼロにしないと。今のままじゃ本大会は絶対にムリだと思うので、(この9ヶ月間で)守備も攻撃も高いクオリティでプレーできるように成長していきたいです」と井手口は考えながら1つひとつ言葉を絞り出したが、そうやって日進月歩でレベルアップしていければ、日本の看板選手の1人になれる可能性は大いにある。

 それだけのポテンシャルを前回のゲームで垣間見せたのだから、流れを加速させていくしかない。サウジアラビア戦の成否を左右するのは長谷部不在のボランチ。そういっても過言ではないくらい、彼らの背負う仕事は重要性が高いのだ。

(取材・文:元川悦子)

text by 元川悦子