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もくじ

ー「羊の皮をかぶった何とやら」
ーフェラーリ328GTBよりパワフル
ーM5 甘美さで唯一無二の存在

「羊の皮をかぶった何とやら」

あなたはSNSに熱心なほうだろうか。

興味深いクルマの写真をアップロードすると、雪崩のようにコメントがつくことがあるが、つい先日も1987年式のBMW M5の画像をアップした際、E28のファンからの反響が大きかった。

このようにひとを熱狂させるのは、見た目の平凡さと、並外れた実力とのギャップが大きく影響していると推察する。羊の革をかぶった何とやらだ。

現にここで紹介する187台中185台目の右ハンドル仕様のM5は、M535iよりもパワーが控えめなふつうのモデルと見かけ上はさして変わらない。

違いがあるとすればアロイホイールやバッジ、そして大きめのフロントスポイラーやボディカラー同色のミラーくらいだ。

しかしよく見ていくと大きな違いがある。

まずは価格。新車時の価格は£30,000(428万円)を超えていたが、これはスポーティなルックスのM535iの1.5倍の値段。当時ではスーパーサルーンだったM5は、どの5シリーズとも違い、BMWモータースポーツのハンドメイドで作られた。

さらに違いもある。

フェラーリ328GTBよりパワフル

さらなる違いはエンジン。

M5は24バルブの3.5ℓエンジンを搭載していたが、このエンジンはM1にも搭載されていたもの。

ピストンの仕様を変更するなどしてストリートユースに仕上げられているが、それでもパワーは285psを発生させる。当時としてはかなりのものだ。

数字だけ見れば今では大したことないようにも思えるが、フェラーリ328GTBよりもパワフルだった、という一文を付け加えるだけでそのすごさがわかるだろう。

それだけではなく、ギア比がクロスしたゲトラグ社製ギアボックス、ショックアブソーバーとスプリングレート、大きめのブレーキに16インチのホイールなどもそうだ。

ただこのホイールは、パッと見で違いを見分けるのはむずかしい。また、Mのバッジはタコメーターとシートの背もたれ部分に控えめについているだけだ。

ふつうのモデルと比べると、スピードメーターのスケールが170mph(280km/h)表示に変わっていることに気づくかもしれない。これは同時期のE30 M3に通ずるもので、これまた控えめである。

ただし見た目とは裏腹に、スポーツカーマーケットでの存在感はピカイチであった。

運転席に腰を下ろしてみると、コックピットがタイトだということに気づく。そして見切りの良さも感じるはず。スクエアなボディは、間隔をつかみやすい。

キーを捻ってみる。

M5 甘美さで唯一無二の存在

エンジンに火を入れると聞こえてくるのは高貴なピュア・サウンド。

ギアはスローだが精密で、ギア比の選択も美しいと思う。エンジンの限られたトルクを最大限に生かそうとし、5速の終わりまで絶え間なく加速する。

じつに30年前、このクルマはかんたんに、かつ速くドライブすることを可能にさせた。パッと見ただけでは高級な4ドアサルーンだが、実は今のフォルクスワーゲン・ゴルフRよりも軽い。

それに、4200rpmから7000rpmまでの間でよく吹けるエンジンは、現代のスポーツカーを追いかけまわすことだって可能だ。

ハンドリングはあなたが想像しているよりもずっといい。E28の5シリーズは、特にウエット時、リアがスライドしやすい特性なのだが、シャシーがふいに破綻することはない。

また、サスペンションのモディファイはLSDの標準装備化も伴っていて、乗った感じは現代のクルマにだって負けていないという感覚になる。

ステアリングからは、感じたことのないような正確さを味わうことができ、速く走らせようとすると自然でマイルドなアンダーステアが伝わってくる。

すべてのクルマがM5のように地味であるべきではない。ただし、その地味さは「羊の皮をかぶった狼」を愛してやまない理由であるのは紛れもない事実。

そして好きな「羊の皮〜」はいくつもあるが、M5のようなクオリティのクルマは唯一無二なのかもしれない。