秋山英宏 全米レポート(7)センターコートに4度登場した大会の華、シャラポワが敗退

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好き嫌いはあっても、マリア・シャラポワはいつもテニス界のセンターにいる。ドーピング違反による出場停止処分でランキングは146位に落ちているが、今大会は4回戦まですべてセンターコートでプレーした。つまり大会側は彼女を主役として扱った。

だが、2回戦で敗退した元世界ランキング1位のカロライン・ウォズニアッキが、これに意義を唱えた。通信社が「大会がビジネス面を優先するのは分かるけれど、薬物を使用し、出場停止処分から復帰したばかりの選手が毎回センターコートで試合をするのは疑問」という彼女のコメントを伝えている。

この発言について会見で聞かれたシャラポワは、まったく動じなかった。

「試合日程を作るのは私ではありません。私は選手なので、(ナショナルテニスセンターがある)ニューヨーク・クイーンズ区の駐車場でだって喜んでプレーします。それはどうでもいいことで、大事なのは私が4回戦に進んだということです。彼女(ウォズニアッキ)がどこで何をしているかは知りませんが」

切り返しはお見事というしかない。批判にさらされ、逆風を受けることに慣れたシャラポワならではのカウンターパンチだ。

出場停止処分を受けた選手にワイルドカード(WC)を与えるのは適当か、という議論は春先の復帰当初からあった。WCは不適当と意見を表明する選手もいて、男子のアンディ・マレーや女子のユージェニー・ブシャール、そしてウォズニアッキはその急先鋒だった。全米オープンがWCを与えたことでまた議論が蒸し返された。

日比野菜緒が、シャラポワを迎えたロッカールームの雰囲気を教えてくれた。

「戻り方に私は納得がいっていません。ルールを守ってやっている選手への敬意が足りないというか。勝ち上がっていても、素直にすごいとは思えない。あからさまに話す選手はいませんが、歓迎して『お帰り!』という感じではないですね」

ウォズニアッキや日比野の言葉から、シャラポワの今の立ち位置が容易に推測できる。

もっとも、大会は彼女に頼らざるを得ない状況ではある。世界ランキング2位のマレー、昨年の覇者スタン・ワウリンカなど男子のビッグネームが欠場。第7日には、男子の18歳、デニス・シャポバロフの試合がセンターコートに組まれた。センターコートには2度目の登場だ。相手は第12シードのパブロ・カレーニョ ブスタだから、シャポバロフの将来性に懸けた先物買いと言える。

それにしても、予選上がりの若者を2度もセンターコートに抜擢するのは持ち上げすぎだろう。「ビジネス面優先」で華のある選手をセンターコートに入れたくても、タマが足りていないというのが現状だ。

シャポバロフはよく戦ったが、ストレート負け。続いてシャラポワも第16シード、アナスタシア・セバストワに敗れて大会を去った。

「ポジティブな面がたくさんありました。4試合も戦えた。それも、たくさんのファンの前で。競技に戻り、その環境に身を置くことができた。それは私がやりたくてもできなかったことでした」

シャラポワは屈託なく大会を振り返った。元女王の敗退で、大会はさらに苦心の日程作りを強いられそうだ。

もっとも、見かけは若干、地味になったとはいえ、最高峰のグランドスラムなのだ。楽しみなマッチアップは、いくらでも見つけ出せる。トップの不在が、これまで光が当たらなかった選手がクローズアップされる機会を増やすなら、それもいい。

(秋山英宏)

※写真は「全米オープン」4回戦でセバストワに敗れ、8強入りを逃したマリア・シャラポワ
2017 US Open Tennis Championships - Day 7
NEW YORK, NY - SEPTEMBER 03: Maria Sharapova of Russia returns a shot during her women's singles fourth round match against Anastasija Sevastova of Latvia on Day Seven of the 2017 US Open at the USTA Billie Jean King National Tennis Center on September 3, 2017 in the Flushing neighborhood of the Queens borough of New York City. (Photo by Elsa/Getty Images)