「私がやっているのは、愛の告白」--。 

インタビュー前編では、セレブタレントとして一躍有名人となったマリエが、自分の夢を追い、自分自身に向き合ったそのライフヒストリーを軸に話を訊かせてもらった。

インタビュー後編となる今回は、2017年6月に立ち上げた自身のブランド「PASCAL MARIE DESMARAIS」の話を中心に、クリエイター・マリエが考える「選択」の重要性について尋ねてみた。

彼女の選択は責任であり、それは愛だ。このインタビューで、きっとそれが伝わると思う。

「PMDの7アイテム目は、
 あなたのアイテム、つまり
 自分自身をプラスしてもらいたい」

--では、具体的にブランドの話に入っていこうと思います。ファッションがもつ力に気づいた幼少期があり、夢だった美術大学への留学も叶った。そこから結構すぐに「ブランドを作ろう」というふうになったんですか?

「全然です。いいデザインをクリエイティブとして打ち出していけたらとは思っていたんですけど、やっぱり、ファッションブランドひとつたてるのはものすごく大変なこと。時間がかかるだろうと思っていたし、当時26とかで、今じゃないと思ってましたね。『じゃあTシャツ作ってみようか』っていうのはあったんですけど、そこから2年ぐらい経って自分たちのやりたいことを並べたら、『やっぱり自分たちでブランドをやるしかない』と。それで決意しましたね」

--決意してからの流れというのは?

「デザイナーとしては、 某美容サロンのユニフォームや、企業の受付ユニフォーム、キャンペーンユニフォームのデザインも行いました。あとは、服飾専門学校で講師や発表の審査員をさせていただいたりもして 」

--そういった経験を積みながら、ここ2年で気合いを入れてブランドのほうに注力していったと。ブランドのコンセプトは「明日、自分が着たい服」ですが、具体的に教えてもらってもいいですか?

「毎シーズン7アイテム出していくんです。それも、自分たちが完成と思ったときに、そのシーズンでゴールを決めて打ち出していく。それでも、年間だいたい2回以上は出していきたいとは思っています。そして、7アイテムはカラーバリエーションを含めず、型で7つなんですが、商品展開は6アイテムなんです」

--え? 7アイテムじゃなく?

「7つめは、あなたのアイテム、自分自身をプラスしてくださいという提案の仕方なんです」

--斬新ですね。

「自分のアイデンティティと、私たちの作るもののアイデンティティをかけあわせて、PMDというブランドを楽しんでほしいなって。それをメインのコンセプトでやっています。それを、自分たちができる範囲、ちゃんと目が行き届く範囲でやることが今は大事だと思っていて。私たちは百貨店ビジネスではなくて、全国の小売店さんと末長くお話ししてお付き合いしていきたいので、値段のつけ方ひとつでもかなり考えてこだわっています」

--慣習にのっとるんじゃなくて、値段のつけ方ひとつ真剣に考えるだけでも、作る側・売る側どちらも「本当にいいものを」って思うようになりますよね。

「そう。私たちがここまで真剣にやっていれば、売ってくださる方も、『そこまで考えてくれたなら、ちゃんと売らなきゃ!』って思ってくださると思うので」

PMDのアイテム。作るものはすべて「極力、いいセカンドエフェクトがあるように」と素材選びを進めるという

「私のブランドのものを買うことで、
 新しい何かに出会ってほしい」

--今商品は何店舗で展開しているんですか?

「今は11店舗ですね」

--ECサイトや東京では売らないということも驚きだったんですが、その意図は?

