ミランからパチューカに移籍した本田。このメキシコきっての強豪クラブに、すんなりフィットできるか⁉ (C)REUTERS/AFLO

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 長年、欧州に活躍の場を求めてきた本田圭佑がメキシコの強豪パチューカに移籍。これまで日本人選手が海外クラブに新天地を求める場合、欧州がいわばファーストチョイスとなってきたが、これをきっかけに北中米も新たな選択肢となり得るのか。メキシコ・サッカーの特徴も含めて、サッカージャーナリストの西部謙司氏に見解をいただいた。
 
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 移籍は個人の問題なので、その行き先は北中米でもアジアでもアフリカでも当然ありだ。なかでもメキシコリーグはレベルが高く、代表クラスの選手が移籍して、プレー面やコンディションに支障が出るとも考えられない。欧州クラブに所属して試合に出られないよりは、ずっといいのではないか。
 
 本田圭佑のパチューカへの移籍で注目度が増しているメキシコは、以前から日本と似ている、あるいは日本が模範とすべき国だと言われてきた。体格が日本人に近く(といってもフィジカルは結構強いが)、パスワークを軸としたスタイルも共通している、というのがその理由だ。
 
 メキシコ・サッカーが存在感を増したのは、1986年に自国開催したワールドカップ以降だろう。名将ボラ・ミルティノビッチ率いる代表チームでエースを務めたのは、当時レアル・マドリーに在籍していたウーゴ・サンチェスだった。ワールドカップでベスト8入りしたのはその86年大会と、やはり自国開催の70年大会。94年のアメリカ大会からは連続出場中で、すべてベスト16入りを果たしている。ベスト8の壁が厚いとはいえ、グループリーグは確実に突破してくる実力国だ。
 
 メキシコの特長は正確なパスワークにある。この点ではスペインやブラジルといった強豪国にも見劣りしない。一方で、H・サンチェス以降は絶対的なストライカーが不在で、また国内リーグでプレーする選手が多いため、国際経験の不足も指摘されている。このあたりも日本と似ていると言われる所以かもしれない。
 
 だが、メキシコにも長身選手はいるし、かつてバルセロナで活躍したラファエル・マルケス(現・アトラス)のような経験豊富なタレントがいまなお健在で、さらにドリブルで局面を打開できる強烈な個の力を持ったアタッカーもいる。いわば日本代表の強化バージョンだ。
 ただ、もちろん異なる部分もある。
 
 メキシコは6大会連続でベスト8の壁を越えられずにいるが、プレースタイルは一貫している。その点は、5大会連続出場中ながら大会ごとに、監督が代わるたびに方針が揺れる日本とは大違いだ。ある意味、メキシコには柔軟性がないとも言えるが、どうプレーすべきかという考え方が明確なのだろう。分析や意見がいろいろと出てきても、それを統一もできなければ継続性もないよりは、ずっとスッキリしていて道筋が見えやすい。それまでやってきたことを御破算にして別のものにすり替えることは、建設的とは言えないはずだ。
 
 本田が移籍したパチューカはメキシコきっての強豪だが、コパ・スダメリカーナを制した(2006年)ことでも知られる。彼らはCONCACAF(北中米カリブ海サッカー連盟)のクラブとして、初めてCONMEBOL(南米サッカー連盟)主催の国際大会で優勝したのだ。また、メキシコ代表は93年以来、招待国としてコパ・アメリカ出場を続け、準優勝が2回。クラブ、代表とも大陸連盟をまたいだ活動に積極的で、アメリカとの2強状態にあるCON CACAFに安住していない。
 
 手っ取り早い代表の強化策は、強豪国の胸を借りることだが、日本はなかなかAFC(アジアサッカー連盟)の井戸から出られずにいる。これまで海外組の経験をフィードバックする形で代表を編成してきたが、ワールドクラスの個がいない以上、チームとして対抗するほうが理に適っている。つまり強力な個を組み合わせる南米方式よりも、チームをベースとするメキシコ式の強化のほうが合っているはずなのだ。だから日本もメキシコと同様、コパ・アメリカの常連になるべきだと思っている。
 
 プレースタイルが確立されてブレないこと、そして大陸をまたいでの強化。この2点は日本が是非ともメキシコから学ぶべきである。

文:西部謙司(サッカージャーナリスト)
 
※『サッカーダイジェスト』8月10日号(7月27日発売)「THE JUDGE」より抜粋