森田剛が見せた“人情とお節介” 『ハロネズ』の『幸福の黄色いハンカチ』オマージュを読む

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 「あかつか探偵事務所」のドブネズミは五郎(瑛太)だけではない、と言わんばかりに、グレ(森田剛)の活躍が描かれた1日放送のTBS系金曜ドラマ『ハロー張りネズミ』第8話。第1話で五郎の良きバディとして活躍して以降、常に五郎のサポート役に回っていたグレ。ついに訪れた見せ場となる今回の「File.6 残された時間」で、彼の探偵としての手腕と人情味溢れるキャラクターが花開いた。

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 中華屋の無愛想な料理人・栗田(國村隼)の依頼は、生き別れた娘と息子を探して欲しいというもの。どうやら訳ありな様子の栗田だったが、その理由については話したがらない。さらに、栗田は自ら調査に同行することを申し出る。厄介そうで怪しげな依頼人に乗り気じゃない五郎だったが、突然体調を崩し、結局グレが栗田とともに娘を探すことになるのだ。

 冒頭でグレが『幸福の黄色いハンカチ』を鑑賞して号泣している場面が登場した段階では、その後に中華屋で醤油ラーメンとカツ丼を頼む伏線(同作の序盤で、出所した高倉健が食堂でそれを注文して食べる有名なシーンがある)に過ぎないと思っていたが、まさかメインの展開が完全にシンクロし、“黄色いハンカチ”が重要なアイテムとなろうとは想定外だ。

 77年に公開され、ハリウッドリメイクもされるなど、日本映画を代表する名作のひとつとして名高い、山田洋次監督の『幸福の黄色いハンカチ』。殺人罪で刑務所に入っていた高倉健演じる勇作が、武田鉄矢と桃井かおりが演じる2人の若者と偶々出会い、3人で真っ赤なファミリアに乗って旅をするヒューマンドラマだ。

 今回のエピソードで國村隼が演じた栗田も、殺人罪で刑務所に服役した過去を持つという共通点がある。さらに「申し訳ない」という気持ちと、「会いたい」気持ちとで葛藤し、なかなか踏み出せないでいる不器用なところも、高倉健が演じた勇作によく似ているではないか。

 そんな栗田とともに旅を続け、過去を知っても正面から向きあいながら願いを叶えようと躍起になり、自分の過去も笑顔でさらけ出すグレの姿は、まさに武田鉄矢が演じた欽也を思わせる、義理と人情に溢れた実に古風なキャラクターに映る。普通の人なら引いてしまう、と過去を話したがらない栗田に「俺たち探偵は普通の人たちは違うんだ」と言い放ち、依頼人との信頼関係を築きあげる。また、巧みな話術を駆使するプロの探偵らしいクレバーな面と、土下座してまで情報を得ようとする泥臭さのコントラスト。まさに、「あかつか探偵事務所」のモットーである“人情とお節介”の模範的な姿であろう。

 隠していた脳腫瘍で倒れた栗田を病院に連れて行くか、それとも依頼に応えるために息子のもとへ連れて行くのか悩むグレ。彼が選んだあまりにも粋な行動には、思わずニヤリとし、涙を誘われる。そしてラストシーンで海岸にたなびく無数の黄色いハンカチ。ここまで堂々としたオマージュを捧げるとは、「File.3」のオカルトものとは違うベクトルで、見応えのあるエピソードだった。

■久保田和馬映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。