北朝鮮への対応をめぐり、韓国の文在寅政権が揺れている。「対話」を重視していた文大統領だが、一転して北指導部の「斬首作戦」の演習を指示。韓国メディアは「対話から報復へと方針を転換した」と報じている。資料写真。

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2017年9月2日、国際社会からの非難をよそにミサイル発射を繰り返す北朝鮮への対応をめぐり、韓国の文在寅政権が揺れている。北朝鮮との「対話」を重視していた文大統領は一転して指導部を狙った「斬首作戦」の演習を指示。韓国メディアは「対話から報復へと方針を転換した」と報じている。

文氏は大統領選中から、朴槿恵前大統領が北朝鮮による弾頭ミサイル発射を受けて16年2月に操業を停止した開城工業団地の再開に触れるなど、北朝鮮との「対話路線」を打ち出していた。7月には韓国国防省が北朝鮮に対し、軍事境界線付近での敵対行為の中止に向け、軍事当局者会談を板門店で行うことを提案。大韓赤十字社も南北離散家族の再会行事実現などのため、赤十字会談を板門店で開催するよう呼び掛けた。

しかし、北朝鮮は韓国側の提案を一切黙殺。8月21日に米韓合同軍事演習「乙支フリーダムガーディアン」(UFG)が始まると、26日に韓国攻撃を意識した短距離弾道ミサイル3発を発射し、29日早朝には北海道上空を通過する中距離弾道ミサイル「火星12」の発射に踏み切った。

聯合ニュースによると、文大統領は29日のミサイル発射の報告を受けると、北朝鮮が容認できるラインを越えたとみなし、韓国軍に直ちに「強力な対北報復能力」を誇示するよう指示。直ちに空軍のF15戦闘機4機が出動し午前9時半ごろ、北東部・江原道内の射撃場で重量1ンのMK84爆弾を8発投下し、標的に正確に命中させた。

金正恩朝鮮労働党委員長ら北朝鮮の指導部を撃滅するための訓練で、軍担当者は「有事発生時に北の指導部を焦土化させる空軍の対応能力を改めて確認した」と説明。爆撃任務の現場指揮官は「北が核とミサイルでわが国民と韓米同盟の安全を脅かすなら、わが空軍の強力な打撃能力で北の政権指導部を全滅させる」と胸を張った。

方針転換の背景について、聯合ニュースは「文大統領は26日の短距離弾道ミサイルはUFGに反発するレベルの低い挑発と判断したが、今回は重大だとみなして厳しい対応に乗り出したとみられる」と報道。青瓦台(大統領府)の高官も「対話ムードに向かえば良いが、そういう状況を先方(北朝鮮)がつくらないなら、こちらも対応措置を取る」と強調したという。

それでも「対話」に未練を残す文大統領に韓国紙は不満げだ。中央日報は「29日の韓国と日本の風景は明らかに違った」と指摘。安倍晋三首相が国家安全保障会議(NSC)を主宰し、米国のトランプ大統領と電話会談したのに対し、文大統領はNSCにも出席せず、トランプ大統領との電話会談もなかった、と批判している。(編集/日向)