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ウェブマーケティングなどを行う「株式会社フライ」(東京都立川市)が8月30日、インスタグラムで同社の従業員であることを明かさずに自社サイトの宣伝をしていたとして、同社ホームページにお詫びを掲載した。サイトは同日に閉鎖され、インスタグラムも9月1日に閉鎖された。

●フォロワーは2万3800人、社員であることを知らせず「ダイエッター」演じる

同社によると、問題になったのは「ダイエット中!29歳二児の母」という名前で開かれていたインスタグラムのアカウントだ。1月14日に最初の投稿がされて以来、普段の食事の様子や、体重計の数値、部屋着で写った体型のビフォーアフター、ネイルなど、ありのままの「現在進行形のダイエッター」の日常が計626件投稿されていた。質問も一人一人に丁寧に返信し、フォロワーは2万3800人いた。

●「レビューサイトをチェックしよう!」と自社サイトへ誘導

どのようにして、自社サイトに誘導していたのか。食事が写ったある投稿には、「ダイエットには青汁ですね!いっつも言ってますがレビューサイトのいろはに青汁のランキング1位が日本一美味しくてダイエットにも美容にもいいってわたしは思います」とコメントがある。

また、ダイエットに関するよくある質問集として投稿したものでは、

「・青汁飲むところから始めよう

・青汁は当たり外れが激しいのでそこら辺で買わないでレビューサイトをチェックしよう!

・いまhkが日本一信頼しているサイトは『いろはに青汁』

・ここのランキング上位は外れなし

・1位のは日本一おいしいと私は思う!」

などと説明していた。

このレビューサイト「いろはに青汁」こそ、株式会社フライが運営していたものだった。さらにこのインスタグラムの女性は、同社の社員だったのだ。

8月30日には「運営に関してのお詫び」という投稿がなされ、「フライ社の企画の一環として運営をおこなっておりました」などと説明があった。フォロワーからは、「ひどいです。昔からフォローさせて頂き完全に信じきっていました」「高いお金払ってたのに。本人からの謝罪もないなんて!!青汁は即解約」などと怒りのコメントが集まっている。

●企業が期待する「インフルエンサーマーケティング」

企業の中には、インスタグラムでフォロワーが多数いる「インフルエンサー」に商品やサービスを投稿してもらう「インフルエンサーマーケティング」を行うところも増えている。フォロワーが数千人〜数十万人いる「インフルエンサー」に、PRをお願いする手法だ。ファッションや美容系、子どものいるママなどカテゴリーは様々で、モデルなど有名人に限らず一般人であることも多い。

筆者(20代女性)も読者モデルや一般人の「インフルエンサー」と呼ばれる人たちをフォローしている。商品が紹介されている投稿では、たくさんつけられているハッシュタグの中に「#PR」が紛れ込んでいるものもあるが、商品説明がやたら詳しい投稿なのに「#PR」が付いていないものもある。

また「XX日発売の新作を頂いたので、レビューします」と企業アカウントのハッシュタグをつけながら、コスメを紹介している動画も多く見かける。友人とインスタについて話していると、「最近ステマっぽいの多い。商品手に持ったりしてるのはあからさまな感じがする」と聞くことも増えた。

ある大手広告代理店の社員は、マスメディアへの広告出稿とともに、インフルエンサーにもお願いすることが企業PRの主流になって来ていると話す。

「企業側はお金を出しているということを知らせずに、できるだけリアルな口コミとして広めたい。#PRをつけるのが決まりだけど、企業的にはつけたくないというのが本音」。

インスタグラマーにPRをお願いする場合は、ある程度商品のポイントを伝え、あとはそれに沿って自由に紹介文を書いてもらうことが多いという。

●今回の事例は「なりすまし型」のステマ

消費者に宣伝だと気づかれないように宣伝する「ステルスマーケティング」。ステマ問題に詳しい板倉陽一郎弁護士は、「日弁連の意見書の整理によれば、ステマには二種類ありますが、今回問題になった事例は典型的ななりすまし型のステマです」と指摘する。

「なりすまし型というのは、事業者が自ら表示しているにもかかわらず、第三者が表示しているかのように誤認させるものです。口コミサイトやブログ、SNS等において、事業者自らが書き込みをしているにもかかわらず、そのことを隠して顧客などの第三者が書き込みをしたかのように装うものが該当します」

ーー「インフルエンサーマーケティング」を行う企業も増えていますが、インスタグラムで#PRをつけない場合もステマということになるのでしょうか。

「事業者がインフルエンサーに商品を推奨する投稿をさせる時に、そのインフルエンサーにお金を支払っているにも関わらず、その事実を表示しないものは『利益提供秘匿型』のステマに当たります。これも消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると考えます」

ーー#PRとつけていれば、問題はないのでしょうか。

「消費者の自主的かつ合理的な選択が確保されるかどうかという実質が重要であり、形式的に『#PR』と付けていれば良いという話ではありません。他方で、事業者がどのような行為が違反になるかということを判断できるように、実際の運用に当たって詳細なガイドラインを整備することも必要でしょう」

●日本では法規制がなく自主規制にとどまっている

ーー現在日本では、ステマについての法規制はないのでしょうか。

「景品表示法では、商品やサービスについて、実際より著しく良いものだと思わせる『優良誤認』(第5条第1号)と、実際よりも著しく得だと思わせる『有利誤認』(第5条第2号)が規制の対象とされています。

2012年5月に、消費者庁は『インターネット消費者取引における広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項』を改訂しました。これは、飲食店のランキングサイト『食べログ』でやらせ投稿が発覚したことにも対応しています。

この留意事項では、『…実際のもの又は当該商品・サービスを供給する事業者の競争事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されることのないようにする必要がある。』としており、現行の景品表示法における、『優良誤認』または『有利誤認』に該当すれば問題であるという枠組みを崩していません。

日弁連の意見書は、ステマの問題はこの『優良誤認』や『有利誤認』に該当するかの問題には留まらないと考えています」

ーー問題の本質はどこにあるのでしょうか。

「お金をもらってやっている、もしくはその企業の人間が運営している投稿であるのに、中立な第三者の意見であるように投稿していること自体が問題なのです。アメリカやEUでは明確に禁じられており、さらに効果的な規制を模索しています。

しかし日本では法規制がないため自主規制にとどまっており、アウトサイダーに効果がないなど、限界が見られます。そこで、日弁連は、景品表示法第5条第3号における告示で、なりすまし型と利益提供秘匿型のステマを違法であるとするように提言しているわけです」

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
板倉 陽一郎(いたくら・よういちろう)弁護士
2007年慶應義塾大学法務研究科(法科大学院)修了。2008年弁護士(ひかり総合法律事務所)。2016年4月よりパートナー弁護士。2010年4月より2012年12月まで消費者庁に出向。2017年6月より日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長(電子商取引・通信ネットワーク部会長)。
事務所名:ひかり総合法律事務所
事務所URL:http://www.hikari-law.com/