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もくじ

ー「ひたすら楽しむ」投資対象
ー値落ちしづらい2台のレア車
ー中古になって初めて人気に
ー快適であることは二の次
ー思った以上に心地よい
ーほんとうに賢い買い物とは

「ひたすら楽しむ」投資対象

今回のクルマたちは、日曜日の午後に楽しむような、大人のおもちゃというか、ガレージの住人というか、そういった類のものたちだ。

常識的なキャビンのスペースは備わらず、チャイルドシートの取りつけなどはハナから想定されていない。ひたすら楽しむことが目的で、実用的ではないが、将来的に見れば投機対象にもなる可能性が高い。

そのほとんどが特定の欲求をのみ満たすもので、かつては「親不孝グルマ」などとも呼ばれた、大衆を納得させることはむずかしいシロモノだ。

それでも、軽飛行機を購入するほどではないが、小さく、速く、軽いクルマ、加えてそれが英国車であれば、これに勝る投資先はそうそうない。

ドライバーが楽しむためだけにあるようなクルマは、それなりの可処分所得がないと所有するのがむずかしい。ただし、生産台数の少なさと需要の多さゆえに、リセールバリューはそれなりに保証される。

国債ほど安全ではないかもしれないが、宝石程度には価値が下落しないといったところか。ここで取り上げる2台は、そうした条件を満たしている。

値落ちしづらい2台のレア車

ルノー・メガーヌR26.Rは、£20,000以下で見つけるのはむずかしい。そしてアリエル・ノマドは、そもそも見つけることがむずかしい。オフィシャルサイトの中古車コーナーには、2台しか掲載されていなかった。

アリエルのみごとなところは、投資目的の購入者に便宜を図らないことだ。

もしもクルーカーン本社でクルマを買い戻してもらおうと思えば、最大で新車価格と変わらない金額になることもある。

ただし、彼らは自分たちと無関係なところで中古車のやり取りがされ、その金額が新車より高いことがあるのも把握している。納車待ちが14カ月もあり、それを待てないユーザーが多いことの結果だ。

すぐにでも欲しいがためにより多くの金額を支払うひとびとも少なくないのである。

一方でサーキット志向のユーザーは、よりハードなアトムを購入するべく新車を待つことが多い。

ルノーの方はどうだろう?

中古になって初めて人気に

2008年に導入されたR26.Rは、まさにそうしたひとびとに向けたクルマだ。ただし、前輪駆動で完全ドライを走るのみの、だが。

ベースは2005年シーズンのルノーF1の成功を記念して製作されたメガーヌF1チームR26で、123kgの軽量化を果たしている。

これは走りに無関係なもの、たとえばリアシートや助手席エアバッグ、ヘッドライトウォッシャーを排除し、ウインドウの一部をガラスから樹脂に替えるなどした結果だ。

その切り詰めは、即座にカルト的なステータスを生み、称賛を集めたが、ルノー・スポールにとって、ポリカーボネートのウインドウや煩わしい6点ハーネスと上品さを引き換えにしたハッチバックを£21,999で売り出すには、近年の歴史において最悪のときを選んだといえるかもしれない。

世界経済が破綻の瀬戸際にある中、彼らは英国に導入された230台の販売にすら苦心した。

つい最近になって、中古市場で人気に火がつき、レアさや新車時の高評価も見直され、一躍ホットハッチ界のアイドルに躍り出たのである。

乗ってみようではないか。

快適であることは二の次

ハードコアでウインドウがガタつくとの悪評にもかかわらず、デビューからおよそ10年という時間が過ぎた割には、このクルマは比較的洗練されたフィール。

スプリング・レートはベース車よりむしろややソフトで、強化されたダンパーとオプションのトーヨー・プロクセスR888を組み合わせており、敵意を感じるような不当なまでに硬いものではない。

たしかに、路面の凹みにはまったようなときにはかなりの苦痛を感じ、サスペンションのノイズをかき消すオーディオは備わらないが、エアコンは標準装備され、サベルト製シートはロンドンからクルーカーンまで問題なくドライブできるクッションが張られている。

ノマドの方はもちろん、アイガーでビバークするかのようなクルマで、これに比べればどんなものであってもホスピタリティが十分なように思えてくる。

アリエルの従業員は、ほとんどが柔軟なミレニアル世代であり、猿のような身軽さでこのクルマに乗り込むが、運動不足で太り気味ならひと苦労だ。

しかし、なんとかシートに身体を押し込んでも、快適とは言い難い。クッションはなく、ランバーサポートが容赦なく食い込んでくるのだ。背中の痛みも、Amazonプライムのサービスのようにすぐさま襲ってくる。

しかしながら、不思議な心地よさがある。

思った以上に心地よい

ロールアウトから半年という今回の試乗車は、調整式のビルシュタインと18インチホイールを装着するが、これはオンロード向けの硬いコンビネーション。

それでも、乗り心地はやや節くれだっているが、英国の高速道路での長距離走行も楽にこなす。

トラベルがどこまでもあるスプリングと油圧バンプストッパー、15インチホイールを装備した仕様もあり、これも探す価値のあるバージョンだが、それと今回のクルマとは走りの印象がまったく違う。

オンロード志向のテストカーは、車体を大きく傾けることはなく、チェダー渓谷を抜ける有名なワインディングロードであるB3135を、まるで獲物を追う猟犬のように辿っていく。

R26.Rならばなおのこと、WRCのターマック・ステージを再現したようなこの道はお手のものといった走りを見せる。

後任に当たる275トロフィーRと比較すると、このメガーヌの油圧ステアリングはスローかつソフトなタッチで、プロクセスのハイグリップにも助けられた素晴らしく甘美な方向転換の感触を、よりよく伝えてくれる。

実際には、より新しいモデルほどそのグリップを生かせていないにも関わらずだ。

それよりも、このRほど汎用性の高い前輪駆動車はない。実に深い運動性の持ち主だ。より軽く、切れ味鋭く、速くなったのと同時に、ドライバーがより自信を持って走らせられるクルマになっている。

2.0ℓターボが発生する230psは、今や猛烈に速いと感じるには十分ではない数値だが、これほど有無を言わさぬスピードでコーナリングし、長く所有することに報い続けてくれるハッチバックはいまだに存在しない。

対するノマドは、狂おしいほどに速い。

ほんとうに賢い買い物とは

標準仕様は238psのホンダ製2.4ℓ直4だが、それでも0-97km/hは4秒を切る。しかもオプションなら、294psのスーパーチャージャー・ユニットも選べる。

最も安い仕様は£36,000ほどだが、過給機仕様の設定により平均的な販売価格が£45,000程度にまで上がっていると、アリエルでは説明している。

とはいえそのオプションは、この上なく後を引くようなパフォーマンスを味わわせてくれるものでもある。

頭の後ろからは極めて大きなそそる吸気音が聞こえ、右足を踏み込むと加速でむち打ちになりそうだ。

クルマの多い道でスロットルペダルをベタ踏みでもしようものなら、パワーも価格もずっと上のスーパーカーと変わりないスリルを体験することになるだろう。

コーナーの脱出でそれを続ければ、距離を重ねるうちにオールテレイン・タイヤがすっかり傷めつけられてしまうはず。

多くの購入者が賢明にも選んでいる油圧サイドブレーキさえ装着されていれば、値落ちの極めて少ないノマドを買うことは、最も賢い中古車の選択となる。