「ロンドン、ニューヨーク、どこにでもあるものを、インターネットでポチッとクリックしてゲットする行為ではなくて、たとえば『名古屋に出張に行くから、ついでにマリエちゃんの商品があるあの店まで足を延ばしてみよう』とか、『マリエちゃんのジャケットどうしてもほしい。全国11店舗あるな。じゃあ行ったことなかった福岡に行ってみよう。ついでに別府温泉までちょっと足延ばしてみよう!』でもいいし、それで『モツ鍋、初めて現地で食べた! やっぱりおいしかった!』とかね(笑)。私のブランドのものを買うことで、何か新しい何かに出会ってほしいんです」

--「ここで売るの!?」みたいな場所もあって、結構驚かされました。

「たとえば自分が山口に住んでいて、『山口で売るの!?』ってなったら嬉しいなと思って。しかもツアー(『ALREADY FAMOUS TOUR 2017』)で来るっていう」

--そのツアーという試みも斬新ですよね。

「自分がファッションを通じて知り合ったセレクトショップの店員さんがたくさんいるんですが、その方たちには『このブランドがいいよ』っていうだけではなく、同時に、センスのいい人生についてだとか、別のこともたくさん教わってたなあと思っていて」

--マリエさんにそういうことを教えてくれた方々に、私たちも直接会いに行ける機会になるんですね。

「みなさん、本当にかっこいいんです。すてきなセレクトショップが、本当に、全国にいっぱいあって。しかも、すごく熱い思いで取り引きしてる。そういうところを地元の人も知るチャンスになると思うし、私たちも学ばせてもらっているんです」

アトリエの壁には、ツアースケジュールが貼られた日本地図が

「自分たちがオーダーしたもので
 誰かがいやな思いをするなら
 作る意味はない」

--セレクトショップだけでなく、生産業社も訪れますよね。前回のインタビューで出てきた気仙沼のオイカワデニムもツアーのルートに入っていて。オイカワデニムとは今、どんな作業を一緒にしているんですか?

「私がMCをやっているNHK WORLD『TOKYO FASHION EXPRESS』という番組でオイカワデニムさんを取り上げたことで、初めて私は知ったのですが、このデニム会社さんはメカジキでデニムを作る活動をされているんです」

--メカジキ? あの魚の?

「メカジキの骨って、毎年40トン出るんですけど、全部ゴミになるんです。それをすり潰してデニムにするという。 色々と構想を練っている段階ではありますが、オイカワデニムさんのように、こだわりを持つ職人さんや工場とコミュニケーションをとることは、クリエイションに大きな知識と広がりをくれるんです」

--その中で、誰かが犠牲になったりするようなシステムではなくて--。

「みんながウィンウィンのかたちで楽しめるプロセスを考えているんです。そうだ、この封筒もこだわっていて」

「PASCAL MARIE DESMARAIS」の封筒

「印刷屋さんで印刷する時にはあるガスが出て、それは人体に影響のある物質が含まれているそうなんです。自分たちがオーダーしたもので、誰かがいやな思いをするなら作る意味はないと思ってるんで」

--これはそういうのが発生しない?

「そう。印刷会社に、一応オプションとしてはこういうやり方はあるんですけど、高いのでオーダーが入らないそうなんです。でも、私たちのチームは『高いからってそれで人が病気になったりしたらいやだしね?』って」

--オーダーされたんですね。

「そうしたら、職人さんたちが感謝してくださっていたと後から知って。私たちこそすごく感謝したんです。勇気を出して、リスクを背負ったから、そんなふうに感じていただくことができて。だから、やっぱりやめられないですよね。やっとおもしろくなってきたっていう感じです」

「選択が増えれば、
 心はもっと豊かになると思う」

--マリエさんは『TOKYO FASHION EXPRESS』のMCや、J-WAVE『SEASONS』のナビゲーターとして活躍されるなかで、下準備や勉強のために全国各地の職人さんを訪ねてきたとうかがったんですが。

「はい。自分の好きなこととをエンターテインメントの分野でできて、すごくありがたいなあって思っています」

--そのなかで印象的だった経験とかはありますか?

「いろんな方がいらっしゃいますけど、たとえば青森の縫製工場の株式会社サンラインには、ヴィヴィアン・ウエストウッドやポール・スミスのシャツを縫っている、すごい技術をもつ方たちがいて。私が行っても『タレントのマリエちゃんが来た!』とか浮つかない(笑)。私たちが帰るとき、工場長のお姉さんが一言『私たちが縫えるぐらいのブランドになって帰ってきなさい』って。すごくかっこよくて!」

--かっこいい!!

