真っ赤に染まった代官山蔦谷書店。世界同時販売の「お祭り」が繰り広げられた(写真:ウォルト・ディズニー・ジャパン)©2017&TM Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved

8月31日、午後11時すぎ。東京渋谷区にある代官山蔦屋書店が真っ赤に染まった。映し出されたのは「STAR WARS」(スター・ウォーズ)の文字。ストームトルーパー(写真の装甲の兵士)など、おなじみのキャラクターが次々と登場した。

そして日付が変わった1日の0時1分。一斉に披露されたのが、スター・ウォーズの関連グッズだ。深夜にもかかわらず会場で待ち構えていた200人ほどのファンが、お目当ての商品を次々と手に取っていた。

世界同時に商品販売を解禁

今年12月15日に全世界同時公開が予定される映画「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」。蔦屋書店を映画のイメージカラーである赤に染めて行われたのは、その関連商品の販売解禁イベントだ。解禁日が金曜であることから「Force Friday供廚般症佞韻蕕譴燭海離ぅ戰鵐箸蓮日本だけでなく全世界で同時開催された。

このイベントは最後に「供廚班佞ように、2度目の開催となる。1度目は2015年9月、シリーズ第7弾「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」の公開に先立って行われた。

スター・ウォーズを製作するルーカスフィルムは2012年、米ウォルト・ディズニーに買収されている。1度目はディズニー傘下として初めて、そしてシリーズとして10年ぶりの映画公開前に行われたイベントだった。「商品をここまでの規模で世界一斉に解禁することは、スター・ウォーズにとっても、ディズニーにとっても、前例のない試みだった」(ウォルト・ディズニー・ジャパンで商品ライセンス部門を統括するジャスティン・スカルポーネ氏)。

規模の大きさは今回も変わらない。違うのは目玉となるプロモーション手法だ。前回は動画サイトYouTubeで1時間おきに新商品を公開、そこで新キャラクターであるロボット「BBー8」をお披露目した。


看板をスキャンしてキャラクターを集める(記者撮影)

今回はAR(拡張現実)を活用する。9月1日から3日間、世界30カ国・約2万カ所で映画に登場するキャラクターを描いた立て看板が設置される。事前にインストールしたアプリを立ち上げ看板をスキャンすると、そのキャラクターの画像と解説を集めることができる。

すべて集めると15個。中には今回初登場するキャラクターも3つ含まれている。通常、新キャラクターの解禁は映像やウェブサイトで行うが、ARを用いることで、ファンが受け身ではなく”体験”できるようにした。

「”体験”は商品戦略にとって、もはや外せないキーワード」とスカルポーネ氏は言う。キャラクターを集めるというゲーム性によって、SNS上での拡散やファン同士のコミュニケーションを生み出すことも狙っている。

「SNSは若い世代が使うイメージがあるかもしれないが、スター・ウォーズのコアファンである40代、50代の利用も多い。若い世代の取り込みとコアファンの深掘りの両方が狙える、一石二鳥の施策」(同)。

おもちゃも新技術で進化

変わったのはプロモーションだけではない。商品も進化している。スター・ウォーズ関連ではライトセーバーやフィギュアなどおもちゃが多いが、そこにARなどの新技術を取り入れた商品を増やす。


一斉に販売が始まった関連商品。手前が「BBー8」「BB-9E」のリモコン型おもちゃ(記者撮影)

今回の映画にはBB-8の悪役版ともいえる新型ロボット、「BB-9E」が登場する。白とオレンジが基調の「8」と違い、「9E」は黒が基調で目は真っ赤。その8や9Eをスマホアプリによって操作するラジコン型のおもちゃでは、ARで銀河の冒険を体験できる。

コンピュータメーカーのレノボ社とはARゲームキットでコラボした。ヘッド・マウント・ディスプレイを装着し、ARによって表示されたスター・ウォーズのキャラクターとライトセーバーで戦うことができる。

日本でのスター・ウォーズ関連商品の売り上げは、前回の映画公開前後に大きく膨れ上がり、その後一服していた。ただ、雑貨やファッションなどの新分野や地方の伝統工芸メーカーとのタイアップなど、商品の幅を着実に広げ、売り上げは再度上向いている。

そしてこれらの関連商品は、映画公開に向けてその世界観を知ってもらい、体感してもらうための重要な”先導役”でもある。

米ウォルト・ディズニーの「総合力」

映画公開の3カ月以上も前から関連商品を投入することについて、スカルポーネ氏は「12月の映画公開に向けて、登場するキャラクターやこれまでのストーリーをもっと多くの人に知ってもらいたい。商品販売はいわばその第1弾。今後もさまざまな仕掛けを準備している」と語る。

ここで生かされるのが、米ウォルト・ディズニーの総合力だ。ディズニーは日本ではテーマパーク運営や映画製作で有名だが、テレビやCATVの放送事業、ライセンスを活用した商品開発や、「ディズニーストア」の運営なども手掛ける。


イベントにはタレントのデーブ・スペクターさんも登場。店頭には撮影スポットとして巨大パッケージディズプレーが展示される(記者撮影)

まず関連商品を投入、映像コンテンツの配信によって少しずつストーリーを紹介する。場合によっては関連ゲームの投入や、テーマパークでイベントを開くこともできる。こうしてあらゆる方面からスター・ウォーズの認知を上げたうえで、映画公開につなげる。

「Force Friday」は単なる映画公開前のイベントに見えるが、実はそこにディズニーのさまざまな仕掛けが散りばめられている。そしてそれは、ディズニーの持つ総合力ゆえに可能なのだ。