日本代表MF井手口、飛躍的進化の舞台裏 G大阪監督やスタッフが明かす変化とは?

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遠藤や今野、明神ら日本を代表するボランチ陣に揉まれ、チームに必要不可欠な選手へ

 日本代表がロシア・ワールドカップ出場を決めたアジア最終予選のオーストラリア戦。

 ピッチに立つことさえできれば、活躍するという予感はあった。それは今季、彼がガンバ大阪の一員としてJ1リーグで示してきたパフォーマンスに基づく、確かな予感だ。

 日本代表MF井手口陽介がG大阪のトップチームに昇格して4年。遠藤保仁、今野泰幸、明神智和(15年までG大阪に在籍/現在はAC長野パルセイロ所属)といった日本を代表するボランチの中で、日々の練習から揉まれ、圧倒され、物足りなさを感じながら成長を続けてきた彼は今季、遠藤や今野をも上回るJ1リーグ出場時間(1685分)を記録するほど、“必要不可欠な選手”へと成長を遂げた。7月末、彼に話を聞いた際の言葉が、脳裏に鮮明に焼き付いている。

「最近は、どんな相手でも『やれる』という自信が、自分にはっきりと存在している気がする。しかも、試合が進むにつれて高揚感が高まっていくような……ランナーズハイのような感覚で、体のどこにも疲れを感じない。90分を戦い終えても、まだまだ走れるなって思える試合も多い」

 その姿は、オーストラリア戦でも見て取れたはずだ。疲れが見え始めてもおかしくない試合終盤になっても、井手口は圧巻の運動量を発揮してピッチを縦横無尽に駆け、後半37分にはミドルレンジから驚異的な弾道のシュートをぶち込んだ。まさに“疲れ知らず”の彼が、埼玉スタジアムのピッチにいた。

長谷川監督も「外せない選手の一人」と信頼

 変化の兆しが見え始めたのは、昨季後半に差し掛かった頃からだ。G大阪での熾烈なポジション争いを勝ち抜いて先発のピッチに立つ機会が増えた井手口は、最初こそボールロストも多く、守備に追われる時間も多かったものの、「攻撃に絡む」ことを自身に課しながら試合経験を積むなかで、明らかな変化を見せるようになる。

「少しずつ自分の中に余裕が生まれて、攻撃と守備のバランスが取れるようになってきた。ただ、攻撃で惜しいところまでいってもなかなかゴールを決めきれなくて。それが昨年9月の名古屋戦でJ1初ゴールを決めてからは気負いもなくなり、より効果的に攻撃に顔を出せるようになったし、シュートを打つ時に力まなくなった」

 その変化をつぶさに感じ取っていたのが、G大阪の長谷川健太監督だ。今は「外せない選手の一人」と信頼を寄せる、現代表最年少21歳MFの成長に太鼓判を押す。

「以前は、ボール奪取の能力が高かった一方で、プレッシャーをかけられるとなかなか捌けなかったりしましたが、最近は多少のプレッシャーなら上手く外して、前に運ぶこともやれるようになった。また、短いボールをつける際のパスミスや、変なボールロストも減ってきた。明神をはじめ、今野や遠藤と、良いお手本を近くに感じながら、揉まれて、自然培養されていったところはすごくあると思います」

筋トレは趣味程度も…輝く一つの“才能”

 一方、プレーのベースになる運動量やゲーム体力の部分で、その変化に手応えを語るのがG大阪の吉道公一朗フィジカルコーチだ。「少なからず僕の目が届くところでは、特別なことはしていませんよ」と笑う吉道は、試合に出場し続けていることが彼の何よりの財産だと言う。

「あの体つきなので疑われがちですが、筋トレも趣味程度にしかやっていません(笑)。それよりも彼の場合は、例えば練習でゲーム形式をやっても、コンタクトには深くいくし、体もしっかり当てにいくし、一切手を抜かないというように、常日頃から高い強度を自分に課しながら、いろんなものを積み上げていっている印象です。実際、ハードなトレーニングをしているなかでも、僕らコーチングスタッフが彼に『もっと、いこう』というコーチングをしたことがないくらい、こちらがオーガナイズしたことをやり切っていますしね。これって、プロレベルでもやろうと思っていてもできない選手がたくさんいると考えれば、陽介の才能の一つだと思います」

 そういえば似たような話を、G大阪ジュニアユース時代のコーチであり、ユース時代の監督である梅津博紱氏(現・G大阪ユース監督)にも聞いたことがある。

“サボるしわ寄せ”を冷静に理解してプレー

「陽介は、プライベートなところではヤンチャな時期もありましたが、ピッチに立つと、練習でも試合でも絶対にサボらない。特にプレーでは、自分がサボることでどんなしわ寄せが起きるのかを、常に冷静に理解してプレーしていました」

 小さな頃から、一つひとつのプレーに「100%」の力を注ぎ込むことで磨いてきた技術と体力。しかも、それらを長きにわたって継続しながら、16年リオデジャネイロ五輪代表や日本代表での経験をエッセンスに進化を続けてきた井手口。そのブレない姿がある限り、きっとこの先も“進化”は止まらない。

【了】

高村美砂●文 text by Misa Takamura

ゲッティイメージズ●写真 photos by Getty Images