大量に取ると有害だが微量なら効果をもつ金属

写真拡大

バッテリーや電池に使用されるレアメタルの「リチウム」が高濃度の水道水を飲んでいる人は、低濃度の水を飲んでいる人に比べて認知症発症リスクが低い――。

水道水という身近な存在が認知症に与える影響を分析した研究結果が、デンマークのコペンハーゲン大学の研究者らによって2017年8月23日に発表された。

金属を摂取するというのは体に悪そうな気もするが、一体どういうことなのか。

適量ではむしろリスクが上昇

リチウムは大量に摂取すると中毒や甲状腺の機能障害を起こすことが知られているが、実は双極性障害の治療薬としても使用されており、単なる有害な金属ではない。自然界に広く存在しており、海水や岩石にもリチウムが含まれる。微量だが水道水や食品中にも存在し、我々も日常的に摂取しているのだ。

微量とはいえ脳機能や心理面に与える影響が大きいとされ、米テキサスや日本の九州で行われた調査では、水道水中のリチウム濃度が高い地域ほど自殺率が低いという結果も出ている。

こうしたことから、コペンハーゲン大学のラース・ヴェデル・ケッシング教授らは認知症にも何らかの効果があるのではないかと推測。国有の医療記録から、認知症を発症している7万3731人と発症していない73万3653人のデータを抽出し、居住地域の水道水を調査した。

デンマーク全土151か所の水道水のリチウム量を測定し、医療記録と組み合わせて分析したところ、興味深い結果が現れた。

まず、リチウム量が「適量(1リットルあたり5.1〜10マイクログラム)」とされる水道水を飲んでいた人は、「低量(1リットルあたり5マイクログラム未満)」の水を飲んでいた人に比べ認知症発症リスクが22%増加していたのだ。

しかし、「高量(1リットルあたり15マイクログラム以上)」の水を飲んでいた人と「低量」の人と比較すると、前者はリスクが17%低下していた。

このリスク増減について、ケッシング教授は「微量でも長期間リチウムを摂取することで、脳内で広範な生物学的変化を起こしている可能性を示すもの」とし、次のように説明している。

「双極性障害の治療でも、症状や状態によってリチウムの投与量に『投薬スイートスポット』とでも言うべき微妙な有効量の違いがあり、効果にも差をもたらします。水道水中のリチウム量と認知症リスクの差も、リチウムの作用を示すものではないでしょうか」

因果関係は不明だが...

英国のアルツハイマー病研究機関であるAlzheimer's Research UK(ARUK)は、今回の研究結果に対し、

「すでに(双極性障害の治療薬として)臨床で利用されている薬剤が低用量で認知症抑制につながるならば、非常に刺激的で興味深い研究結果だ。摂取する栄養成分を考慮するうえで、食事や飲料水中のリチウム濃度を参考にする意味もあるかもしれない」

とのコメントを寄せている。

ただし、注意が必要な点もある。まず、大規模なデータ解析から導き出された今回の結果はリチウムが認知症を抑制するという因果関係を明らかにしたわけではない。あくまでも両者の相関関係を示している。

また、水道水以外の条件を考慮していないので、例えばリチウム濃度が適量な地域は低量や高量な地域に比べて認知症リスクを高める何らかの環境要因があるといった可能性も否定できない。