拡大するテロの標的、特定の企業が狙われる可能性も

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グローバルなサプライチェーンを狙ったテロ事件が昨年、前年比16%増加していたことが分かった。英国規格協会(BSI)によると、昨年中に発生が報告されたテロ攻撃の件数は、合計346件に上った。過去10年間の発生件数は年間平均161件だった。

BSIの報告書によると、発生した事件には、貨物の盗難、強奪、ハイジャック、誘拐、密輸、暴力的な攻撃が含まれる。こうした事件は過去10年間に58か国で起きており、最も多く発生したのはコロンビア、インド、トルコだった。これら各国は全て、グローバルなサプライチェーンにおいて戦略的に重要な役割を担っている。

また、特に増加しているのは貨物そのものが標的にされ、放火や襲撃、爆発などの被害に遭うケースだ。BSIの関係者は、「テロ事件は国家の安全保障の問題であり、テロ対策に責任を負うのは各国政府であるという考えは、よくある誤解だ」と指摘する。

「商業的利益や民間団体が脅されたりゆすられたり、直接的なテロ攻撃の対象とされたりするケースがますます増えている…企業はこのことに注意を払い、準備を整えておく必要がある」

問題は「責任の所在」の曖昧さ

グローバルなサプライチェーンの脆弱性は、経済的な問題であると同時に、政治的な問題でもある。

民間企業などが輸送チャネルを混乱から守るための適切な手段を講じていない点を指摘すれば、これは経済的な問題だ。ソマリア沖などの主要な海域では、貨物船を狙う海賊やその他の暴力的な犯罪者たちに狙われる可能性が高い。主要国がグローバルなサプライチェーンへの依存度を高めるにつれて、各国の経済的繁栄は、比較的狭い地理的範囲内で起きる個別の事件に影響されやすくなる。

こうした経済的な脆弱性は、政治的な脆弱性というもう一つの、そしてより深刻な問題を引き起こす。テロ組織など、政治的に思い切った意思表示をしようとする集団は、各国の政治的脆弱性を利用することができる。(ソマリア沖など)「難所」となり得る地域を監視している複数の軍事研究機関は、欧米諸国の国家安全保障に関する戦略上の脆弱性について、警鐘を鳴らしている。

安全保障は伝統的に、公共財であるとされてきた。誰もその形成のために金を払うつもりはなく、一方で誰もがそれを無料で使えるものだと考えている。世界中に巨大な取引チャネルを構築している企業は、保護の強化によって自社の利益が失われることを望まない。各国政府もまた、国際水域や他国の領域には自国の法的権限が及ばないとして、何の行動にも出ようとしない傾向がある。

各国が東アフリカ沖でのイニシアチブに協調して対応するにはコストがかかる。また、計画を立てるのも難しい。さらに、企業は船舶輸送を専門会社に外注し、そのため危機管理に関する責任の所在が曖昧になっている。

それでも、サプライヤー1社に対するテロ攻撃は、サプライチェーンに関わるあらゆる企業を混乱に陥れるかもしれない重大な問題となり得る。企業、政府、または国際機関が協調して対応を取ることができない限り、グローバルなサプライチェーンが抱えるこうした脆弱性は今後、重大な政治的リスクとなっていくだろう。