まっこい・さいとう=1970年2月9日生まれ、山形県出身

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深夜番組「マスカットナイト・フィーバー!!!」(テレビ東京系)で、セクシー女優軍団に芸人顔負けのお笑い企画に挑戦させたかと思えば、「とんねるずのみなさんのおかげでした」(フジ系)では、“落とし穴”をとことんショーアップした「全落オープン選手権」など、ゴールデンタイムとは思えぬほどエッジの利いた爆笑企画を展開。局の垣根を越え、放送時間も問わず、常に最先端の“テレビの笑い”を追求し続ける演出家・マッコイ斉藤氏。“お笑い番組ファンが最も信頼を置く作り手”である彼が見つめる、テレビの現在と未来とは――?

近年は「大久保じゃあナイト」(2013〜2014年TBSほか)「KAT-TUNの世界一タメになる旅!」(2014〜2016年TBSほか)なども手掛ける鬼才・マッコイ斉藤氏

■ たけしさんが「くだらねえな〜」って笑ってくれて、調子に乗ってしまいました(笑)

――マッコイさんがテレビマンとしてキャリアをスタートさせたのは?

「もともと僕はビートたけしさんが大好きで。山形から上京してきたときに、どうにかたけしさんに会えないかと思っていたら、ある雑誌で、IVSテレビ制作(※番組制作会社)が『(天才・たけしの)元気が出るテレビ!!』(1985〜1996年日本テレビ系)のスタッフを募集している広告記事を見つけたんですよ。それですぐに応募して、入社できたまではよかったんですが、いきなり『タレントショップの店長をやれ』と言われて(笑)。当時、IVSにはタレントショップを運営する部署があったんです。そこで結局、2年くらい働いたのかな。その後ようやく、制作部への異動願いが通って、『元気』のADにしてもらいました。

ところが、このADの仕事というのが本当にキツくって。休みなんて全然ないし、今の若い人が『元気』のADをやったらきっと3日で辞めますね(笑)。…というくらい大変だったんですけど、何だかんだ言って、楽しかった記憶があるんですよね。当時の直属の先輩は、高橋がなりさん(※その後、アダルトビデオの監督などを経て、現在実業家として活躍中)。僕らは『雅也(まさや)さん』と呼んでいたんですけど、雅也さんには鍛えられました。総合演出はテリー伊藤さんが務めてらっしゃったんですが、僕は末端のADだったので、きっと伊藤さんはいまだに僕のことを知らないと思います(笑)」

――そんな「元気が出るテレビ!!」で学んだことは?

「やっぱり、たけしさんや伊藤さんをはじめ、最先端の笑いを作っている人たちが集まっている番組でしたから、学んだことはたくさんあるんですが、強いて言うなら、“面白さ至上主義”というか、『面白さのためなら何でもやっていいんだ』っていう、テレビの笑いの本質を教わった気がしますね。何せ、『早朝バズーカ』だとか、寝ている人に無理やり人工呼吸を施す『早朝マウストゥマウス』とか、あと、林家ペー・パー子さんの車を1トンの石で潰したりとか、毎日そんなムチャクチャな企画ばっかり考えてましたから(笑)。で、僕なんかは、その感覚がいまだに抜けてないわけですよ(笑)。もし最初についた番組がクイズやドキュメンタリーだったら、こういう人間にはなってなかったんでしょうね」

――(笑)。「元気が出るテレビ!!」時代、マッコイさんが発案した企画でオンエアされたものは?

「一番最初は『早朝逆バンジー』ですね。寝ている出川哲朗さんをクレーンで吊り上げて、空中に放り投げるっていう(笑)。出川さんには『首の骨、折れるわ!』って本気で怒られたんですけど…」

――でも、そこで手応えを感じたわけですね(笑)。

「そうなんです。そこから僕の企画が3本くらい連続で採用されて、オンエアで爆笑を取ったんですよ。たけしさんもVTRを見ながら『くだらねえな〜』って笑ってくれて。それですっかり調子に乗ってしまったという(笑)」

■ とんねるずの貴さんと出会っていなかったら、今の僕はいませんから

――その後、マッコイさんは自らの制作プロダクションを立ち上げて、さまざまな番組を手掛けることになるわけですが、ターニングポイントとなったお仕事はありますか?

