職場での友情は成立する?

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ほとんどの人は、仕事をする上で会社に勤めています。この会社という組織は、現在ならばいくつのも会社を渡り歩くことも珍しくありませんが、かつては一度就職したら、そこで定年まで過ごすことが当たり前とされていました。そのため、よほどのことがないかぎり会社を辞めるないということが前提であり、退職の理由も会社都合よりも自己都合の方が良いとされてきました。

会社員小説

2017年の上半期芥川賞を受賞した沼田真佑による『影裏』(文藝春秋)は会社員小説です。岩手の支社に出向することになった主人公は、そこで一人の同僚の青年と出逢います。同じ釣りが趣味ということもあって意気投合し、常に休みの日も行動をともにするようになります。そこでは二人は仲の良い友人としてうつりますが、ちょっとしたところから行き違いが生まれます。そんな中東日本大震災が起こり、 やがて主人公は友人の本性を知ることになる、というのがおおまかな流れです。

マウンティングの話

本書に描かれているものは、今風の言葉でいえばマウンティングの話ともいえるかもしれません。主人公は作中で同性愛者であることが明かされ、同僚に好意を寄せていたことがほのめかされます。切ない失恋の話としても読めるでしょう。それと同時に会社員生活を通して友情は生まれ得るかという問いかけもなされています。