中国商務省が北朝鮮産の鉄、鉛、海産物などの輸入を全面禁止すると発表した8月14日、 吉林省延辺朝鮮族自治州の琿春にある圏河税関には、トラックの長い列ができた。

北朝鮮の羅先(ラソン)で工場を営んでいた中国人のオーナーが、少しでも設備や完成品を持ち出そうとしてのことだ。

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少しでも持ち出せた人は運がいい方だ。北朝鮮ビジネスに投資した人の多くが、資産の多くを置き去りにせざるを得ない状況に追い込まれている。

中朝国境地帯の事情に精通したデイリーNKの対北朝鮮情報筋によると、羅先よりさらに南の清津(チョンジン)や咸興(ハムン)で工場を営んでいた中国人のほとんどが、設備や完成品を持ち出せなかった。これにより、1500万元(約2億4600万円)の大損害を被った人もいるという。

海産物を扱う商人はさらに悲惨だ。

中国の環球時報によると、国境の橋の上で足止めされたトラックからは、積荷の冷凍イカが溶けて水が滴り落ちる有様だったという。返品せざるを得ないが、代金を返してもらえる見込みはない。

琿春の市場で魚屋を営む梁さんは、北朝鮮で買い付けた10数トンの冷凍イカが輸入できなくなったため、200万元(約3280万円)の損害を被った。

商人たちは怒り心頭だ。

中国当局が、輸入禁止措置を取る前に説明を行わず、発表の翌日から施行したためだ。中には事前通告を受けていた商人もいるが、損害を免れることはできなかった。

別の情報筋によると、一部の商人は14日に当局から「明日(15日)から制裁に入るから、今日の午前0時までに北朝鮮から撤収せよ」との通告を受けた。しかしわずか1日ですべての設備を運び出すのは土台無理な話だった。結局、損害の額が多少減っただけだったという。

北朝鮮からの撤収には何重ものハードルがあった。

中国の税関はこの日、午前0時まで業務を行うことにしたが、北朝鮮の税関は通常通り午後7時に業務を終了してしまった。さらに、禁輸措置施行当日の15日は北朝鮮の祝日だったため、多くの中国商人は設備の持ち出しはおろか、北朝鮮からの出国すらできなかった。

工場設立の際に北朝鮮側と交わした契約書に、「中国側が投資した設備や物品は、事前の協議、合意なしに持ち出せない」とする条項が含まれていたことも、撤収の妨げとなった。

情報筋は、置き去りにした設備や完成品は、そっくりそのまま北朝鮮当局のものになるだろうと見ている。

中国と北朝鮮の経済協力は、かつて韓国が北朝鮮で運営していた開城工業団地と同じ末路を辿ることとなりそうだ。

南北の経済協力事業として行われていた開城工業団地だが、2016年2月に朴槿恵政権が突如として閉鎖を決めた。進出していた企業は設備のほとんどを置き去りにすることを余儀なくされた。

韓国政府が、進出企業との間で被害額の全額補償で合意に至ったのは、今年5月末になってのことだ。それまで持ちこたえられなかった企業も少なくない。

韓国での報道によると、生産設備のすべてを開城工業団地に移していた51社のうち、11社が事実上の廃業に追い込まれ、8社は他社製品のOEM生産でなんとか延命し、残りの32社は東南アジアに工場を移した。

再開への糸口を探りたい開城工団企業協会は、工場の状態を視察する名目で統一省に北朝鮮訪問を申請する予定だったが、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験などにより、無期限延期している。

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