「13、4年くらい前、箸にも棒にも掛からないディレクターだった僕に、とんねるずの石橋貴明さんが声を掛けてくださったとき。あの瞬間は、間違いなく自分にとってのターニングポイントですね。僕は昔から、矢作(兼/おぎやはぎ)さんとホリケン(堀内健/ネプチューン)さんと仲良くさせていただいているんですけど、3人で一緒に飲んでいたら、たまたまその店に貴さんがいらっしゃって。そこで少しお話させていただいたんですが、貴さんが『おまえ、うちの番組やってみろよ』って言うんですよ、初対面の僕に。それを機に、『みなさんのおかげでした』に参加させてもらえることになって」

――そして現在、マッコイさんは「みなさんのおかげでした」の演出を手掛けています。

「本当に、あのときに貴さんと出会っていなかったら、今の僕はいませんから。足を向けて寝られないです」

――お話を伺っていると、ビートたけしさん、テリー伊藤さん、とんねるずさんと、そうそうたる顔触れの方々から導かれているかのようにキャリアを積まれているのが分かります。

「光栄です。だって、ビートたけしさんととんねるずさんさんっていったら、僕らの世代にとってはお笑い界の2大巨頭ですよ? 普通に山形に暮らしていたら、絶対に会えない人じゃないですか!」

――(笑)。石橋さんと実際に一緒にお仕事をしてみて、いかがでしたか。

「貴さんは、よく『無視、称賛、非難』っていう言葉をおっしゃるんですよ。これはもともと野村監督(※野村克也氏/ヤクルトスワローズ、阪神タイガース、東北楽天ゴールデンイーグルスなどの監督を歴任)がよくおっしゃっていた格言で、人間はそもそも周りから『無視』されるのが当たり前だと。でも、そんな状況で力を発揮して初めて『称賛』される。ところが、その後は周囲からの『非難』が待っている…というような意味なんですが、この言葉は、常にどこか頭の片隅にありますね。実は僕、『みなさんのおかげでした』に入って最初の1年くらい、貴さんに全く口を利いてもらえなかったんです。当時はかなり落ち込みましたけど、今にして思えば、僕はそのころはまだディレクターとして何ひとつ結果を残せていなかったから、おそらく敢えて、僕に声を掛けなかったんですよね」

――ちなみに、「みなさんのおかげでした」でアカマタというヘビを持ち込んだのも、マッコイさんの発案だそうですね(笑)。

「昔、ガレッジセールと沖縄ロケに行ったとき、現地の方から、『この辺りにアカマタっていう、ものすごく凶暴なヘビがいる』って話を聞いたんですよ。ハブが逃げ出すとまで言われているくらい獰猛だけど、でも毒は持っていないらしい。それを聞いて、無毒だったら噛まれても大丈夫だろうと思って、ゴリに『おまえ、噛まれろ』って言ったんです(笑)。そしたら、ゴリが見事に鼻を噛まれて。あそこで腕とかを噛まれても大して面白くないでしょ? やっぱり一番面白いのは鼻なんですよ(笑)。そういう意味では、あんなに笑いを裏切らない生き物はいないですよ(笑)」

■ AKBが恋愛禁止なら、恵比寿★マスカッツは恋愛自由で行こうと(笑)

――また一方で、2008年には、マッコイさんが総合演出を手掛ける深夜番組「おねがい!マスカット」(2008〜2009年テレビ東京系)が始まりました。以降、「おねだり!!マスカット」(2009〜2010年)、「ちょいとマスカット!」(2010年)、「おねだりマスカットDX!」(2010〜2011年)、「おねだりマスカットSP!」(2011〜2013年)、「マスカットナイト」(2015〜2017年)、そして現在放送中の「マスカットナイト・フィーバー!!!」まで、10年近くにわたってコアな人気を誇るシリーズとなっています。

