東アジアの命運が米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の2人の手に握られている。共通項は「予測不能」。お互いの手の内を読み誤ると、破局的な結末をもたらしかねない危険性をはらんでいる。写真は中国の北朝鮮大使館。

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2017年9月2日、米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長。日本や朝鮮半島を含む東アジアの命運が2人の個性的な指導者の手に握られている。2人の共通項は「予測不能」。お互いの手の内を読み誤ると、東アジアに破局的な結末をもたらしかねない危険性をはらんでいる。

米国が読み誤ったのは、8月29日早朝の北朝鮮による中距離弾道ミサイル「火星12」の発射。北日本や東日本各地に全国瞬時警報システム「Jアラート」が流れて不気味なサイレン音が鳴り響き、ミサイルが北海道上空を通過して列島を震撼(しんかん)させた。

これに先立ち、北朝鮮は米国領グアム島周辺の海域に向けて「火星12」4発を同時発射する包囲射撃を「慎重に検討」と露骨に威嚇。米朝間に緊張が走ったが、その後、金委員長は「米国がわれわれの自制力を試し、朝鮮半島周辺で危険千万な妄動を継続するなら、宣言している通り重大な決断を下す」としながらも、「愚かな米国の行動をもう少し見守る」と発言した。

トランプ大統領は金委員長の「留保発言」を「賢明な判断をした」「米国に敬意を払い始めた」などと評価。緊張が和らいだかにも見えたが、8月21日から米韓合同軍事演習「乙支フリーダムガーディアン」(UFG)が予定通り始まると、グアム島とは別方向の太平洋上に「火星12」を発射して対抗した。

北朝鮮の挑発に対し、米国はUFG最終日の8月31日、グアム島のアンダーソン空軍基地に配備されているB1戦略爆撃機2機を朝鮮半島に派遣。米海兵隊岩国基地所属のF35B戦闘機や韓国軍のF15戦闘機とともに合同訓練を実施した。北朝鮮の反発は必至で、緊張は逆に強まる一方だ。

元米国務省高官によると、北朝鮮が越えてはならない「レッドライン」と米国がみているのは、グアム島を狙った包囲射撃のほか、米東海岸まで届く大陸間弾道弾(ICBM)発射や6回目の核実験。

金委員長は8月29日のミサイル発射について「グアム島をけん制するための意味ある前奏曲」と強調したが、グアム島に飛来する北朝鮮のミサイルを米国が迎撃すれば、戦争状態突入を意味する。北朝鮮は昨年9月9日の建国記念日に5回目の核実験を実施しており、韓国の情報機関によると、6回目の準備は完了しているという。

米朝のせめぎ合いが続く中、中国も重要なメッセージを発している。中国共産党中央委員会機関紙・人民日報の国際版「環球時報」は社説で「仮に北朝鮮が先に米国に向けてミサイルを発射し、米国が反撃した場合は、中国は中立を保つことを明らかにすべきだ」との立場を示した。その一方で「北朝鮮の体制転換と朝鮮半島の政治情勢変更を狙って米国と韓国が先制攻撃を仕掛けた場合は、中国は阻止する」と警告している。(編集/日向)