2017-0902
自国を他国の侵略、武力行使から守り、秩序を維持するのに欠かせないのが自衛力となる軍事力。安全保障のために存在するだけでも意義のある実行力であり、抑止力でもある。その防衛や安全保障の施策を、国民はどれほど望んでいるのだろうか。内閣府が2017年8月28日に発表した、定点観測的に調査を行っている「国民生活に関する世論調査」の最新版となる2017年版などから確認していく(【発表リリース:国民生活に関する世論調査】)。

どのような層が「防衛・安全保障」を強く望むのか


調査要件などは先行記事【政府への要望、社会保障に景気対策、高齢社会対策(最新)】を参考のこと。

まず最初に示すのは直近年分の政府への要望の一覧。提示された選択肢の中で「防衛・安全保障」は36.2%の人が要望している。順位としては5番目。上位には先行記事で挙げた「医療・年金等の社会保障の整備」「景気対策」「高齢社会対策」「雇用・労働問題への対応」が並ぶ。


↑ 政府に対する要望(2017年7月)

意外に思う人もいるかもしれないし、当然、むしろまだ低いと感じる人もいるだろう。

この「防衛・安全保障」を求める声の大きさをいくつかの属性別で見たのが次以降のグラフ。

↑ 政府に対する要望(2017年7月、防衛・安全保障)(居住地都市規模別)
↑ 政府に対する要望(2017年7月、防衛・安全保障)(居住地都市規模別)

↑ 政府に対する要望(2017年7月、防衛・安全保障)(性別・年齢階層別)
↑ 政府に対する要望(2017年7月、防衛・安全保障)(性別・年齢階層別)

居住地域別では都市部の方が高く、地方に行くほど低い値が出ている。東京都区部では4割以上の人が防衛・安全保障への(より強固な)政府施策を要望している。あるいは有事の際に被害を受けやすいから、との認識があるからなのかもしれない。

性別では男性の方が、年齢階層別では歳を経るほど要望が強くなる。男女別の差異は容易に理解できるが、年齢階層別では意外な値動き。むしろ歳が上の人ほど、拒否反応が強そうなものだが。

↑ 政府に対する要望(2017年7月、防衛・安全保障)(就業上の地位別)
↑ 政府に対する要望(2017年7月、防衛・安全保障)(就業上の地位別)

就業上の地位別では関連性が特になさそうなこともあり、法則性の類は見受けられない。自営業者と主夫が大きく出ているのは、男性が多いからだろうか。

↑ 政府に対する要望(2017年7月、防衛・安全保障)(職業別)
↑ 政府に対する要望(2017年7月、防衛・安全保障)(職業別)

職業別では無回答が過半数を超えている…が、これは総数が9人でしかないため、統計上のぶれと見た方が道理は通る。それ以外では管理職や専門・技術職が高めだが、これも男性比率が高いがゆえの物だろう。普段から各種情報の取得に慣れており、重要性を認識しやすいとからとの解釈もできるが。

属性別動向としては「男性」「都市圏居住者」「中堅層から高齢層」「日頃から情報に目ざとい人」に高めの傾向が出ていると表現できるだろう。

経年変化を確認する


現状では以上のような結果ではあるが、それでは過去ではいかなる想いが寄せられていたのか。1998年以降の全体値の値動きを示したのが次のグラフ。良い機会でもあるので、政府が担う施策として類似の項目である「外交・国際協力」を併記したグラフも加えておく。

↑ 政府に対する要望(防衛・安全保障)推移
↑ 政府に対する要望(防衛・安全保障)推移

↑ 政府に対する要望(防衛・安全保障/外交・国際協力)推移
↑ 政府に対する要望(防衛・安全保障/外交・国際協力)推移

2006年の値が突出しているが、これは調査直前の2008年8月に北方領土近辺で、根室市のカニかご漁船第31吉進丸がロシア警備艇に銃撃の上拿捕され、漁船の乗組員1名が射殺、3名拘束された(第31吉進丸事件)のを受けての値動き。それをのぞけば多少のぶれはあるものの、防衛・安全保障と外交・国際協力共に年々上昇しており、対外施策の重要性を認識しているようすがうかがえる。

他方この数年に限れば、外交・国際協力は頭打ちとなり下落(直近年はいくぶん持ち直した)する一方で、防衛・安全保障は漸減のあとに直近年で大きく上昇を示している。昨今の東南アジア情勢、特に半島問題や中国の対外姿勢を受けてのものだろう。両者のかい離が数年に渡り生じるのはこれまでに無かった現象であり、過去とは状況が変わりつつあることを予見させるものでもある。