第82回でも取り上げたランドローバー・ディスカバリーが、先ごろ新型にフルチェンジした。世界最高のオフローダーブランドとの呼び声高いランドローバーでも、ディスカバリーには頂点レベルの悪路走行性能が与えられるのがお約束。なので、この新型ディスカバリーは、ほぼ自動的に”世界一クラスのホンモノのSUV”ということになるわけだ。



 ランドローバーのなかでも、いちばんエラいのは”砂漠のロールスロイス”の異名をもつレンジローバー(以下レンジ)だが、新型ディスカバリーは、そんなレンジと基本骨格設計を共用する。新型ディスカバリーも先代同様に800万円近い高額車だが、レンジはもっとも安いグレードでも1377万円もする! そう考えると、新型ディスカバリーは、もう爆安(?)といっていいかもしれない。

 レンジにも使われる新型ディスカバリーの骨格は、オールアルミのモノコック構造。つまり、トヨタ・ランドクルーザー系(第114回参照)やレクサスLX(第120回参照)といった古典的な独立フレーム構造とは異なり、基本構造は一般的な乗用車と酷似。さらに素材をほぼすべて軽量なアルミとした最新鋭の超ハイテクボディなのだ。

 ……とはいっても、ディスカバリーは最近ハヤリの軟弱系SUVなどでは、けっしてない。とにかく頑丈堅牢かつ質実剛健。運転席が相変わらずよじのぼるように高いのは、日常の乗降しやすさよりも、周囲を正確に見わたして、路面を踏み外して転げ落ちたりしないためだ。さらに、新型ディスカバリーは全車に高価なエアサスを標準装備するが、これもまた、乗車人数や荷物の大小にかかわらず理想的な車高をピタリと保つため……と、ディスカバリーはスミズミまで、機能や安全を突き詰めたツボだらけ。これもホンモノの証拠だ。

 それと同時に、私のようなシロートが舗装路で走らせると、その乗り心地はもうトロけそうなくらい快適で重厚。しかも、新型ディスカバリーにはマニア待望のディーゼルモデルが登場したのだが、そのV6ディーゼルは体感的にはガソリンエンジン以上の静けさである。



 ボディのオールアルミ化で先代より100kg以上軽くなった新型ディスカバリーだが、全高1.9mという見上げるような巨体であり、その絶対重量はまだ約2.5tもある。つまり、軽自動車3台分(!)のヘビー級。

 クルマは基本的に軽いほうが機動性でも燃費でも有利なのが道理だが、ゆったりじんわり走らせるときの静かさや乗り心地の面には、じつは重さが大きなメリットとなる。

 こうして絶対的な物理(=質量)で醸成される快適性は、ハイテク技術で作りだした静かさや乗り心地とは、明らかに一線を画す。なんというか、人間の五感にフィットしたシアワセで芳醇な味わいなのである。

 ランドローバーのラインナップにおけるディスカバリーは、前記のようにレンジに対して安くてカジュアルな位置づけとなる。しかし、それ以上に明白なディスカバリーならではの売りが、オプションで3列目シートを追加して”7人乗り”にできる点にある。

 まあ、3列シート車を用意するSUVは世界にもいくつかある。ただ、その種のSUVの3列目はたいがい「一応は座れますけど……」の補助席レベルが大半だが、ディスカバリーのそれはビックリするくらいにデキがいい。



 なにせ、ディスカバリーのボディはあの日本最高ミニバンのトヨタ・アルファード/ヴェルファイアに匹敵する背の高さであるうえに、新しいモノコック構造は床が低くできることもメリット。よって、新型ディスカバリーの室内空間は天地方向にもたっぷりと広い。

 実際、新型ディスカバリーの3列目は窓がせまいゆえの独特の閉所感があるものの、シートそのものの堅牢感や、きっちりと正しく健康的な着座姿勢は、そこいらのミニバンが束になっても敵わないほどちゃんとしている。私も基本的にせまいところが好きな典型的日本人(笑)のひとりなので、下手なミニバンの3列目より新型ディスカバリーのそれのほうが何倍も落ち着く……ということを告白しておきたい。

 新型ディスカバリーのすさまじい悪路性能を使いきれる場所は、日本(のクルマが合法的に乗り入れられる場所)には事実上ほとんど存在しないが、「とにかくホンモノがほしい」というマニア筋にはこれ以上ないツボな選択である。と同時に、いま国産の高級ミニバンに乗っていて「もっとエラい3列シート車がほしい」という強欲な御仁にオススメしたい最右翼である。  回りくどくなってしまったが、つまり、新型ディスカバリー最大のツボは”当世で最強かつ無敵のレジャーカー”ということにある。



【スペック】

ランドローバー・ディスカバリーHSEディーゼル

全長×全幅×全高:4970×2000×1890mmホイールベース:2925mm 車両重量:2380kgエンジン:V型6気筒ディーゼルターボ・2992cc最高出力:258ps/3750rpm最大トルク:600Nm/1750rpm変速機:8ATJC08モード燃費:11.6km/L乗車定員:5/7名車両本体価格:799万円

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