「ほんとに。そう言えるのは、自分たちの技術に自信を持っていて、『私たちがやることに意味があるんだよ』ってわかっているってことで。日本人の粋みたいなものも感じて、『絶対がんばんなきゃ!』って思わされました。それはすごく印象的でしたね」

--海外と比較して、日本の物作りのシーンに対してはどんなことを思いますか?

「日本は物作りしやすい環境だなあと思っていて、そこにはいろんな理由があると思います。粋の部分でも、技術の面でも、あとはお金のシステムも翌々月払いとかが許されているのは、物作りをスタートしたい人たちにやさしいんじゃないかな。海外はアップフロント、 先払いが多いんです。それこそが、日本の物作りが技術、信頼で成り立ってる証拠だと思います」

--なるほど。そんなふうに地方にも素晴らしいお店や工場があるなかで、マリエさんご自身は都心型の生活ビジネスに関してどういう考えを持っているんですか?

「うーん、どうだろう。今って、都市型生活を選びなおす・考えなおす時代だと思っていて。自分が食べるもの、着るもの、何を選んで消耗していくか。それを考えたとき、自分はどこでその生活を送りたいのかなって。早い人はもうすでに考え直して、行動に移してますよね」

--確かに。

「車や電車で1時間半ぐらいのところだったら、1週間のうち決められた曜日に東京でミーティングを済ませて、あとはもう帰るとか。今はもういろんな手段があるから、自分のライフスタイルと照らしわせて、この手段さえ使いこなしてれば、東京、大阪、もはや日本にいる意味もあるのかな、とかまでね」

--あくまで、「それが素晴らしい」というよりは--。

「それをもう一回考えなおすチャンスが、今の時代にはあるという」

--そういう「選択」の話ですよね。『PASCAL MARIE DESMARAIS』のブランド・ステートメントには、「すべてはあなた一人の存在が選び出す選択肢」という言葉があって、私はそれがすごく印象的だったんです。実際ハイクオリティなものを作っていて、「ハイクオリティですよ」って謳うほうが簡単なのに、マリエさんがまず提示するのは、そこではなく「選択」なんだっていう。そこは自覚的なんですか?

「そうですね。選択肢を知っていることは、安心感につながると思うんですね。たとえばひとつ絵を描くにしても、いろんな道具があることを知ってるか知ってないかで恐怖心が変わってくるというか。『やばい、シャーペンしかない』と思ったら、『これ以上力入れたら折れちゃう』って思うけど、横にペンがあることを知ったら、『シャーペンがだめならペンで描けばいい』って思える」

--安心して創造できるっていうか。

「うん。それは人生でも同じで、『こういう生き方しかないんだ』って思うと『そしたらもううちら死ぬだけじゃん!』みたいな考えに、究極ね? なったりする。でも『いや、違いますよ。こういう生き方もあるんですよ』って思えて、教養を、チョイスを増やしていくことができれば、もっと心は豊かになる。それがクオリティのあるライフスタイルを送れる秘訣だと思ってて」

--その「選択」の考え方が、ブランドにもつながっていると。

「私たちの考え方に賛同していないなら、無理に買うようプッシュもしないし。だけど『こういうものがあるんですよ』『こういうことができるんですよ』って、私たちが叶えられるんだったら叶えて、みんなに提示することがやっぱり大事だなと思ってますね」

--「選択」は、「責任」であり「愛」なので。

「そうですね。知らないのが一番、つらいですよね。知らないことにも気づかないのも。いいものができないプロセスを痛感しているので--でも、うちらこれでわがままって言われたら、みんなどんな物作りしてるんだ!って(笑)。『みなさん、だいたいこのへんで妥協されます』『え、まじですか!?』みたいなことも(笑)。そう思うとやっぱりどんどんいいものが減ってきてるということで、うちらがやらなきゃいけないことがあるんじゃないのかなって」

--唯一、「妥協」っていう選択だけは--。

「ないみたいです(笑)」

--(笑)。粋だと思います。

「ふふ、よかった(笑)」

Photo by 高木亜麗