上川法相の胸の内は ©共同通信社

 国会で6月に成立した特例法に基づいて天皇陛下が退位した場合、有罪確定者の減刑などを行う「恩赦」を実施するかどうかについて、上川陽子法務大臣は25日の閣議後の記者会見で、「現在のところ(担当官庁の)法務省としては、具体的な検討はしていない。また今後の検討についてもまったく白紙の状態」と発言した。

 天皇陛下は特例法により、来年末に退位する日程が有力視されている。一方、恩赦とは、確定した有罪判決の効力を裁判によらないで失わせたり軽減したりする制度。現在の憲法は「内閣が決定し、天皇が認証する」と定め、戦後、国家的な慶弔に伴って10回行われ、うち5回は昭和天皇の逝去(1989年)や皇太子さまご結婚(93年)など皇室関係の出来事を機に実施されてきている。

 ある法務省関係者は「今回、上川大臣は『検討していない』と発言しましたが、お盆中に一部メディアでも報じられた通り、もし恩赦を実施する場合はどういう方法が良いのかといった検討は当然しています」と漏らす。

 憲法は5種類の恩赦を定めるが、最も直近の皇太子さまご結婚の際は、一部の人の有罪判決を無効とする「特赦」や、一部の人の刑を減じる「減刑」など4種類で1277件が実施され、うち7割超を公職選挙法違反事件が占めた。内訳は、「特赦」90件、「減刑」246件、「刑の執行免除」10件、有罪判決確定に伴って失われた法令上の資格(被選挙権など)を回復させる「復権」931件だった。

 しかし、時代の変化と共に、「皇室行事など偶然性の強いタイミングで一部の有罪確定者が許されるのは合理性がない」「内閣が恣意的に、元国会議員などの選挙違反確定者を許せてしまう」などの批判が増している。くしくも、国外ではアメリカのトランプ大統領が、不法移民に対する人種差別事件で有罪判決を受けた元保安官に恩赦を与え、米国内で非難を浴びている。

 司法担当記者は「上川大臣の発言で分かるように、政府は諸々の批判も考慮して表面上、恩赦に関して消極姿勢を示さざるを得ない状況です。今回は恩赦を実現するとしても、これまでより抑制的になるのではないか」と推測している。

(「週刊文春」編集部)