日々、騙し騙されかけひきをくり返す、東京の男と女。

彼らの恋愛ゲームには、終わりなど見えない。

これまで、行動&言葉を巧みに操る男女、草食男の意外な行動に振り回される港区女子、“誘い受け”の攻防を繰り広げる男と女、互いを“最高の恋人”と称賛する仮面カップルの話を紹介してきた。

第5回は、モデル女vsコンサル男の攻防。一見華やかな職業の彼らの裏には…?

彼らのかけひきは、どちらに軍配が上がるのだろうか。




マリ(26)って言います。

20代向けの赤文字系雑誌のモデルをしつつ、片手間で知り合いの会社で事務をしています。

今はモデルをしつつ働いていますが、3年後には六本木にネイルサロンを出す予定です。

でも今ちょうど、彼がいないんです。

東京は意外に狭いから、あまり同じコミュニティ内で探しすぎるわけにはいかないでしょ?だから、普段そんなに交流が密じゃない港区女子・加奈子に誘われたパーティに、行くことにしたんです。

そのホームパーティの主催地は、田町。駅から徒歩10分くらいの、某女性社長も住んでいたという噂のタワーマンションです。知ってます?

西麻布などと比べてしまうと格落ち感は否めませんが、たまにはこういうところで新規の掘り出し物を探すのも面白そうですよね。

そこにいたツヨシさんは、そのホームパーティで“ある意味”ひときわ目立っていました。


その名は、ツヨシ。男の正体は…?


合いの手に命をかける“タンバリン男”、ツヨシ。


ツヨシさんは、俳優のムロツヨシに似ていました。名前も一緒だし、優しそうでひょうきんで、笑顔が少しだけ胡散臭いの。

彼は、合いの手に命をかける人でした。あれは間違いなく、カラオケだとタンバリン男になるタイプですね。

主催者であるベンチャー経営者の訓示を一言一句聞き漏らすまいと必死に耳を傾け、こくこくと首を揺らしながら頷き、あまつさえ感動的な笑顔で拍手をする。

その人のワインが残りわずかになると、さながら発作が起きた主人に薬を飲ませる執事かのごとき速さで駆け寄り、前のめりにワインを注ぎ入れる。

それに、収入はそこそこありそうな出で立ちだったから、これから芽が出るタイプかもという期待もありましたね。ちょうどよい塩梅の男性だなって。

私は極上の笑顔で彼に話しかけ、LINEを交換しました。彼、頬が緩みっぱなしでした。



その後ツヨシさんとは、数回ご飯に行きました。

聞けば彼は、赤坂にある世界的な外資系戦略コンサルティング会社で、マネージャーをしているというのです。

コンサルの人って落ち着いていてロジカルで、淡々と早口で話すイメージでしたけど、彼みたいな特殊な人もいるものね…と面白く感じました。

彼の連れて行ってくれたお店のチョイスも良かったですよ。『鮨さいとう』、『ラオリーバ』から『タスク』まで。私の見る目は、間違っていなかったと確信しました。




これからネイルサロンを始めるにあたって、彼に何かネットワークはあるかしら…と未来に思いを馳せていた矢先のことでした。


「彼、コンサルじゃないよ?」


ある港区女子界隈のお茶会で、友人の一人が教えてくれたのです。

「前にマリが名前を教えてくれた後に、何気なくFacebookで検索したんだよね。そしたら共通の友人に知り合いが出てきたから、会った時に彼のことを聞いてみたの」

彼女は、気の毒そうに続けました。

「会社も本当は違うらしいよ。グループ会社の、営業マネージャーなんだって」

頭が鈍器で殴られたように、ぐらぐらと眩暈がしてきました。あのエスコートは?あの軽快なトークは?・・・私のネイルサロンは?

「マリ。男性を紹介してくれる女友達は、ちゃんと選んだ方がいいよ?」

彼女は茫然としている私に優しくアドバイスをくれましたが、目の端にわずかに笑い皺が寄っていたのを、私は見逃しませんでした。

いるんですよね。こういう“マウンティングおせっかい”女子。

でもそれ以上に許せないのは、ツヨシ。そんなレベルで私と対等にデートしようだなんて、図々しいにもほどがあります。

彼に何も期待できないと分かれば、もう用はありません。

あと少しは騙されたフリを続けるかもしれませんが、その後は港区女子ネットワークに彼の正体をばらして、あっさりフェードアウトですね。


ツヨシが知った、マリの正体とは…!




港区は栄華と虚構の街。騙し騙しされるのが当然の世界。


ツヨシ(34)です。外資系コンサル会社、のグループ会社で営業をしています。

この会社に転職したのは半年前。最近はこのキャラクターで培った人脈で、色々な会に顔を出させてもらっています。

特に港区界隈の会は、やっぱり綺麗な女性が多く集まるんですよね。そこでは自分の年収や会社を少し盛って話すのですが、食いつく女性が非常に多い。

ああ、意外と世の中って楽勝なんだなと思います。経済力を持っていて、しかも僕のように気さくな男は、簡単にモテてしまうんですね。

この前も、マリちゃんっていう女の子とつながったんですよ。

彼女、目をきらきらさせて僕に話しかけてきました。モデルという割には少しナチュラルな顔立ちだったけど、スタイルは良かったし、何より目を細めた人懐っこい笑顔がとても僕の好みでした。

デートを楽しみつつも、実際僕にはまだ大したステータスもないし、そのうちいい人脈とつなげてあげようかな、と思っていました。僕は情に厚いタイプですからね。


だけど彼女、モデルじゃなかったんですよ。


たった一回、某ファッション雑誌の街角スナップに載っただけなんです。最近仲の良いITベンチャーの社長が教えてくれました。

「この前ホームパーティに来ていた子だろ?Instagramでつながってるよ。職業は非公開みたいだけど、小さい会社の事務をしてるらしい。一回雑誌に載った時に何度もアップしていて、ちょっと笑えたよね」

僕は何というか…とても落胆しました。

モデルどころか読モですらないなんて、そんな安っぽい嘘をつく彼女に失笑です。

「意外と港区にはそんな女も多いぞ。目を肥やすにはいい経験だったな」

その社長は、優しく僕の肩を叩いてくれました。

港区って、虚構の街なんですね。

生粋のダイヤモンドとして輝いているのは、ほんの一握り。僕やマリちゃんのように、彼方に見える輝きに目が眩んで虚構の中を彷徨い続ける輩が、一体どれだけいるのでしょうか。

僕は、嘘をつく女性は好きではありません。

とりあえずしばらくは騙されたフリを続けてあげて、よりランクの高い女性を紹介してもらう。

そして僕のように誰かが騙されぬよう、彼女の正体をちゃんと広めてから、サヨナラすることにしましょう。

僕は、身内への情に厚いタイプですから。


偽モデル女vs偽コンサル男…勝負の結果は?


モデルだと嘘をついて男を利用しようとした女と、コンサルと名乗り港区女子と仲良くなろうとしている男。

最後に“甘い蜜”を吸えるのは、ツヨシ?それともマリ?

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