なぜ熱心に営業するほど客は離れていくか

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■営業は断られてはいけない

はっきり言いましょう。このような人は考え方を根本的に改めない限り、顧客からの信頼を得ることはできません。

セールスマンとしての実績を積んだ後、営業の指導を始めて29年。指導に当たった中で、「売れない営業マン」に共通しているのは、「自分のことしか考えていない」ということです。どんなにへりくだろうがお世辞を言おうが、相手のことをまったく考えていないのは、不思議なほどお客様に伝わります。「所詮は自分の成績を上げたいだけでしょ」と即座に見抜かれてしまう。だから信用されず、「この人から買おう」と思ってもらえない。それなのに「お願いします」「見積もりだけでも取らせてください」としつこく営業するものだから、顧客がイヤになって離れていくのです。もっとも会社の指導もよくない。残念なことに日本全国のほとんどの会社で、「営業は断られてからが勝負」などと、間違った教育をしているのですから。

私は営業を始めて1日目から売ることができました。立地条件などが悪いために売れないと泣きつかれたマンションであっても、その日のうちに売ってしまいました。

頑張っているのに売れない人は、まず「自分のために」から「お客様のために」へと、発想を180度転換することです。そもそも営業とは、いやがるお客様に平身低頭して買ってもらうというような、卑しい仕事ではありません。お客様の生活にプラスになる商品を、売ってさしあげる、お客様から感謝されて当然の仕事なのです。

「自分の扱う商品がそこまでお客様のプラスになるとは思えない」と考えている営業マンもいると思います。しかし欠点のない人間などこの世の中にいないように、欠点のない商品もまた存在しないのです。

一方で、多い少ないは別として、どんな商品にしてもそれを持つことによるメリットと、その商品がないことで被るデメリットが絶対にあります。営業マンは「その商品があることの喜びと、それがないことの恐怖」の両方をお客様にお伝えしなければならない。そこさえはっきりさせてあげれば、お客様は必ず買うのです。だからまずはお客様にとってのメリットを語ること。商品説明などは二の次でいいんです。

バブル崩壊直後に、とあるメーカーに売れ残っていたマンション販売を依頼されたときのことです。後方は山、前方は海、買い物の便はなしという物件で1年経過しても5戸しか売れず、社員が「なんでこんなところに建てたんでしょうね」とつぶやいていました。私はこのマンションを立て続けに27戸売ったのです。買い物の便が悪くても、駅から遠いのは足腰の鍛錬になり、通勤が遠いのも読書の時間になる。自然の宝庫で眺めはいい、空気はきれいで子供の教育にも申し分はありません。そんなメリットに加え、賃貸のデメリットもお伝えしました。家賃をどれだけ払い続けても持ち家でないと自分のものにはならない。来場者にそうやって「メリットと恐怖」を訴え続けたところ、あっという間に売れたのです。変えられない条件を嘆くより、いいところを探し、自信をもって伝えればいいのです。

商品のデメリットはあえてお伝えする必要はありません。自転車屋さんが、「自転車は雨の日は濡れますよ」と言うでしょうか。軽自動車の営業マンが、わざわざ「軽は大きな事故がおこったら即死ですよ」と言うでしょうか。お客様だって、デメリットもあることは承知のうえで買おうとしているのですから、メリットを強調するだけで十分なのです。

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ヒューマンリレーションズ代表取締役、営業セミナー講師 加賀田 晃
1946年、和歌山県生まれ。小学校4年生から新聞配達を始め、出会う人すべてに新聞勧誘をしたことが営業の原点に。17社で営業を経験、契約率99%を記録。85年より「加賀田式セールス」研修を開始、3万人以上にノウハウを伝授。著書に『営業マンは「お願い」するな!』など。

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(ヒューマンリレーションズ代表取締役、営業セミナー講師 加賀田 晃 構成=長山清子 撮影=澁谷高晴)