医師からもがん免疫療法を問題視する声が

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「末期がんが消えた!」「先進的」──命の危機に瀕した進行がん患者にとって、そうした謳い文句で宣伝される「がん免疫療法」は“最後の希望”に映る。だが、高額な治療費を払う患者たちに、「有効性が立証されていない」ことが、正確に伝わっているのか。ジャーナリスト・岩澤倫彦氏がレポートする。

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「再発したら死ぬよ、と主治医に告げられた時に、偶然テレビ番組で免疫療法を知りました。これしかないって思いましたよ。だって自分の強化した免疫細胞が、がんと闘う、消滅させてくれるなんて凄いでしょ。その番組に金沢大の医師が出演していたので、すっかり信用しました」

 4年前、ステージ4の卵巣がんが見つかった医療関係者の50代女性。手術と抗がん剤治療で寛解した後、再発予防のために免疫療法を受けた。費用は200万円。クリニックではVIP待遇で、医師は優しく女性の話にいつも耳を傾けてくれた。

「人よりいい治療を受けて、再発しないで済むと思いました。患者仲間にも勧めて、これで絶対みんなも助かるよと。4人が同じ免疫療法を受けました」

 今年2月、女性は卵巣がんを再発した。これを契機に、免疫療法の有効性に疑問を抱くようになった。

「同じ免疫療法を受けた友達が次々と亡くなって、私だけが生き残りました。友達になんて悪いことをしたんだろうと自分を責めてしまうこともあります」

 女性は、免疫療法に見切りをつけ、再発したがんを抗がん剤治療だけで、再び寛解にした。同じような後悔をする患者が現れてほしくないと願い、今回、本誌・週刊ポストの取材を受けたという。

 女性が免疫療法を受けた、国立金沢大学附属病院の敷地内に建つ民間の金沢先進医学センター。理事長には、前病院長の富田勝郎氏が天下りしている。同氏は免疫療法には副作用がなく、可能性を持った治療だと強調した。

「これまで約1000人の患者が、免疫細胞療法を受けたと思います。1クール(3か月)200万円の治療費は高くない。(裕福な人しか受けられない治療では?)それは政府が考えることです。抗がん剤だって1か月150万以上かかる。患者負担は月10万円で済みますけど」

 同センターには、東京に拠点を置く最大手の免疫クリニックが入っており、金沢大の医師らがアルバイトで診療している。そして、同センターで免疫療法を受けた患者データを、金沢大の医師らが、自主臨床試験として研究している。

 だが、有効性が確立されていない免疫療法の臨床試験を患者負担で行うことは、倫理的にも疑問が残る。これについて、金沢大・水腰英四郎准教授が答えた。

「自費診療でもいいから、免疫療法を受けたいという患者さんが沢山いる。けど、大学の臨床試験枠は限られている。あぶれた人の受け皿が、自由診療のセンターです。免疫療法が本当に安全なのか。そもそも本当に効くのか、というのも(自主臨床試験で)検証したい」

 がん治療を専門とする押川勝太郎医師(NPO法人 宮崎がん共同勉強会・主宰)は、自主臨床試験の手法に疑問を唱える。

「効果を証明するための臨床試験は“人体実験”に等しいのです。だから莫大な治療費とリスクを患者さんだけに負担させるのは、非人道的だし、倫理的にも極めて問題です」

 日本医科大学・勝俣範之教授は、10年以上前から免疫細胞療法に警鐘を鳴らす。

「これまでは自由診療クリニックが、効果のない免疫細胞療法で患者を騙していました。それが最近では、川崎医科大学、北里大学などの附属病院が免疫細胞療法で利益を得ようとしています。効果が判明していない免疫療法は、決して患者さんのためになりません」

※週刊ポスト2017年9月8日号