「『マスカット』シリーズは、大好きだった『夕やけニャンニャン』(1985〜1987年フジ系)の深夜版を目指して立ち上げました。番組が始まった当時は、AKB48を筆頭にアイドルグループがたくさん出てきた時期で。でも、セクシー女優のグループがなかったんですね。だったら自分で作っちゃおうかと(笑)。AKBが恋愛禁止なら、こっちは恋愛自由。笑い一本でやっていくというのが唯一の掟です」

――細かい話ですが、恵比寿マスカッツには、セクシー女優だけでなく、いわゆるグラビアアイドルの女の子もいますよね。どういう狙いが?

「グラビアアイドルの中にも、世に出るきっかけがつかめなくて、くすぶってる子がいっぱいいるんですよね。だから、そういう子も入れた方が、より“何くそ感”が出て、メンバー同士、切磋琢磨できるんじゃないかと思って」

――MCのおぎやはぎさん、大久保佳代子さんの起用理由は?

「お色気番組の司会が似合うタレントさんもいると思うし、そういう方にお願いしてもきっと面白くなるとは思うんですけど、それって想定内の面白さのような気がして。『何でおぎやはぎなの?』っていう違和感が好きなんですよね(笑)」

――「マスカットナイト」からは、サブMCとして阿佐ヶ谷姉妹もメンバーに加わりました。

「新しい違和感を取り入れたくなったんですよ、Wメガネが2組っていう違和感も含めて(笑)。まぁ学校で言えば、矢作さんがクラスの担任で、小木(博明)さんが校長、大久保が教頭、そして阿佐ヶ谷姉妹は用務員のオバサン、みたいな感じですかね」

――(笑)。初代の“恵比寿マスカッツ”と、現在の“恵比寿★マスカッツ”で、何か違いを感じる部分はありますか?

「今の子たちは、確かにみんな器用なんですけど、器用すぎて味がないっていうのは正直感じますね。あと、今のマスカッツにはまだ、100%腹を見せてくれるメンバーが数人しかいない。犬とか猫って、信頼する相手には腹を見せるじゃないですか。初代のマスカッツの子たちは、それこそ犬みたいに、僕に全部腹を見せて、『さぁ、どうにでもしろ!』って感じだったんですけどね。マスカッツというグループは本来、さらけ出してナンボのアイドルだと思うんで、今後は月収の話とか男の話とか、よその番組でしゃべったら怒られるような話をどんどんしてほしいなと思いますね(笑)」

――では、最後の質問です。総世帯視聴率の低下や、若者のテレビ離れなど、今のテレビ界を危惧する声も聞こえてくる昨今ですが、マッコイさんはこの現状をどのようにごらんになっていますか。

「ずっとテレビを見て育ってきて、テレビが大好きな僕としては、『テレビは今もやっぱり面白い』と言いたいですね。いい意味で“ツッパってる番組”もいっぱいありますから。『(世界の果てまで)イッテQ!』(日本テレビ系)も相変わらず抜群に面白いし、『陸海空 (こんな時間に地球征服するなんて)』(テレビ朝日系)からはナスD(友寄隆英ディレクター)という裏方のスターも出てきた。AbemaTVの『亀田興毅に勝ったら1000万円』(2017年5月)というのも、テレビの未来を明るくする“事件”だったと思うし。やっぱりテレビはまだまだ華やかだし、可能性は無限だと思うんですよ。僕自身について言えば、『みなさんのおかげでした』で、いつか20%を取りたいと思っています。今のところ自己最高記録は、落とし穴を初めてやった回('10年6月24日放送「全落オープン選手権」)の19.9%。だから、これからも諦めずに頑張っていれば、必ず20%が取れる日が来ると信じているんです」