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もくじ

ー スーパーカーを、おびやかす
ー クリオ200カップは戦いのクルマだ
ー フィエスタST ポルシェのような塊感

スーパーカーを、おびやかす

あれは2009年、秋の某日。ルノー・スポール・クリオ200カップはまだ新車だった。

アウディR8がわたしの運転するクリオの前を走っていた。ウェールズの広大な原野に広がる視界のよい舗装路で、R8は素早い動きで先行していった。

しかしわたしも負けていなかった。事実、そのルームミラーにはクリオが大きく写しだされていた。短い直線路でR8が少し引き離すが、コーナーに差し掛かると、クリオとの開きは一気になくなった。

スキルさえあれば、スーパーカーにプレッシャーを与えることだってできる。それを体感的に悟った瞬間であった。ちょっとの挑戦心も必要だけれど。

このような状況もあり、わたしのホットハッチへの評価はとても高い。さまざまな意味で、最高の車種だと実感する。エキサイティングなドライビングだけでなく、日常的に使用でき、価格も手頃。

とりわけクリオ・カップは、8年前と同様に今も十分弾けているはずだ。ターボエンジンとパドルシフト付きのATに置き換わったクルマよりは、恐らく。

しかし今乗ると、どうなのだろう。

クリオ200カップは戦いのクルマだ

腰を下ろしてみる。シートポジションは高く、ステアリングホイールのテレスコピック機能も備わらないので、まるで長身のトラックドライバーのように、身体を起こして、しかも背中を丸めて座らなければならない。

低速域での乗り心地は非常に硬く、路面の細かな凹凸を逐一拾って飛び跳ねるので、エンジンの回転数を上げるたびに前輪がホイールスピンするのではないかと疑問に思うほど。

しかし実際には、アシがしっかり動くことで、ホイールは巧みに上下動をしながら路面を捉え、追従していく。ボディは元気すぎる子どもが飛び跳ねるように上下に揺さぶられるが、シャシーの仕事は確実だ。

クリオの持つ、スーパーカーに食らいついていけるスピードは、ここから生まれる。

フロントタイヤは強力なコーナリンググリップを生みだし、4角のタイヤ全てから濃密なフィードバックがあるため、グリップの限界ギリギリまで簡単に引きだせるのだ。それゆえどこでもフラットアウトが可能。

一般道だと本来持つ性能のごく一部しか引きだせないスーパーカーよりも、ずっと満足感が高い。

クリオのような手応えがある高回転型エンジンが、いつか味わえなくなる日が来るのが寂しい。

5000rpmから7500rpmのレッドゾーンまで回してやれば、何かを打ちのめすかのように飛んでいく。

マニュアルギアボックスは、テキパキと納まりがよく、ギアチェンジをしてアクセルを吹かす毎に楽しませてくれる。

ルノー・クリオ・カップはホットハッチの中で常に最高の1台だと思う。事実、ここまでしっかりと向き合え、飛ばせるホットハッチといえば、近年はほかにもう1台しか思い浮かばない。

そう、フォード・フィエスタSTだ。

フィエスタST ポルシェのような塊感

フィエスタSTの方がよりよいクルマだ、という意見はあるかもしれないが、それは状況によるだろう。

確かにSTの方がより煮詰められたオールラウンダーではあるが、クリオ・カップの方が、郊外の道や、あるいはサーキットで、より優位に立てるはずだ。

だがフォード・フィエスタのドライビング・ポジションは、ルノー・クリオよりもずっと優れている。やはり着座位置は高いが、ステアリングホイールの位置は適切で、背中を前に起こして座る必要はない。

STを5〜10分も運転すれば、理由はわからなくても、運転を楽しんでいる自分に気づくだろう。それは、自らの操作とクルマの振る舞いとが合致しているから。非常に密にまとまったクルマなのだ。

シフト操作と調和したクラッチの重さ、フロントアクスルのレスポンスを軸に置いたステアリングレシオ、コーナーでのボディロールの角度。ポルシェ911のような塊感のあるフィーリングを持つクルマは数少ない。

しかも道路を攻めれば、STはより機敏に、力強く応えてくれる。出発地から目的地へ最も速く移動できる、もう1台のクルマだ。

しかし1600ccのターボエンジンは、クリオの自然吸気エンジンよりも遥かに柔軟ではあるものの、トップエンドでのエキサイトメントではかなわない。そのうえこのノーマルの180psの最高出力でも、フロントタイヤは役不足だった。

けれど極めてエキサイティング。どちらをとるかと問われればクリオと答えるかもしれないが、いずれにしてもコーナーの連続する道を走っている限り、優れたホットハッチなら、多くのエキゾチックカーに追従して走行できる。

日常的なコンパクトカーで、スーパーカーのドライバーを驚かせるのも、面白いかもしれないと再確認した。