かき氷屋さんの店長にして、話題のバンド「ねこね、こねこね。」のメンバーという異色のプロフィールを持つ、むらまつえりかさん。ずっと大切にしている“オール・タイム・フェイバリット”、ラストとなる5つめは“ショートショートの名手”・星 新一さんの名著『午後の恐竜』です。

ロックバンド「ねこね、こねこね。」のボーカル&ギター、そしてかき氷店「瀬戸内ひだまりかき氷」店長。ねこね、こねこね。は、7月にリリースしたシングル「ことばの海」が好評発売中。「瀬戸内ひだまりかき氷」では瀬戸内の素材を使った、パティシエ手作りの天然蜜たっぷりのかき氷が味わえます。

人生でいちばん
落ち込んでいたときに

 ――最後のおすすめは、星 新一さんの『午後の恐竜』です。

むらまつえりか:星 新一さんに出会ったきっかけは、私が人生でいちばん落ち込んでいる時に友達が星 新一さんの本を3冊くらい貸してくれたんです。どれもおもしろかったんですけど、この『午後の恐竜』にいちばん感動して。

実は、もともと本を読むことが嫌いというか、活字がすごい苦手なんですね。だから映像を観たり音楽を聴いたりとか、そういう感性的なものが好きで。漫画だったら読めるんですけど、あんまり長文だと眠くなっちゃって(笑)。読書感想文の時とかも、薄い本でも読むのに1ヵ月くらいかかっちゃったり…。

そんな私なのに、この『午後の恐竜』はもう飽きずに1日で読んでしまって。初めて一気に読んだ本ですね。

もう展開が読めなさ過ぎて、「えっ!」とか「そんな発想ある!?」みたいな驚きがたくさんありました。直接的なメッセージがあるわけではないんですけど、読むと「自分にもこういうこと、あるかも」みたいな“気づき”もあって。特に「幸運のベル」っていう話が印象的ですね。

最近おもしろかった本は
大宮エリーさん

 ――それ以来、読書体験は広がりましたか?

むらまつ:ちょっとは広がりましたね。星 新一さんの本はそれから全部買って読んで。どれもおもしろかったですけど、やっぱり『午後の恐竜』がいちばんおもしろかったです。

好き嫌いがはっきりしてるんですけど、よしもとばななさんとか谷川俊太郎さん、あと中原中也さんが好きで、詩集とかよく読んでましたね。最近買ったのは大宮エリーさんの本で、『猫のマルモ』っていう本。猫の話とカニの話と鳥の話みたいに、読みやすい短編集で。最近ではいちばんおもしろかった本ですね。

やっぱり『午後の恐竜』がオールタイムで好きな本です。表紙の絵も良いですよね、ちょっとレトロな感じが。

 ――『午後の恐竜』を読んだことで、当時の沈んでいた気持ちも少しは和らいで?

むらまつ:どうだろう…。結構、落ち込むときって後から思うとそんな大したことないじゃないですか?

その時はすごい視野が狭くなっていたので、ちょっと視野が広がって生きやすくなったかな。やる気というか、生きる気力が出てくるきっかけにはなったと思います。

星 新一『午後の恐竜』

現代社会に突然出現した巨大な恐竜の群れ。蜃気楼か? 集団幻覚か? それとも立体テレビの放映でも始まったのか?──地球の運命をシニカルに描く表題作。ティーチング・マシンになった教育ママ、体中に極彩色の模様ができた前衛芸術家、核爆弾になった大臣――偏執と狂気の世界をユーモラスに描く『狂的体質』。ほかに、『戦う人』『契約時代』『理想的販売法』『幸運のベル』など全11編。

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